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34、妊娠の発覚
しおりを挟むマルキ公爵と私が正式に婚約者となってからしばらくして、結婚式の日取りも決まりました。
それからは、私は毎日お城へ行き、ザギル公夫人から王妃としての教育を受けるようになりました。その合間をぬって結婚式のドレスを採寸したり、結婚式の打ち合わせにも参加したりと忙しい日々を過ごしていました。
そして今日は結婚式で着るドレスの仮縫いの日でした。デザイナーは、公爵の信頼の厚いルートヴィヒさんです。
「ルートヴィヒさん、今日も宜しくお願いします。」
「こちらこそ、王妃様のウェディングドレスを作れるなんて光栄です。」
「‥‥王妃様なんて私の柄じゃないのに。何だかこの国の民を騙してるみたいで、後ろめたいわ。」
「ハハ、そんな事ないです。マリア様なら立派な王妃様になれますよ。‥‥それにしても‥マリア様、お腹まわりが少しふっくらしてきました?」
「えっ、食べすぎかしら?」
「‥うーん‥妊娠されてる訳ではないんですよね?」
「‥‥妊娠?」
「はい。マリア様がもし妊娠されてるようなら、これから結婚式までの間にお腹はもっと膨らんできますよね‥‥。」
「‥‥。」
「‥あら、妊娠かどうか、まだ医師にみて貰ってないんですか?早く診てもらった方がいいですよ。」
「‥分かったわ。」
「とりあえず、デザインを少し変えますね。胸の下からふわっとさせて、お腹も目立たないようにしておきますね。」
「ありがとう。」
ルートヴィヒさんは、私の事を心配そうに見ながら帰っていきました。
私は部屋の鏡の前で横向きになり、少し膨らみかけたお腹を確認しました。
「確かに膨らんでいる‥‥。」
私は妊娠というものを知識として知ってはいましたが、まさか自分がそうなるとは夢にも思いませんでした。
私は〝サタン″を自分の腰骨から生み出しましたが、まさか人間みたいに妊娠するとは‥‥。
私が鏡の中の自分に見入っていると、鏡の中からベリアルが現れました。
「ルシフェル、お前が妊娠してる事なんてもうとっくに知っていた。」
「ベリアル、やっぱりそうなのか。」
「‥‥ルシフェル、主人様を愛してるのか?」
「‥愛してる。私は公爵の唯一の家族になるつもりだ。」
「‥ルシフェルが愛してるのは、ご主人様だけか?」
「‥ああ。」
「‥お前の事だ。どうせ他にも気になる奴がいるんだろう。‥お前に振り回されてるご主人様が可哀想だ。」
「‥そうだな。」
「お前は昔からそうだった。神の寵愛を受けながらもサタンを平気で愛していたし‥。お前は気が多すぎるんだ。それに、お前の愛はいつだってどこか偽善的だった。」
「‥ベリアルは私が憎いのか?」
「‥ご主人様が小さい頃から大切にお世話してきたんだ。‥お前の偽善に付き合わされて、王にまで担ぎ上げられて‥‥。あのままそっとしておいてくれれば良かったんだ。何も寝た子を起こすような事を‥‥。」
「‥‥ベリアルは公爵が王になる事が嬉しくないのか?」
「‥‥あなたが王妃になる事が嬉しくないのです。あなたが何をしたいのかが分からない。‥こんな滅び行くだけの世界で‥何が王だ、何が王妃だ‥。」
「‥‥。」
「‥‥あとで医師をよんでおきます。」
ベリアルは部屋の扉を開けて、外に控えていた者たちに何か指示を出すと、そのままどこかへ行ってしまった。
私はベリアルが何を考えていて、何を恐れているのか分かりませんでした。
それに、自分が妊娠している事を喜んでいいのかどうかも分かりませんでした。
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