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46、私の救出劇について
しおりを挟む警備隊の話によると、どうやらフジコさん達は船でギリス大国へ連れて行かれるようです。
海での海賊船襲撃事件の容疑者として、船長の男とフジコさん達が、国際指名手配されていたのだそうです。
その為、船長の男やフジコさん達を我が国だけでなくて、ギリス大国でも裁いて投獄することが出来るのだそうです。
それと、昔のマキシム監禁や阿片の不法所持・吸引の件と、今回の私に対する誘拐・殺人未遂の件についても、ギリス大国へ向かう船内で取り調べが行われるのだそうです。
そんな事ができるのも、マキシム達外交官が、ギリス大国や他の国と『四国海洋協定』と『友好条約』を結んでくれていたおかげなのだそうです。
「‥では、今度こそフジコさん達はヒノキ国へ戻って来ないんですね。」
「絶対に大丈夫です。何せ、ギリス大国の罪人達は皆んな強制労働所に送られるんですけど、そこがとても厳しいんですよ。
逃げ出そうとする人は、これまでも大勢いたようですが、誰一人として逃げ出せた者はいないそうです。」
「‥そうなんですね。」
その話を聞いて、私はやっと安心しました。
もう二度とフジコさん達に怯える必要はないのだと、確信できたのです。
実は昔、まだメディチ王国にいた頃に読んだ本に、ギリス大国の強制労働所の事が書いてあったのを思い出したのです。
ギリス大国の強制労働所のまわりは海に囲まれており、その海には沢山の人喰いザメがいるそうなのです。その為、強制労働所から逃げ出せる人はいないのだそうです。
これでやっと、私が心から安心して暮らせる日々が訪れたのです。
ところで‥‥なぜ警備隊の皆さんは、私がこの船にいるのが分かったのでしょう?
「あの、私がここにいるってどうして分かったんですか?」
「‥僕達が街で、早歩きしているあなたを見かけたのです。それで、てっきりあなたが誰かに追われているのではないかと思い、あなたのあとをつけていたのです。」
「‥気付かなかった‥。」
「そうしたら僕達の目の前で、本当にあなたが、国際指名手配されている男に誘拐されてしまったんです。‥僕達は、男に見つからないように、再びあなたと男のあとをつけたのです。」
「‥私の居場所が分かった理由は分かりました。‥あなた達のおかげで、命拾いしました。本当にありがとうございます。」
「‥あっ、いえ。僕達は、これも仕事ですので。‥それよりもマキシムさんにお礼を言ってあげて下さい。」
「えっ?」
「僕達だけだったら、あなたの居場所を突き止めて、船内に潜伏して見守るだけしか、できなかったと思います。
マキシムさんが、発電機を沢山積んだ船で、この船を包囲して、更には港に滞在していたギリス大国の船に声をかけて、この逮捕・連行劇を考えて実行したのですから。」
「マキシムが!?」
「はい。マキシムさんが家の扉の鍵が開いてるのに、あなたがいない事を不審に思って、僕達の警備隊本部に連絡をしてくれたんですよ。
僕達は、警備隊本部にあなたの事を連絡する人間を一人残していったので、そこでマキシムさんはあなたの誘拐について知ったのです。」
「‥その‥マキシムは今どこにいるのですか?」
「‥警備隊本部から、今こっちに向かってるはずです。」
警備隊が言うように、船の上から港を見ると、見慣れたマキシムの姿がそこにありました。
「マキシムー!」
「レミー!」
私は、マキシムに向かって手を振り、無事を知らせました。
私達の乗ってる海賊船が、警備隊の操縦で港に到着すると、マキシムがすぐさま駆け寄って来ました。
「警備隊の皆さん、ありがとうございました。」
マキシムが警備隊の方々に深々と頭を下げて、お礼を言いました。私も改めてお礼を言おうとすると、警備隊の方々はそれを制しました。
「我々はこれが仕事ですから。‥それよりもマキシムさん、お手柄でした。ありがとうございます。‥では、我々はこれで失礼します。」
警備隊の方々は、そう言って去って行きました。
私とマキシムは、2人で港に残って佇んでいました。マキシムは私の首の痣と引っ掻き傷に気付くと、悲痛そうな顔を見せました。
「レミー‥首の傷‥。」
「あ‥これは‥‥。」
私は船での一部始終をマキシムに話しました。すると、マキシムが怒りの感情を表しました。
「あの女め!二度とレミーに対してそんな事させないぞ!‥ギリス大国の強制労働所で散々苦しめば良い!」
あの優しいマキシムが、私の為に珍しく荒い口調で怒っている‥‥私はその事に感動していました。
「‥マキシム‥ありがとう。」
私はそう言って、マキシムと抱き合いました。そして、生きてる喜びと再びマキシムと抱き合えた幸せを噛みしめていました。
と、その時、私は大事な事を思い出しました。
「あっ、そうだ。‥マキシム、私のお腹の中に、私達の赤ちゃんがいるのよ。妊娠三ヶ月目なんだって。今日医師に診てもらったの。」
「レミー!僕達の赤ちゃんだって!?凄いじゃないか、お祝いしなきゃ!」
「マキシム、私達の子だよ。楽しみだね。」
私は、ここにきてやっとマキシムに妊娠した事を報告できたのでした。
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