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ドリトルからの急な呼び出し

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 ボルゾイと結婚後、彼がすぐに公爵家を継ぎ、彼の両親が田舎へ引っ越してしまった為、私は彼との穏やかな新婚生活を満喫していました。

 結婚前にあんなにも不安になっていたのが嘘のように幸せな日々が続いていたのです。

 そんな幸せに包まれていた私の元に得体の知れない手紙が届きました。

 しかもその手紙の送り主は「ドリトル」でした。

 以前ボルゾイと侍女の話を盗み聞きした際に聞こえてきた「彼の友人のドリトル」です。

 彼から私宛に送られた手紙に、いったい何が書かれているのかとても気になります。

 ペーパーナイフを刺す手が震えます。心臓が激しく脈うつのも感じました。

 怖い。

 きっと手紙には、何か私が知りたくない夫の事が書いてあるのだと確信していました。

 震える手を胸に当て深呼吸をし、落ち着いたところで一気に手紙の封を開けました。

 中にある便箋には綺麗な文字が数行書かれているだけでした。便箋からは微かな花の香りがします。

「まさか、ドリトルとは夫の友人ではなくて…深い仲の女性なの!?」

 私は夫に裏切られたのかもしれないのです。悲しみや怒りで体全体が震えます。

 震える体をおさえながら、床に落ちた便箋の文字にそっと目を落とすと…

 そこにはとある場所の住所が記されており、大切な話がしたいから来るように…といった内容が書かれていました。

 約束の日時は今日です。しかもあとI時間もない時間帯です。

 こんな強引な約束を直前になって手紙で知らせてくるとは…相手は私よりもかなり上位の貴族のようです。

「行きたくないけど…」

 私は無性に悔しくて約束の場所に素直に向かおうという気持ちにはなりませんでしたが…

 それでも相手のいう大切な話という言葉が気にもなっていました。大切な話というのは、間違いなく夫に関係したもとだと思われます。

 私は侍女を呼んで急いで支度し、ドリトルの待つ場所へと向かいました。

 
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