21 / 48
21、初めての授業
しおりを挟む私達は、朝食を食べ終わると急いで校舎へと向かいました。ヒルトンさんに手をひかれて早歩きで向かうと、道行く人達が私達を振り返って見ていきました。
私達が金髪なのが珍しいのかしら?
道行く人達や、同じ学校の生徒達は黒髪の人が多いようですから。
学校の建物の中は、沢山の「クラス」というものがありました。
私は、昨日貰った案内表に記された「特別クラス」へヒルトンさんと共に入りました。
この「特別クラス」は、ヒノキ国人ではない外国籍の人や、結婚や就職が決まっていてすぐに卒業する人達が集められていました。
勿論マキシム様も外国人なので、この特別クラスにいます。
マキシム様は、すでにクラスの後方の席に姿勢良く座っていました。
「‥マキシム様、おはようございます。」
「‥‥レミーさん、おはよう。‥そちらの女性は?」
「同室のヒルトンさんです。」
「おはよう、えっと‥マキシム様?だっけ。宜しくね。」
「よろしく。‥マキシムで良いですよ。」
「へぇ~。‥‥ねえねえ、マキシム君ってお坊ちゃんなの?二人ってお坊ちゃんと召使いの駆け落ちとか?」
ヒルトンさんは、マキシム様をお坊ちゃんと思ったようですね。‥‥何故か私の事はヒルトンさんには召使いに見えたようですが‥‥。
オホン、
「‥レミーさん、僕の事はこれからはマキシムと呼んでくれ。‥どうもここでは、「様」付けで名前を呼ぶのは、不自然な事のようだから。」
「‥‥分かりました。なら、マキシム‥も私の事をレミーと呼び捨てで呼んで下さいね。」
「分かったよ、レミー。」
私がこの一連のやり取りに照れてしまい、顔を赤くさせてモジモジしていると、ヒルトンさんが私の顔を覗きこんできました。
そして私の耳元で小声で囁きました。
「‥レミー、あんたマキシム君の事が好きなんでしょ。それでこの学校まで追いかけて来ちゃったんだね。‥私、応援しちゃう!」
「‥!」
私が驚いた顔をすると、ヒルトンさんはウインクをして違う席の方へ去って行きました。
私がマキシム様‥じゃなくてマキシム‥君を好きだという事は、そんなに態度でバレバレだったでしょうか。‥‥だとしたら、気を付けなきゃ。マキシム君にだけはこの事を悟られないようにしなきゃいけないわ。
「‥レミー?座らないのかい。授業が始まるよ。」
「‥あっ、ごめんなさい。‥マキシム‥君。」
そう言うと私は、マキシム君の隣の席にちゃっかりと座りこみました。
「‥やっぱりレミーは、僕の事を呼び捨てには出来ないか。‥まあ、いいや。‥マキシム君かぁ、悪くないね。良いね。」
マキシム君は、何かブツブツと独り言を言っています。
「‥マキシム君、私何か変だった?」
「全然変じゃないよ。レミー、これから楽しくなりそうだね。」
「ええ、本当に楽しみ。」
‥‥本当に楽しみにしていた初授業でしたが、‥この学校の授業の事を正直甘く見ていました。授業が全く分からないのです。私が後から編入してきたせいもありますが、授業の内容がちっとも頭に入りませんでした。
‥‥どうしよう。私、ここへ勉強をしにきたのに、勉強が頭に入らない‥。先生が何を言ってるのかさっぱり分からない‥。
「レミー、大丈夫かい?」
「‥‥きゃっ!」
私が呆然としていると、マキシム君が心配そうに肩を叩いてきました。私は驚いて、小さな悲鳴をあげてしまいました。
「勉強が難しいんだよね?‥分かるよ。僕も同室のタケルに、昨日勉強を教えてもらわなかったら分からなかったと思う‥。」
「マキシム君、昨日勉強してたんですか。」
「ああ、予習を中心にね。タケルも熱心に教えてくれるものだから、おかげで授業の内容はまあまあ理解できたよ。」
「‥そうですか。」
「あっ、なんなら今日放課後にタケルと図書室で勉強をするから、レミーも来ると良いよ。ほら、ヒルトンさんも誘って。」
私はヒルトンさんの席の方に目をやりました。ヒルトンさんと目が合いましたが‥この話が聞こえていてのでしょうか‥?何故か両手でバツのジェスチャーをして、必死に首を振っています。
私がヒルトンさんの席に向かおうとすると、逃げるように廊下へ出て行ってしまいました。
「‥マキシム君、ヒルトンさんは忙しいみたいですね。もうクラスを出て行ってしまいました。」
私がそう言うと、マキシム君は、クスクス笑っていました。
「ヒルトンさんは自分に正直な人のようだね。きっと、放課後まで勉強をしたくはないんだよ。」
「‥私だけでも、図書室に行っても良いですか。」
「ああ、勿論だよ。ちょうどタケルの事をレミーに紹介したかったし。」
「‥私に紹介ですか?」
「‥あっ、深い意味じゃないんだ。彼は本当に賢いし、レミーが明日から授業に困らないように勉強を分かりやすく教えてくれるだろうから。」
「‥そうなんですね。」
「‥それに、タケルがレミーの姿を昨日どこかで見てたらしいんだ。それで‥タケルもレミーに会ってみたいらしい。どうかな?」
「‥‥‥分かりました。宜しくお願いします。」
私はちょうど誰かに勉強を教わりたいと思っていたところなので、マキシム君の申し出は正直とてもありがたかったです。
‥‥ですがこの時、私はマキシム君に何となくタケル君を押し付けられてるような‥‥そんな気もしてしまっていたのです。
0
お気に入りに追加
631
あなたにおすすめの小説

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。
喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。
学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。
しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。
挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。
パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。
そうしてついに恐れていた事態が起きた。
レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる