37 / 38
ピューリッツと過ごす日々
しおりを挟む
ミザリーは心地よい眠りから目を覚ますと、自分の隣に見知らぬ男性が横たわっている事に気付いて驚きました。
「‥‥!」
「おはよう、ミザリーさん。」
『ピューリッツの知り合いかしら?』
「‥おはようございます。すみません、勝手にお邪魔して‥。あっ私はミザリーと言います。」
「‥アッハハ、知ってます。ミザリーさんに僕のこの姿を見せるのは初めてでしたね。‥僕はピューリッツですよ。」
「‥!」
「ミザリーさん、僕のこの姿嫌い?」
「‥あっ、えっ?いえ、なんていうか‥中性的で神秘的で綺麗です。嫌いではないです。」
「なら良かった。だってこれが僕の本来の姿だからね。」
ピューリッツはゆっくりと体を起こし、ミザリーの手をとりました。
「そろそろ体が癒えて元に戻ってるはずです。」
そう言って、ミザリーを立ち上がらせました。
ミザリーはこの時自分の体がとても軽くなっていることに驚きました。それにこれまで頭の中を占領していた悩みや煩わしさが一切無くなり、何とも言えぬ幸福感を感じていました。
「‥ここは天国かしら。こうして立っているだけで涙が溢れそうなほどの幸福感を感じてしまうわ。」
「それは良かったです。」
ピューリッツはミザリーの手を掴んだまま、少しずつ歩き出しました。
「‥どこへ向かうんですか?」
「僕達の住居です。さっきミザリーさんをイメージして作っておいたんです。
ここは想像力が反映される世界なので、頭でイメージしただけで家や食べ物を実際に作り出すことができるんですよ。だからとても便利なんです。」
「‥‥これが、そのイメージするだけで出来た家なの?‥凄いわね‥。」
ミザリーは目の前に突然現れた大きな屋敷を見て驚きの声を上げました。
恐る恐る中へ入ると、そこにはまるでミザリーの実家のように居心地の良さそうな空間が広がっていました。
「僕が作った時の家の内装と、少し変わりましたね。さすがミザリーさん、良いセンスです。」
「えっ、これって私の頭の中のイメージが反映されてできた内装なの?」
「そうです。さあ、もっと色んな物を作り出しましょう。」
「‥食べ物も作れるのかしら?」
ミザリーがそう言って頭の中にパンや温かいスープを思い浮かべた途端、テーブルセットとパンとスープが目の前に現れました。
「もうだいぶイメージの操作に慣れてきましたね。」
「‥そうね。フフフ、なんだか楽しくなってきちゃった。」
ミザリーはそう言うと続け様に色々な物を頭の中にイメージして作り出しましてしまいました。
「‥ピューリッツ!楽しいわ。」
「良かったです。あっ、それからもう一つミザリーさんが喜びそうなものがあります。」
「わぁ、何かしら。」
ミザリーはワクワクしながらピューリッツの言葉を待ちました。
「‥実はこの家の扉ですが、頭の中にイメージした場所へ行けるようにしておきました。」
「‥えっ、嘘!まさかそんな事まで‥。」
「できるんです。ファントムの大元‥つまり僕の父がミザリーさんの為に、この扉をプレゼントしてくれました。」
「‥‥嬉しいわ。でも‥私はここ以外のどこへも行くあてなんてないわ。」
「‥誰にも見つからずにご両親に会いに行けるんですよ。」
「‥‥あっ、えっだって‥良いのかしら。」
「良いんです。僕がミザリーさんのご両親に手紙を出しておきましたので、急にミザリーさんがご両親の元を訪れても驚かれる事はないはずです。」
「‥夢みたい!ありがとう、ピューリッツ!」
ミザリーは感極まって思わずピューリッツに抱きついてしまいました。
「‥あっ、私ったら、ごめんなさい。‥何で急にピューリッツに抱きついてしまったのかしら。」
「ミザリーさん、この世界は嘘の付けない世界なんです。つまり理性や建前や常識よりも、本能や本心が優先されて現れる世界なんです。」
「そんな‥。」
ミザリーはニヤニヤしながら近づいてくるピューリッツを警戒して、両手を口に当てました。
「‥なので、ミザリーさんは今嘘が付けません。」
「‥‥。」
「ミザリーさん、僕と結婚してこの世界で一緒に暮らして下さい。良いですか?」
「‥‥ピューリッツ、あなたの事はちっとも嫌いじゃないし、私はここであなたとずっと暮らしていたい!」
ミザリーは口をしっかりと押さえていたはずなのに、何故かその手を振り払い大声でそう叫んでしまいました。
「良かった‥。」
ピューリッツは真っ赤な顔をして恥ずかしがるミザリーを抱きしめると、そっと口づけを交わしました。
「‥!」
「すみません。‥どうしても僕の本能が抑えられなかったもので‥。」
ピューリッツはそう言って悪戯っぽく肩をすくめました。
ミザリーはそんなピューリッツの事を驚いた顔で見つめました。
「‥ピューリッツって元々そんな性格だったの?」
「そうですよ。」
そう言ってピューリッツは再びミザリーに口づけをしました。
「あっ‥もう!」
ミザリーは少し嫌がる素振りを見せてみせましたが、ピューリッツには彼女が満更でもなかった事がバレバレでした。
ピューリッツはクスクス笑いながらミザリーの首筋や肩にもキスをしていきます。
ミザリーは初めて味わう甘い気持ちに戸惑いながらも、自分の本能に従いピューリッツを受け入れました。
それから数日後、ピューリッツは突然二人の結婚式を挙げようと言い出しました。招待客は一人もいない二人だけの式です。
二人で一緒に結婚式で着る衣装をイメージして作り出し、それを身に纏いファントムの大元である大木の下へ立ち、向き合いました。
「‥僕は健やかなる時も病める時も一生ミザリーさんを愛し続けると誓います。」
「‥私も一生ピューリッツを愛し続ける事を誓います。」
二人は互いに永遠の愛を誓い合い、本当の夫婦になったのです。
「‥‥!」
「おはよう、ミザリーさん。」
『ピューリッツの知り合いかしら?』
「‥おはようございます。すみません、勝手にお邪魔して‥。あっ私はミザリーと言います。」
「‥アッハハ、知ってます。ミザリーさんに僕のこの姿を見せるのは初めてでしたね。‥僕はピューリッツですよ。」
「‥!」
「ミザリーさん、僕のこの姿嫌い?」
「‥あっ、えっ?いえ、なんていうか‥中性的で神秘的で綺麗です。嫌いではないです。」
「なら良かった。だってこれが僕の本来の姿だからね。」
ピューリッツはゆっくりと体を起こし、ミザリーの手をとりました。
「そろそろ体が癒えて元に戻ってるはずです。」
そう言って、ミザリーを立ち上がらせました。
ミザリーはこの時自分の体がとても軽くなっていることに驚きました。それにこれまで頭の中を占領していた悩みや煩わしさが一切無くなり、何とも言えぬ幸福感を感じていました。
「‥ここは天国かしら。こうして立っているだけで涙が溢れそうなほどの幸福感を感じてしまうわ。」
「それは良かったです。」
ピューリッツはミザリーの手を掴んだまま、少しずつ歩き出しました。
「‥どこへ向かうんですか?」
「僕達の住居です。さっきミザリーさんをイメージして作っておいたんです。
ここは想像力が反映される世界なので、頭でイメージしただけで家や食べ物を実際に作り出すことができるんですよ。だからとても便利なんです。」
「‥‥これが、そのイメージするだけで出来た家なの?‥凄いわね‥。」
ミザリーは目の前に突然現れた大きな屋敷を見て驚きの声を上げました。
恐る恐る中へ入ると、そこにはまるでミザリーの実家のように居心地の良さそうな空間が広がっていました。
「僕が作った時の家の内装と、少し変わりましたね。さすがミザリーさん、良いセンスです。」
「えっ、これって私の頭の中のイメージが反映されてできた内装なの?」
「そうです。さあ、もっと色んな物を作り出しましょう。」
「‥食べ物も作れるのかしら?」
ミザリーがそう言って頭の中にパンや温かいスープを思い浮かべた途端、テーブルセットとパンとスープが目の前に現れました。
「もうだいぶイメージの操作に慣れてきましたね。」
「‥そうね。フフフ、なんだか楽しくなってきちゃった。」
ミザリーはそう言うと続け様に色々な物を頭の中にイメージして作り出しましてしまいました。
「‥ピューリッツ!楽しいわ。」
「良かったです。あっ、それからもう一つミザリーさんが喜びそうなものがあります。」
「わぁ、何かしら。」
ミザリーはワクワクしながらピューリッツの言葉を待ちました。
「‥実はこの家の扉ですが、頭の中にイメージした場所へ行けるようにしておきました。」
「‥えっ、嘘!まさかそんな事まで‥。」
「できるんです。ファントムの大元‥つまり僕の父がミザリーさんの為に、この扉をプレゼントしてくれました。」
「‥‥嬉しいわ。でも‥私はここ以外のどこへも行くあてなんてないわ。」
「‥誰にも見つからずにご両親に会いに行けるんですよ。」
「‥‥あっ、えっだって‥良いのかしら。」
「良いんです。僕がミザリーさんのご両親に手紙を出しておきましたので、急にミザリーさんがご両親の元を訪れても驚かれる事はないはずです。」
「‥夢みたい!ありがとう、ピューリッツ!」
ミザリーは感極まって思わずピューリッツに抱きついてしまいました。
「‥あっ、私ったら、ごめんなさい。‥何で急にピューリッツに抱きついてしまったのかしら。」
「ミザリーさん、この世界は嘘の付けない世界なんです。つまり理性や建前や常識よりも、本能や本心が優先されて現れる世界なんです。」
「そんな‥。」
ミザリーはニヤニヤしながら近づいてくるピューリッツを警戒して、両手を口に当てました。
「‥なので、ミザリーさんは今嘘が付けません。」
「‥‥。」
「ミザリーさん、僕と結婚してこの世界で一緒に暮らして下さい。良いですか?」
「‥‥ピューリッツ、あなたの事はちっとも嫌いじゃないし、私はここであなたとずっと暮らしていたい!」
ミザリーは口をしっかりと押さえていたはずなのに、何故かその手を振り払い大声でそう叫んでしまいました。
「良かった‥。」
ピューリッツは真っ赤な顔をして恥ずかしがるミザリーを抱きしめると、そっと口づけを交わしました。
「‥!」
「すみません。‥どうしても僕の本能が抑えられなかったもので‥。」
ピューリッツはそう言って悪戯っぽく肩をすくめました。
ミザリーはそんなピューリッツの事を驚いた顔で見つめました。
「‥ピューリッツって元々そんな性格だったの?」
「そうですよ。」
そう言ってピューリッツは再びミザリーに口づけをしました。
「あっ‥もう!」
ミザリーは少し嫌がる素振りを見せてみせましたが、ピューリッツには彼女が満更でもなかった事がバレバレでした。
ピューリッツはクスクス笑いながらミザリーの首筋や肩にもキスをしていきます。
ミザリーは初めて味わう甘い気持ちに戸惑いながらも、自分の本能に従いピューリッツを受け入れました。
それから数日後、ピューリッツは突然二人の結婚式を挙げようと言い出しました。招待客は一人もいない二人だけの式です。
二人で一緒に結婚式で着る衣装をイメージして作り出し、それを身に纏いファントムの大元である大木の下へ立ち、向き合いました。
「‥僕は健やかなる時も病める時も一生ミザリーさんを愛し続けると誓います。」
「‥私も一生ピューリッツを愛し続ける事を誓います。」
二人は互いに永遠の愛を誓い合い、本当の夫婦になったのです。
37
お気に入りに追加
147
あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

恋愛小説に踊らされている婚約者様へ。悪役令嬢になりますので早めの婚約破棄を所望します
ゆずこしょう
恋愛
巷で流行っている一冊の本がある。
その本の名は
「ラブロマンスは突然に…」
平民女性が貴族男性に見染められ、やがて王妃になるという、なんとも言えないシンデレラストーリーだ。
しかし意外にもこういったストーリーは男女問わず人気がある。
そして、そういった時に現れるのは…夢見る女の子と勘違いした男…。
まさか自分の婚約者に限ってそんなことは無いだろうと思いたいのだが…
「いったたたたた…すみませぇーん。大丈夫ですか?」
「すまない…君こそ大丈夫だったかい?」
って、そんなベタベタな始まりあってたまるか!
と思っているのも束の間。まさかのベタベタな展開が始まったのである。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

元婚約者が愛おしい
碧桜 汐香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。
留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。
フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。
リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。
フラン王子目線の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる