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2、二人の密約
しおりを挟む「‥テオ様、テオ様。」
「‥あっ何だっけ?‥それで、返事をしてくれるのだろう?さあ、君の口から返事をすぐに聞かせてくれ。」
リリアは、テオの目を真っ直ぐに見据え、ゆっくりと話し始めました。
「‥テオ様は、きっと私の事を体裁を整えるだけの嫁にしたいのですよね。‥テオ様には愛する女性がいるようですし。」
「‥ああ、だとしたら何だ?断わるつもりなら、これ以上君と話をしてても時間の無駄だ。帰りたまえ!」
「‥まあ、そう怒らないで下さい。‥私はそれで勿論良いと言いたいのです。」
リリアのこの言葉に驚いたのか、テオは驚いた顔をしてリリアを見つめていました。
「‥君は‥夫が他の女性に入れ込んでいても平気だと言うのか?」
「‥私はそれでも良いと思っています。ただ、お願いがあるのです。」
「‥何だ、言ってみろよ。」
「‥きっちり三年後に私の事を、旦那様の方から離縁して、田舎の教会へでも送って下さい。」
「‥三年後?」
「‥はい。結婚してすぐに離縁するのは不自然だと思いますので‥。それに、私はテオ様の子供を出産するつもりはありません。三年間子供が産まれなければ、私に子供が出来ない事を理由にして、離縁もしやすいと思いましたので‥。なので、私を抱かれる際は避妊をさせて頂きますので、ご了承下さいね。」
「‥リリア、その事だが‥僕は君と結婚しても、君を抱く事はしない。僕はベラだけを抱きたいんだ。」
「‥分かりました。では、私を一切抱かないまま、三年後に必ず離縁して下さい。」
「‥ああ、それでは婚約成立だな。三年後‥というのは、結婚してからの事でいいんだよな。‥それにしても、子供ができにくい体だなんて、離婚後の再婚が絶望的じゃないか、良いのか?」
「‥良いんです。私は再婚する気はありませんから。」
「‥‥ヘぇ~そうなんだ。‥まぁ、別に君がいいなら良いんだけど。」
テオはそう言って、その場で婚約の書類を書き始めました。こうして二人の婚約は成立したのでした。
リリアがテオと婚約が成立してから一ヶ月が経ちました。巷は美男美女の婚約の話で持ちきりでした。
‥テオは、ベラに現をぬかしてさえいなければ、仕事も出来るし美男子だし、世の女性達にとって一番理想の結婚相手なのでした。
「‥リリア、本当にテオと結婚するのか?」
「‥リリアはなぜテオと結婚するの?」
リリアの長年の友達の花の妖精、チッチとディーラは、リリアがテオとの婚約を決めた日から、毎日リリアにこの質問をしてきました。
「‥私もたくさん婚約話が来てて、いい加減うんざりしてたのです。‥だから、これで良かったのです。それに‥格上の公爵家からの申し出をこちらから断わるのも失礼な話ですし。」
「‥それはそうだけど‥、何だか嫌だな。」
「‥私も‥。」
妖精達はリリアとテオの結婚を未だに渋っていました。
「でも、仕事はできる方なのよ。それに、王様の覚えも良い方なの。‥王様の妹君はテオ様のお母様ですし、私達の結婚をそれはそれは大喜びなんです。」
リリアは妖精達に言いました。ですが、妖精達はまだ納得がいかない様です。そこでリリアは妖精達に、テオとの密約?について話してあげました。
「‥実はね、私達は白い結婚をするのよ。そして三年後に、私が子供ができにくい体だと偽って離縁してもらうの。そうしたら、もう誰とも結婚せずに、田舎の教会で奉仕活動をしながら暮らすの。素敵でしょ?」
「リリア、それ本当?‥それにしても、三年間はやっぱり結婚するんだよね?」
「‥いいんじゃない?三年だけなら。」
何とか妖精達の了承が得られたようで、リリアは安心しました。
リリアの両親も、リリアを心配していました。リリアは、両親には白い結婚の密約については内緒にしていました。‥両親がもし密約の事を知ったら、きっと婚約を破棄するように言うでしょうから‥。リリアは大好きな両親には一切心配をかけたくなかったのでした。
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