かわいそうな旦那様‥

みるみる

文字の大きさ
上 下
10 / 33

10、それぞれの思惑

しおりを挟む

リリアがお城から公爵邸へ帰ると、すでにテオのご両親が到着していました。

「遅れてしまい、申し訳ありません。」

「いいのよリリアちゃん。‥苦労をかけるわね。」

「‥え?」

「いいのよ。執事から色々聞きました。‥もう隠さなくても良いのよ。」

お義母様はそう言うと、リリアを抱きしめてくれました。

リリアとテオのご両親は、サロンでお茶を飲みながら、テオの事について話し合いました。

リリアが話すよりも前に、執事がある程度の事をご両親に話しておいてくれたおかげで、話はスムーズに進みました。

リリアは、これまでの事や今日の事も含めて、全てを打ち明けました。

それを聞いたご両親は、リリアに対して心から謝罪をしてくれました。


「リリアちゃん、万が一テオがベラさんに熱を上げたまま、財産を食い尽くしてしまったら、外国へ留学している次男を呼び戻して跡継ぎにする事も考えているの。

だからね、あなたが我慢できなくなったらテオと離縁しても良いのよ。だから、領地経営の事もあなたが心配しなくても良いのよ。‥‥それにね、私達には隠し財産もあるのよ。王室も上回るほどのね‥テオには死んでも言わないけどね。」

「‥私も誰にも言いません。」

「ええ、信じてるわ。だから打ち明けたのよ。」

「‥‥。」

「リリアちゃん、いつでもテオと離縁出来る様にしてあげるわ。もう、あなたを解放してあげる。‥私達、あなたに頼りっきりで何もしてあげられなかったから‥これくらいはさせてね。」


「リリアさん、すまない。テオが君と結婚したら、すぐにベラさんと別れて落ち着くと思い込んでいたんだ。‥あいつはもうどうしようもないところまで堕ちてしまったようだ。‥可哀想だが、そろそろ目を覚まして貰わないとな。‥もうこれ以上、あいつのせいでリリアさんや領民達を苦しめたくない。」


リリアとテオのご両親は、テオの不在の中、テオとリリアの離縁に向けて少しずつ動き出していました。



一方テオは、ベラと共に街の宝石店で買い物を楽しんでいました。

「テオ、見てよ。私にピッタリ!」

ベラはさりげなくお店で一番高い宝石のついたネックレスを手に取り、胸元に少し当ててテオに見せていました。

「‥ベラ、なんて綺麗なんだ。その宝石もまるで君の為にあるようじゃないか。‥店長、これを頂くよ。」

「‥公爵様、恐れ入りますが前回の支払いもまだ頂いていません。前回の分のお支払いを頂いてから、こちらの商品をお売りします。」

「‥つまり、今はこれは売れないと言うのだな!」

「‥すみません。我々も真剣に商売をしているんです。‥遊びや慈善活動じゃないんで。」

「‥ちっ!」

「‥テオ?もうこのネックレスをつけても良い?」

「‥ごめん、ベラ。それは今日は買えないんだ。‥またにしよう。‥さあ、気分を変えて食事へ行こう。」

テオにそう言われても、ベラは手にしたネックレスを決して離しませんでした。

「‥嫌よ。これは私のよ。‥テオ、さっさとお金を払ってよ!私に恥をかかせないで。」

「‥ごめん。ベラ、今日は諦めてくれ!」

オホン、

「‥あの、お取り込み中失礼します。大切な商品なので、早く返して貰わないと‥こちらにも考えがありますよ。」

店長はそう言って、ベラに手を差し出しネックレスを返すように促しましたが、ベラはそれでもネックレスを離しませんでした。

すると、店の外から屈強な男達が数人現れ、テオを殴り、ベラを羽交い締めにして、ネックレスを奪い返しました。

「返せー!私のネックレスなのよ!」

そう叫ぶベラを男達は、店の外へ放り投げてしまいました。テオも同じく店から追い出されてしまいました。

「‥公爵様、前回のお代はお屋敷へ行って奥様から支払って頂きます。それと‥‥あなた方は、今後うちの店には出入り禁止とさせて頂きますので。」

店長はそう言い捨てると、すぐに店内へ戻り、店の扉に鍵をかけてしまいました。

店の外に追い出された二人を見て、道を行き交う人々がクスクス笑っています。

「おのれ!リリアのせいだ!」

テオはリリアへの怒りを込めてそう叫びました。

ベラは、自分に恥をかかせたテオにとても怒っていましたが、それよりも‥テオが今までのように自分に貢ぎ物をできないのは、リリアのせいだと思っていました。

なので、ベラも邪魔なリリアを殺してやりたいほど憎んでいました。

「‥テオ、よくも私に恥をかかせたわね。許さないから!」

「ベラ、本当にごめん。‥リリアの奴は、一発ぶん殴っておくよ。そうすれば、少しは大人しくなるだろう‥。」

「‥あら、女性に暴力はいけないわ。可哀想‥。」

「‥ベラは本当に優しいなぁ。それに比べてあいつは‥‥一発と言わず、何発も殴ってやりたいぐらいだ。」

テオがそう呟くと、ベラはとても嬉しそうに笑うのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】これからはあなたに何も望みません

春風由実
恋愛
理由も分からず母親から厭われてきたリーチェ。 でももうそれはリーチェにとって過去のことだった。 結婚して三年が過ぎ。 このまま母親のことを忘れ生きていくのだと思っていた矢先に、生家から手紙が届く。 リーチェは過去と向き合い、お別れをすることにした。 ※完結まで作成済み。11/22完結。 ※完結後におまけが数話あります。 ※沢山のご感想ありがとうございます。完結しましたのでゆっくりですがお返事しますね。

王妃さまは断罪劇に異議を唱える

土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。 そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。 彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。 王族の結婚とは。 王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。 王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。 ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。

(完結)2度目の浮気は許しません。

ちゃむふー
恋愛
「すまなかった…!!俺が悪かった…!!もう2度としないから…!!許してくれっ…!!」 貴方が泣きながらそう言ったので、私は許して差し上げたのに…。 2度目は…容赦しませんよ??

もう一度婚約を、望む貴方は誰ですか?

基本二度寝
恋愛
伯爵令嬢は、見知らぬ男に 「もう一度、婚約して欲しい」と願われた。 もう一度って…貴方誰ですか。 ※本編は終わらせたつもりですが、もう少しだけ続きます。→思いの外話数が伸びてしまいました。 SSから短編に変更。

時に記憶持ちはミスを犯す

基本二度寝
恋愛
王太子は平民上がりの子爵令嬢の肩を抱いて、婚約者に罵声を浴びせた。 何事だと人が集まり、遠巻きにこちらを見ていた。 「貴様は!嫉妬から愛するナージャの授業ノートを破り捨てたそうだな!!」 貴族学園に通う王太子はそこで出会った子爵令嬢ナージャに恋し、愛を知った。 その愛する女が涙を流しているのを見て、王太子は頭に血が上った。 「授業…ノート、ですか?」 「そうだ!!無残にもびりびりに破かれた状態だった!!」 「…そのノートは彼女の物だと?」 「そうだ!」 「ハラスティア様。私が殿下を愛してしまったばかりに怒りを買ってしまったことは理解しています! ですが、私物を破損させるなど、そのような方が王妃になんて!」 子爵令嬢は王太子に縋りついたまま、彼の婚約者であるハラスティアに訴えた。 大きな瞳に涙をためて。 「なるほど…そうですか。…衛兵を呼んでください」

元婚約者は戻らない

基本二度寝
恋愛
侯爵家の子息カルバンは実行した。 人前で伯爵令嬢ナユリーナに、婚約破棄を告げてやった。 カルバンから破棄した婚約は、ナユリーナに瑕疵がつく。 そうなれば、彼女はもうまともな縁談は望めない。 見目は良いが気の強いナユリーナ。 彼女を愛人として拾ってやれば、カルバンに感謝して大人しい女になるはずだと考えた。 二話完結+余談

婚約を破棄して、気になる娘に求婚した王子

基本二度寝
恋愛
幼い頃から婚約していた公爵令嬢との婚約を王子は解消した。 理由は単純だ。 「好きになった娘がいる」 国王も王妃も公爵令嬢も呆れ、再三の説得にもまったく応じない頑なな王子に見切りを付けて、国王は婚約解消を認めた。 婚約者がいなくなった! これでようやく。 王子はいつも彼女に合うときとは違った、王族の衣装を身に纏い、馬車を走らせた。 彼女の元まで。

処理中です...