かわいそうな旦那様‥

みるみる

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12、旦那様の心の変化

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テオは外で馬車の音がするのに気付き、窓から覗いてみました。

馬車からリリアが降りて来ました。

リリアは、この半年ほどの間にとても女性らしく成長していました。胸も膨らんできたし、腰からお尻へのラインもとても色っぽく見えました。


先日リリアがテオの職場にやってきた時も、他の隊員達に、美しい妻だと散々羨ましがられました。

「‥あいつらが騒ぐのも無理はないな。悔しいがリリアは確かに綺麗だ。‥今リリアは段々と女性の体になっていく過渡期にあるのだな‥これからもっと女性らしくなっていくのか‥。」

テオはそのまま窓からリリアを、盗み見し続けました。

リリアは何だか機嫌が良さそうでした。玄関まで迎えに来た執事に笑顔で話しかけていました。

「‥あんな風に笑う事もあるのだな‥。」

テオはリリアが笑っている様子を見て驚きました。

テオは、テオの知らないリリアを沢山知ったせいでしょうか‥、リリアを憎む気持ちが薄れている事に気付きました。


しばらくすると、テオの部屋の扉がノックされました。

リリアが約束通りテオの部屋を訪れたのです。

テオはリリアに向き合い、素直な気持ちで先日の事を詫びました。

「‥リリア、先日は僕の両親が来てる中、一人ぼっちにさせて悪かった。」

「‥‥!」

リリアはてっきりまた叱られると思っていたのでしょう。テオがいきなり謝ってきた事に驚きを隠せない様でした。

鳩が豆鉄砲をくらったような、間抜けな顔をして驚くリリアを見て、テオは思わず笑ってしまいました。

リリアは、相変わらず首を傾げてテオを不思議そうに見ています。

‥リリア、案外可愛い奴だったんだな。

この時、テオはリリアとようやく向き合おうと思い始めたのでした。

ところが、リリアはテオのそんな思いなど露知らず、愛想笑いを浮かべながらテオと会話を交わすのでした。

実はリリアはリリアで、テオの顔を見ながら、テオの話とは全く関係ない事を考えていたのです。

テオとの離婚が円満に進むように、両家の親達が私の味方になった事を、妖精王に報告に行った時の事を思い出していたのです。

『‥妖精王、今日も私の事を可愛いって褒めてくれていたわ。それに私の話を一生懸命に聞いてくれたし、本当に優しくて素敵な方だわ。

おまけに、森の平和を守っていて、妖精達にもとても好かれてるわ。‥うちの旦那様とは大違いね。

‥そう言えば妖精王が、「三年間の期限付きの結婚の最中に、万が一旦那様と私が両思いになっていたらどうするつもりだった?」って聞いてきたけど‥。

確かに最初は、もし三年の内に旦那様がベラ様の事をすっぱり諦めて、私を本気で愛してくれるようになったら‥‥離縁以外の選択肢もあったかも‥‥なんてちらっと思った事もあったけど‥‥。うん、ないわ。今は旦那様との離縁以外の選択肢を選ぶ事は絶対ないわ。』

なんて事をリリアは心の中で思っていました。

テオはリリアを部屋に戻すと、自分も久しぶりに早めに就寝しました。

翌朝テオは、これまでになかったほどスッキリと目覚める事ができたのでした。

こうして、テオは徐々にベラの家へ泊まる回数を減らし、自宅で過ごすようになったのです。

公爵邸に束の間の平和が訪れました。
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