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26、お城にて

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マルキ公爵がお城に着くと、ザギル公夫人の従者が出迎えてくれました。そして公爵は、夫人の執務室へと案内されました。

「マルキ公爵か、よく来た。‥皆んな下がってくれ。」

公爵が部屋に入ると、従者も侍女も皆んなすぐに部屋から退室しました。

公爵は、目の前の母をまじまじと見つめました。彼女はどこからどう見ても母上なのに、魂が母上ではなく悪魔なのだという‥。頭では理解できても、何となく不思議な感じがしていました。

「‥公爵、公爵聞いてるのか?」

「‥あっ、すみません。その、母上が喋っているような気がして、話に集中できていませんでした。」

「‥そうか。ところで、公爵はこの国をどういう風にしたい?何でも言いたまえ。」

「‥優れた芸術家を育てていきたいです。この国の文化を、もっと諸外国に誇れるレベルにしたいです。それに、同性愛者や獣人と人間のカップルの婚姻を認めるように法律を変えたいです」

「‥公爵は政治に関しては、何か意見があるかな?」

「‥恥ずかしながら、何を意見したら良いのか分かりません。‥ただ、我が領地では農作物が不作の年は税率を下げてましたし、平民達も皆等しく教育を受けられるように、無償で通える学校を運営しています。これを我が領地だけではなくて、国全体として行っていけたら良いのですが‥‥。」

「‥公爵は、あの両親から産まれたにしては、えらくまともなんだな。」

「‥‥。」

「公爵、君の即位式を後日行う事にした。王都の大聖堂で、教皇様が君に王冠を被せてくれるんだ。

クククッ、知ってるかい?実は教皇様も我々悪魔の仲間なんだ。‥あそこも相当腐敗していたんだよ。」


「‥‥母上、人間の魂を持った人達はこの王都には、もういないのですか?」

「‥大半は悪魔に乗っ取られているが、純粋な人間達は大勢いる。心配するな。善良な人間は、そもそも退屈だからという理由で悪魔など呼ばない。」

「そうですか。」


「‥‥なぁ、信じられるか?教皇達は小児性愛者の変態共の集まりだったんだ。毎晩街や郊外から幼い子供達をさらって来ては、輪姦しながら殺して血を啜っていたんだ。‥聖職者達が自身の快楽の為にそんな所業をしていたとはな、流石の悪魔も驚いたよ。‥人間とは、悪魔よりも恐ろしい生き物なんだな。」


「‥ところで母上、母上を何とお呼びすれば良いですか?」

「君さえ良ければ、母上と呼んでくれて構わない。」

「ありがとうございます。母上、‥僕は以前の母上よりも、今の母上の方が優しくて大好きです。」

「‥‥公爵は、可愛いなぁ。これは‥ルシフェルも入れ揚げるわけだ。公爵、今日は泊まっていくんだろう?」

「あっいえ、屋敷に帰ります。」

「クククッ、屋敷にはルシフェルが居るからな。‥いいだろう、しばらくはお城へ通いで来ると良い。」

「はい。宜しくお願いします。」

公爵は礼をして退室しました。お城を出て馬車に乗り込む際、お城の離宮に公爵家の侍女達の姿が見えました。

「ああ、そう言えばルシフェルが侍女達にお城へ行くように言ってたなぁ‥。」

公爵は、そう呟きながら馬車に乗り込み、屋敷へと急いで帰りました。


一方侍女達は‥‥離宮でザギル公夫人の侍女達に取り囲まれていました。

「フローラとベスには、ここにる男性達と共に国の外れの村へ行ってもらいます。そしてビオラ、あなたは顔を包帯で巻いてますから、きっと顔に傷を負ってるのですね。でしたら、今後はお城の厨房で作業をしてもらいます。他の方達は‥‥一旦ザギル公夫人の侍女として働いて貰う事にします。」

「‥‥私達は、何故ここに連れて来られたのですか?公爵邸には帰らせて貰えないのですか?」

「おだまりなさい!あなた方は公爵邸で、公爵が雇われた画家のマリア令嬢に、相当な仕打ちをしたと聞いてますよ。本来なら処罰されてもおかしくないのですよ!‥公爵邸へ二度と戻れないのだとしても、このお城に置いて貰えるのです。感謝しなさい!」

公爵家の侍女達は、ザギル公夫人の侍女達に叱られて少し不服そうな顔をしましたが、逆らえないと分かると諦めて、夫人の侍女達の言う通りにしました。

彼女らは、夫人の夜のお相手をさせられた後、お気に入りの者を除いては皆んなお城の裏方で働く事になりました。
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