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私の妊娠と出産がなかった事になっていた
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姉家族が公爵家を訪れてから何日か後、私はディランのいない日々を現実として受け入れるようになっていました。
そして少しずつ社交界に戻って行ったのですが…何故か誰1人私のディランについての話題に触れている人は誰もいませんでした。
夫を問い詰めると、どうやら私の出産は身内以外には隠されており、妊娠すらなかった事になっていました。
この前公爵家に訪れていたニコールですら、私の妊娠や出産については一切知らないようでした。
なんて事でしょう!
私が夫のアドバイスを受け入れて妊娠中期に入ると同時に自宅に篭り安静な日々を過ごしていた事を、夫と皇太子にいいように利用されてしまったようです。
悲しさと悔しさと怒りで体を震わせていると、
「ドナ、子供はまた作れば良いじゃないか。今度も公爵家の後継として男の子を…。」
「やめて!私は赤ちゃんを産むだけの道具じゃないのよ!また赤ちゃんを産ませるだけ産ませて私から取りあげるの!?」
「いや、今度は大丈夫だ。今度の子は…。」
「もうやめて!うるさいっ!いい加減にしてっ!」
私は両手で頭を掻きむしり部屋に入るなり鍵をして閉めて閉じこもる事にしました。
それでも…今日は月に一回の夫との営みの日です。
もしこの日を逃したら…次の機会はないかもしれないのです。
赤ちゃんが欲しい!私の赤ちゃんが欲しい!!
しばらくの葛藤の後、私は気を取り直して何事もなかったかのように夫の前で振る舞いました。
そして…無事に事を終える事ができたのです。次の日も、そしてその次の日も夫との愛のない行為を済ませて私は再び1人きりの夜を過ごすようになりました。
「赤ちゃん、私の赤ちゃん…」
お腹をさすりながら1ヶ月以上を過ぎた頃、医師が再び妊娠の診断を下しました。
夫は安堵の表情を浮かべながら、医師の前で私を抱き寄せ
「よくやった。」
と褒めてくれましたが…
夫のその言葉を聞いても何の感情も湧きませんでした。
そして案の定夫は今度も…妊娠中期に入った私に社交界への参加を禁じましたが…私はそれを振り切り、出産間近まで精力的に社交界へ居座り続けました。
公爵家の仕事、芸術活動、奉仕活動とふらふらになりながらもやり遂げました。
周りが私のお腹の子を心配して家で大人しくするように勧めますが、私はそれを無視しました。
私はとにかく「自分の妊娠」の事実を周知させたかったのです。
そして、出産の日…
産まれたのは可愛い女の子でした。
可愛い我が子を再び胸に抱いて幸せを噛み締めていると、またもや皇太子がやってきました。
夫と2人肩を寄せ合ってソファーに腰掛けながら私の抱く赤ちゃんを眺めています。
「あなた、だめよ!今度こそこの子は渡さないから!それに今回の私の妊娠と出産はもう周りに隠せないわよ!絶対にこの子は渡さないからー!」
そう言うと私は赤ちゃんを抱いたまま夫に向かい枕や本等手当たり次第に物を投げつけていました。
驚いた夫が、ニヤニヤしながらこの状況を楽しんでいる皇太子の事を庇うようにして部屋から出て行きました。
そして…しばらくして公爵家の護衛騎士達が私を取り押さえ、再び赤ちゃんを取り上げました。
「嫌ー!!絶対に駄目!!」
泣き叫んで抵抗する私を騎士は無情にも羽交締めにして暴力を振るってきました。
私は…また気を失ってしまいました。
…ああ、もうこのまま目覚めたくない。
私はこの時生きる気力を失っていました。
そして少しずつ社交界に戻って行ったのですが…何故か誰1人私のディランについての話題に触れている人は誰もいませんでした。
夫を問い詰めると、どうやら私の出産は身内以外には隠されており、妊娠すらなかった事になっていました。
この前公爵家に訪れていたニコールですら、私の妊娠や出産については一切知らないようでした。
なんて事でしょう!
私が夫のアドバイスを受け入れて妊娠中期に入ると同時に自宅に篭り安静な日々を過ごしていた事を、夫と皇太子にいいように利用されてしまったようです。
悲しさと悔しさと怒りで体を震わせていると、
「ドナ、子供はまた作れば良いじゃないか。今度も公爵家の後継として男の子を…。」
「やめて!私は赤ちゃんを産むだけの道具じゃないのよ!また赤ちゃんを産ませるだけ産ませて私から取りあげるの!?」
「いや、今度は大丈夫だ。今度の子は…。」
「もうやめて!うるさいっ!いい加減にしてっ!」
私は両手で頭を掻きむしり部屋に入るなり鍵をして閉めて閉じこもる事にしました。
それでも…今日は月に一回の夫との営みの日です。
もしこの日を逃したら…次の機会はないかもしれないのです。
赤ちゃんが欲しい!私の赤ちゃんが欲しい!!
しばらくの葛藤の後、私は気を取り直して何事もなかったかのように夫の前で振る舞いました。
そして…無事に事を終える事ができたのです。次の日も、そしてその次の日も夫との愛のない行為を済ませて私は再び1人きりの夜を過ごすようになりました。
「赤ちゃん、私の赤ちゃん…」
お腹をさすりながら1ヶ月以上を過ぎた頃、医師が再び妊娠の診断を下しました。
夫は安堵の表情を浮かべながら、医師の前で私を抱き寄せ
「よくやった。」
と褒めてくれましたが…
夫のその言葉を聞いても何の感情も湧きませんでした。
そして案の定夫は今度も…妊娠中期に入った私に社交界への参加を禁じましたが…私はそれを振り切り、出産間近まで精力的に社交界へ居座り続けました。
公爵家の仕事、芸術活動、奉仕活動とふらふらになりながらもやり遂げました。
周りが私のお腹の子を心配して家で大人しくするように勧めますが、私はそれを無視しました。
私はとにかく「自分の妊娠」の事実を周知させたかったのです。
そして、出産の日…
産まれたのは可愛い女の子でした。
可愛い我が子を再び胸に抱いて幸せを噛み締めていると、またもや皇太子がやってきました。
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そして…しばらくして公爵家の護衛騎士達が私を取り押さえ、再び赤ちゃんを取り上げました。
「嫌ー!!絶対に駄目!!」
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私は…また気を失ってしまいました。
…ああ、もうこのまま目覚めたくない。
私はこの時生きる気力を失っていました。
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