初恋はかなわないけど‥

みるみる

文字の大きさ
上 下
25 / 48

25、例の女子生徒はフジコさんというそうです。

しおりを挟む

あの騒動のあった日から、マキシム君と例の女子生徒は、頻繁に行動を共にする様になりました。その為、いつしかまわりも二人を恋人同士として認識するようになりました。

そして、今日も例の女子生徒はマキシム君に会う為に、特別クラスに遊びに来ており、まわりはそれを当然の事のように受け入れているのでした。


「マキシム君、今日も一緒に街へ行ってくれるんでしょう?‥‥私ね、一人でいると、また例の彼が絡んで来そうで怖いの。」

「良いよ。僕もちょうど街へ行く用事があるんだ。一緒に行こう。‥授業が終わったら、僕がフジコさんのクラスへ迎えに行くよ。」

「嬉しい!では、待ってますね。」

例の女子生徒はフジコさんというそうです。フジコさんは、マキシム君との約束を取り付けると、満足そうに自分のクラスへと戻って行きました。

‥‥私は、今マキシム君が一体どんな顔をしているのか知りたくて、マキシム君の顔を覗きこみました。

「‥‥レミー‥どうした?」

「‥別に。」

「‥何か言いたい事があるなら言いなよ。」

「‥言いたい事なら山程ありますよ。でも何から話せば良いのか‥‥。それに、どうせマキシム君は、今日もずっとフジコさんと一緒にいるんでしょう?」

「レミー、ごめん。でも彼女の為に僕がやれる事があるのなら、やってあげなきゃいけないなって思うんだ。‥‥特にあんな話を聞いてしまうとね。」

「‥‥マキシム君が、困った人を放っておける人じゃないって事ぐらい分かってますよ。‥‥でもちょっと一緒にいる時間が多すぎではないですか?」


「‥‥レミー、君にはヒルトンさんやタケルがいるけど、‥でもフジコさんには、僕しか話を聞く人がいないみたいなんだ。」
 

「‥‥‥。」

‥‥そんな事はないと思いますよ、と言いかけた言葉を飲み込むと、私はマキシム君の顔を見るのをやめて正面に向き直りました。

『フジコさんがマキシム君以外の人と話さないのは、マキシム君以外の人をフジコさん自身が必要としていないからなんですよ!‥‥マキシム君は‥フジコさんだけのマキシム君じゃないのに!フジコさんは、マキシム君に甘えてばかりでずるいです!!』

‥‥なんて、いっそのことマキシム君に言ってしまえたら楽なのに。


始業のチャイムが鳴り、先生がクラスに入って来ました。

いつもと同じように授業は淡々と進んでいきます。

ですが今日に限っては、先生の話す言葉がちっとも頭に入って来ません。

それでも私は、涙で歪んできた視界の中で、先生が書く黒板の文字を必死でノートに書き写しました。

私は夢中でノートにペンを走らせながら‥

『もう‥マキシム君なんて、フジコさんに振り回されて困ってしまえば良いのよ!』

‥なんて、意地悪な事まで考えてしまいました。
 

手を伸ばせば、すぐに触れられるぐらいの距離にいるマキシム君が、今はとても遠くに感じられました。

こんなにもモヤモヤした気持ちをどうすれば良いのか‥私はその方法を知りませんでした。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

麗しのラシェール

真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」 わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。 ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる? これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。 ………………………………………………………………………………………… 短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。

喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。 学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。 しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。 挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。 パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。 そうしてついに恐れていた事態が起きた。 レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

処理中です...