親切なミザリー

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学園生活の再開、新しい生徒会メンバー

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アポロ王子の婚約者であるミザリーの死から数日後、学園の授業が再開されました。

ミザリーの亡くなった日からアポロ王子は、ミザリーの死に関する書類を作成したり、この件に関する王様夫妻への弁明、ミザリーの家族ラファエル侯爵家への説明に奔走していました。

その間他の男達にアリスを独占されないように王宮の一室にアリスを閉じ込めて置きながら‥。


王宮の一室でアポロ王子からミザリーの死や死後の処置についての説明を受けた王様夫妻とミザリーの父ラファエル侯爵でしたが、ミザリーの死をなかなか受け入れられずにいました。

それにアポロ王子の説明は、一方的にミザリーを責める内容で、ミザリーの死後の扱いに関しても非情なものに思われたのです。

彼らはショックから立ち直れずに、黙ったままアポロ王子の事を睨み続けました。‥まるでアポロ王子の事を責めるように‥。

そんな彼らとは対照的に、アポロ王子の方は‥

『こんなにも理路整然と説明をしてるのに王様夫妻も侯爵も何故素直に理解をしてくれないのか?』

‥と少し苛ついてさえいました。

‥まあ確かにアポロ王子がミザリーを殺した訳ではないのですし、王家に対する罪人を王様夫妻の留守中に全ての権限を与えられた王子が、どう処置しようと責められる筋合いはないのです。


長い間続く沈黙と睨み合いの中で、アポロ王子は自問自答してみました。


『‥一体何が問題なのだ?‥俺は何か悪い事をしたか?

悪いのは全てミザリーのはずだろ‥。俺はアリスの為に精一杯頑張ったんだ。

‥何も間違ってない!そもそもミザリーが自殺したのが悪いんだ!』


アポロ王子はそう自分の中で結論付けると、胸を張って王様夫妻や侯爵に向き合いました。

そんなアポロ王子の態度に、とうとう王様も怒って声を荒げてしまいました。

「‥お前には人間の心がないのか。‥よくも、娘を亡くした侯爵の前でそんな態度を‥。しかも、彼女の死体を海へ投げ捨てただと!?お前は狂ってしまったのか!」

「‥王様、もう良いのです。ミザリーが亡くなった今何を言ってみたところで、もうあの娘は帰って来ません。

‥ですが、ミザリーが罪人だとか自殺だというのは納得しかねます。‥そこは詳しく調査をお願いしたいです。」

「‥チッ、だからそれは‥」

王様は、アポロ王子が侯爵に向かって反論しようとするのを制して、侯爵に対しては、ミザリーの犯したとされる罪についての調査と、ミザリーの死因についての調査を必ずすると言う事を約束しました。

そして‥

「‥アポロ、お前はミザリーの婚約者だったじゃないか。昔はあんなに仲良くしていたのに、何故こうも掌を返して冷たい態度を取れるのだ!」

「‥それは貴方方がミザリーの裏の顔を知らないから言えるんです。彼女はとんでもない悪女だったのです。俺は彼女に騙されていたんです!」

「ああ、なんて事をおっしゃるのです。うちのミザリーが具体的に何をしたと言うのですか!‥何を根拠にうちの娘をそこまで悪く言うのですか!‥うっ、うぅ、‥。」

その場で泣き崩れる侯爵を見て、王様は心を痛めました。

そして、すぐにアポロ王子にこの部屋からの退室としばらくの謹慎を命じられたのです。 


アポロ王子は不貞腐れた顔をすると、渋々部屋を出ました。


以降数日間、王様の許しが出るまでの間アポロ王子は反省する事などなく、アリスと共に王宮でのんびりと過ごしました。


数日後、アポロ王子は学園に戻るとすぐに生徒会メンバーの補充に取り掛かりました。

「ミザリーが死んでストーンが生徒会メンバーを降りた今、生徒会にはあと二人のメンバーが必要だ。‥よって、アリスをメンバーに任命する。‥異議ないか?」

「ありません。」

アポロ王子の側近のダクト、それに公爵家の長男サリエルが即座に賛成しました。

それを聞いて、アリスは頬を紅潮させて嬉しそうに微笑みました。

そんなアリスの様子にアポロ王子も満足そうな表情を見せました。

そして‥一瞬緩んでしまった表情を元に戻すと、言葉を続けました。

「それと、あと一人の新しい生徒会メンバーは‥弟のイカロスだ。‥これは皆の意見を聞くまでもなく、学園の先生方からの指示なんだ。宜しく頼むよ。」

「‥あの、イカロス王子は今日は生徒会室には来ないのですか?」

サリエルが新しく生徒会メンバーになるはずのイカロスの不在を不審に思い、アポロ王子に訊ねました。

「ああ‥イカロスは職員室にいるんだ。多分俺達がここにいる限り、生徒会室には来ないだろう‥。俺達の事が苦手らしいからな。でも、言われた事はきちんとやる奴だ。問題ない。」

それを聞いて、ダクトとサリエルが納得いかない表情をしながらも、仕方ないとばかりに小さく頷き賛同しました。


イカロスが生徒会室に来ない事に、アリスも皆んなの手前残念そうなふりを演じましたが‥内心はホッとしていました。

アリスは自分に反抗的な態度をとり、何かとミザリーの味方になっていたイカロスを苦手としていたのです。

「‥さあ、朝礼へ向かおう!」

アポロ王子はそう言って、生徒会メンバー達を引き連れて学園の集会場へと向かいました。

道中、生徒会メンバー達の歩く姿を見て生徒達がキャーキャー騒ぐ声が、アリスの耳に聞こえてきました。

『ああ、なんて素敵なの!皆んなが私の事を羨望の眼差しで見ているわ!そうよ、私はあんた達一般生徒達と違って特別な存在なの!この世界のヒロインなのよ!!』

アリスは大人しそうな笑顔の裏で、他の生徒達に向けて腹の中でそう叫んで高笑いをしていたのです。

この時アリスは、この世界の全ては自分の為に回ってる‥そんな気持ちにすらなっていました。

そしてそんなアリスをさらに喜ばせる事が起こりました。

なんと、隣国のカピエラから近々留学生が来るというのです。しかもその留学生は、なんとカピエラの王子ゼウスだったのです。

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