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18、お城の秘密
しおりを挟む私は、王様とザギル公夫人の醜悪な姿とサバトの様子をしばらく観察した後、そっと扉を閉めて廊下へと戻りました。
あの二人が快楽に耽っている間に、この国の前王様のザギル公と王妃様を探そうと思ったのです。夜会の時にもいなかったところをみると、どこかに幽閉されているかもしれないのです。
「ルシフェル‥何してる?」
「‥アバドンか。お前こそ何をしてるんだ。」
「お前を探してた。部屋の前で別れてからも、ずっとお前が気になっていた。」
「何故?」
「‥‥俺はお前がずっと好きだった。」
「‥その話はまたにしてくれないか。」
アバドンは急に廊下の暗闇に現れると、私の腕を掴んで下らない話を始めました。
「‥駄目だ。‥お前が今もサタンを愛してるのは知っている。それにお前が神を憎んでいる事も‥‥。だけど、俺はどうにかしてお前に今すぐ昔の事を許して貰いたいんだ。そして笑いかけて欲しいんだ。俺にお前を好きでいる事を許して欲しいんだ。」
「許すも何も、もう何とも思っていない。さあ、手を離せ。」
「‥なぁルシフェル、ルシフェルの姿を久しぶりに見せてくれ。あの美しい姿を。」
「‥駄目だ。人に見られるのは嫌なんだ。」
「‥一度だけルシフェルの姿で俺にキスしてくれないか。そうしたらお前への愛はきっぱり諦める。
‥‥お前がまた俺の前に現れるから悪いんだ。‥だから俺はおかしくなってしまったんだ。頼む。俺に笑いかけてくれ。ルシフェルの姿でキスをしてくれ。」
「‥今は駄目だ!」
「嫌だ!お前は昼間はマリアになりきってるし、仕事が終わったら、ベリアルのいる公爵邸へ帰るんだろ。公爵邸へはベリアルの結界のせいで、俺や他の悪魔が外から入れないようになってるから、お前に会いに行けないんだ。‥頼む。」
「‥‥後で部屋に来い。一回だけだぞ!」
「‥ルシフェル、ありがとう。」
私はとりあえずアバドンを宥めると、先を急ぎました。アバドンは私の後ろ姿をいつまでも見ながら何かを呟いていましたが、私は特に気にはしませんでした。
「‥ルシフェル、お前は相変わらず優しすぎる。‥俺はお前に一度だけキスをしてくれと縋ったけど、本当はきっぱりと断って欲しかった。はっきりと俺自身を拒んで欲しかった。お前の優しさは罪だよ、ルシフェル‥。」
アドバンはそう言って、暗闇にまた消えて行きました。
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