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リリー達の運命
しおりを挟む地下牢へ入れられた三人は、自分達の犯した罪の大きさに、今更ながら気付いて恐怖に震えていました。
それに三人共何かを言いたくても言えません。
三人とも地下牢へ入れられてからずっと激しく揉めていた為、看守に騒いだり暴れられないように、猿轡と手枷足枷をされてしまったからです。
地下牢に誰かの足音が響きます。冷たく響く靴の音の持ち主はニーチェ王子でした。
「リリー、君とゲーテの婚約破棄が決まったよ。それとゲーテには領地でゆっくり静養してもらう。もう王宮には戻らないだろう。
それから、君が将来の王太子妃に犯した罪はあまりに大きい。だから本来なら死刑が妥当な刑罰なのだが、死刑の代わりに君とラッセン、バラードには特別に、魔物の討伐隊に加わって貰うことにした。
魔物を討伐した後はお前達の貴族の身分を剥奪し、平民として生きていってもらう。
どうだ、寛大な処罰だろう?」
「「「!」」」
ニーチェ王子はそう言うと、また去って行きました。
残された三人は、侍女達により体を綺麗にされて、豪華な晩餐を済ませると、それぞれふかふかのベッドでゆっくりと休ませて貰える事になりました。
そして翌朝、侍女達に支度を整えられると、立派な戦闘服を着せられて、魔物討伐隊の出発パレードへと参加させられました。討伐隊は、そのまま魔物の討伐へと向かう予定です。
国民達に盛大に送られて、三人は魔物の討伐へと向かいました。
「ラッセン様、私‥魔物なんて怖い‥‥。」
「リリー、僕がいる。絶対に君を守るから。」
魔物討伐を前にして、リリーとラッセンのこの甘ったるい会話を聞いたバラードは、この二人に呆れてしまいました。
「俺はもう、お前達には付き合いきれん。何かあれば、遠慮なくお前達を置いていく。」
二人に向かいそう言い放つと、バラードは二人から離れて魔物討伐隊の後をしっかりとついて行きました。三人の中で唯一バラードだけは、自身の罪をしっかりと反省し、魔物を討伐する気持ちになっていたのです。
そんなバラードとは反対に、魔物討伐隊の列から少しずつ離れていったリリーとラッセンは、とうとう討伐隊とはぐれてしまいました。リリーが足が痛い、と言って頻繁に立ち止まって休んだ為です。
討伐隊からはぐれてしまった二人は、見知らぬ土地で途方にくれていました。慣れない野営にリリーの苛々はつのり、とうとう爆発してしまいました。
「ラッセン、あなた男でしょ!しっかり私を守ってよ。私をこんな地面に寝かせないでよ。私に水と食べ物を探してきなさいよ!」
「リリー、分かった。すぐに水と食べ物を探してくる。寝る所は‥僕の服を脱いでここに敷くから、とりあえずここへ座っていて。」
ラッセンは、そう言ってすぐに森に向かって行きました。
「‥ちょっと、迷わないで早く帰って来なさいよ。」
ラッセンはリリーの言葉に気付き、遠くから一度振りむいてから手を振り、また森の中へと入って行きました。
「‥気をつけて、ラッセン。」
リリーは、ラッセンを心配しながらずっと待っていました。
ですが待てども待てどもラッセンは帰って来ませんでした。
ラッセンはこの時森に住む獣達に見つかってしまい、無残にも噛み殺されてしまいました。そして一晩の間で獣達に肉という肉を食べられてしまい、とうとう骨だけの姿となってしまいました。
リリーはそんな事は知りません。ただひたすらラッセンを待ち続け、とうとう外で座ったまま一晩を過ごしました。
リリーは、ろくに寝られず、喉も渇き、お腹も減っている所を通りがかりの男性に助けて貰いました。
男性は、自分の持っていた水と食べ物と一晩の宿代をリリーに与えてやりました。
男性は、お忍びでこの国に来たそうですが、魔物討伐の騒ぎで国に入るのを一旦断念して自身の国へ帰るところでした。
リリーは男性に自分の生い立ちから、王子達の婚約破棄や新たな婚約の話、ルナールの聖なる力が尽きてしまった為に国の結界が崩れて魔物が侵入してきた事を、ベラベラと喋ってしまいました。
リリーは、ラッセンが自分を置き去りにして逃げたのではないかと疑いはじめていたので、ラッセンを待つのをやめて、この男性について行こうとしました。
「あの、良ければ私も隣国へ連れて行ってくれませんか?」
リリーは男性を上目遣いで見つめ、両手を胸の前で組み、首を傾げて可愛く頼んでみました。
すると、男性はニコリと笑ったものの、持っていた剣を取り出すと、リリーを一瞬で切り捨ててしまいました。
「可愛いお嬢さん。名のり遅れましたが、僕は隣国の王子ランクスと申します。‥あんまりお口が軽いと痛い目にあいますよ。
まあ、僕があなたを切り捨ててから言う事ではないですが‥。
最初はあなたがドレスを着ていないから分かりませんでしたが、その図々しさやしたたかさは間違いなくリリーだ。
リリー、愛しいルナールの受けてきた苦しみや痛みを思い知れ!痛みで苦しみながら野垂れ死ぬがいい!」
そう言ってその男性‥いえ、隣国のランクス王子はリリーを残して、自国へと戻っていきました。
大好きだったルナールがニーチェ王子と婚約した事に大きな衝撃を受けながら‥‥
失意のままの帰国となりました。
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