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遠征の終わり

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(なんて強引な男なの?! もうっ!)

「はぁーー」

(ダグラスったらいつだって変わらないのね。この男は出会ったときからずっと一緒。思ったことをすぐに行動にうつす。彼の言葉にはきっとなんの裏も嘘もないんだわ)

愛が本気で嫌がれば手を止めてくれることもわかっている。けれどもそれはしたくなかった。

愛が抵抗しないと分かると、彼は彼女の上にまたがった。そうしてとても嬉しそうな顔で彼女の全身を舐めるように眺めた。彼女は風呂上がりで肌に何も身に着けていない状態。髪はまだ湿っている。

「やだ……そんなに見ないで……本当に無神経なんだから!」

両手で体を隠してそっぽを向く。するとダグラスはその顎を掴んで強引に自分の方を向かせた。そうしてこれまでにないほど真剣な目で愛を見据える。

いままでの半分ふざけた態度とは全く違う。愛の胸は大きく弾んだ。

「駄目だ、アイ。俺を見ろ。いまからどんな男がお前を抱くのかしっかり見ておけ。そうして俺の気持ちをお前の体にちゃんと刻みつけろ。しばらく会えなくても他の男に目移りしないようにな」

(ばか……あなたみたいなスケベで強引な男性なんて他にいないわ。目移りなんてするわけない)

胸の奥が痛くなって全身が熱くなる。愛はダグラスの両頬に手を当てて、しっかりと青の瞳を見据える。けれどもものの数秒もたたないうちに目を逸らしてしまう。

「――む、無理……ダグラスの顔を見てるとなんかおかしくなる……」

唇を尖らせて赤い頬を膨らませる愛を見て、ダグラスがたまらないといわんばかりに熱いため息をつく。

「はぁぁー、お前は俺をどこまで狂わせれば気が済むんだ、アイ」

すると、いきなり食べられるようなキスをされる。いままでとはまるで違う。捕食するようなキス。

「んっ……んっ!」

熱い舌が愛の口内を隅から隅まで凌辱する。ぐちゅぐちゅと舌の絡まるいやらしい音が寝室に響く。喉の奥まで舐められるかのような深いキスに、頭の奥がぼうっとしてきた。

それでも愛は約束通りに必死で目を開けてダグラスを見る。

彼は我慢の限界のようで、目は欲情を孕んで火照っている。そうして愛の背をベッドの上に押しつけるとようやく唇を離した。そうして熱い舌は首筋を這って首の後ろへと動いていく。

同時に指が彼女の股の間に差し込まれた。もう愛のいい場所は知っているといわんばかりに、指は迷いもせずに花びらを押し分け、愛の蕾をちょうどいい刺激で愛撫する。

(す……ごく気持ちいい……ダグラスに触られるだけでこんなになるなんて……)

もうすでに愛の蜜口は愛液でぬるぬるになっていた。ダグラスは指に愛液をからめとりながら絶妙な愛撫を繰り返した。

「んっ……っ!」

目の前にはダグラスの胸。よほど興奮しているのか肌の上に紅を散らしたように赤くなってきた。そっと舌を出して硬い肌を舐めてみる。

するとダグラスは愛の首筋を噛んだ。噛んだというよりは歯をあてられたという方が適当だろう。愛は小さな声を出す。

「あっ……んっ!」

彼は愛を噛んだまま、まるで獲物を加えた獣のように荒い息を何度も繰り返した。

そうして何も言わずに愛の肩足を持って抱え上げる。するとようやくダグラスの体が離れて顔が見えた。汗ばんだ頬に手を当て、愛は彼の名を囁く。

「……ダグラス」

「アイ……」

その声を合図にダグラスは愛の体を抱え上げる。体がずり上がってダグラスの顔との距離が格段に縮まった。互いに射抜くような視線を絡み合わせ、ダグラスはゆっくりと自身の剛直を愛の体に押し込んでゆく。

狭い膣内に大きな容積のものが穿たれる感覚に、愛は思わず目を閉じそうになる。するとダグラスがそれを妨げた。

「だめだ、アイ――目を閉じるな。俺を見ていろ」

「んっ……んん、あぁん!」

言葉に導かれるように目を開ける。ゆっくりと彼の男根は愛の体内に挿入され、いままで入ったことのない膣の最奥まで誘い込まれる。体中が敏感になって、肌が触れているところからピリピリと電気が走ったようになった。

「はぁっ……はぁっ、はぁっ」

「いま俺が入っているのが分かるか……お前の中に俺がいる。その感覚を絶対に忘れるな、アイ」

愛は官能の息をこぼしながらこくこくと頷いた。体内を圧迫する熱い楔が、まるで心臓にまで届いたように胸をいっぱいに満たす。

(こんなの……忘れられるわけ……ない……あぁ、お願い。もうだめ)

「うご……ぃて」

「なんだ? アイ。苦しいのか?」

全身が敏感になって腰骨の部分にぞわぞわした感覚が溜まってきていた。もう限界だった。愛はダグラスに懇願する。

「ちが……早く動いて……じゃないと私おかしくなりそぅ……」

「っ! ……これ以上俺を煽るな! ここまでされても俺の理性が残っていたことに感謝するんだな」

そういうとダグラスは腰を突き上げた。愛の体はダグラスに抱きかかえられたまま、激しく上下に揺さぶられる。愛液がダグラスの剛直に絡まり何度も卑猥な音を立てた。でもその音すら肌と肌が重なる音でかき消えていく。

脳の奥が痙攣して何も考えられなくなる寸前、愛は心の中で文句を言った。

(こんなのっ、り、理性が残ってるなんて言わないっ!)

それなのに愛はダグラスの激しい求めに溺れていく。汗ばんだ肌が合わさってぴちゃんぴちゃんと音を立てた。

彼は構わず激しく腰をたたきつけ何度も情熱的な抽挿を繰り返す。体内をかき混ぜられるような快感に、愛はすぐに絶頂に至ってしまった。

「あ、イっちゃう! あぁぁ!」

腰を何度もくねらせて快感に身をゆだねた。それでも愛は約束通りにダグラスから目を離さない。

「アイ、お前は本当に可愛い女だな」

そうして何度も何度も繰り返し抱かれた。初めはベッドの上で……しばらくして部屋の隅で壁を背にして、最後には椅子に座ったダグラスの上で……一晩中抱かれた。

「も、やだぁ……もう、イきたくないぃ! ダグラスぅ……あっ! あっ! やだぁ」

嫌だといっている傍から剛直をねじ込まれる。体力には自信があった愛が最後には弱音をはくほど。

結局、その夜。彼女は気絶するように眠ってしまった。

そうして朝。

愛が目を覚ますと、そこにはダグラスの顔がある。金色の髪に青い瞳。角張った輪郭のダグラスはにっこりと微笑んだ。

「おはよう、アイ。体は大丈夫か?」

寝起きが悪いと有名なダグラスが愛よりも早く起きている。しかも笑顔だなんて何かあったのだろうか。愛は驚いて飛び起きた。

「あぁ、昨晩から寝てないからな。ずっとアイの寝顔を見ていたんだが面白かったぞ」

「まさか一睡もしていないの?」

「これからしばらくはアイといる時間が減るからな。そう思うと眠るのが惜しくなった。なぁに、一晩寝なかったくらいで死にはしないさ」

なんでもないことのようにダグラスは言った。そうして当たり前のように愛の乳房を揉み始める。すごくときめく言葉を言われたのにその行動で台無しだ。愛はその手をパチンと叩き落した。

「早く起きないと、ほかの騎士達の迷惑になる。さっさと支度するわよ」

手際よく服を着る愛を見て、ダグラスが残念そうな顔をする。どうしてなのかと尋ねると彼は苦笑いを浮かべた。

「まさかアイがそこまで動けるとは思わなかった。抱きつぶしてしまったかと思ったんだが……俺もまだまだだな」

そんなことはない。愛の腰はガクガクだし全身がけだるい。それにあそこにはまだ何かが入っているような気がする。当然だろう。通常よりも大きめのサイズのもので一晩中抱かれたのだから。けれどもそれを悟られまいと健気にふるまっているだけ。

(もう本当にいつだって強引なんだから……でも――すごく――良かった……)

思い出すだけで腰の奥がきゅぅぅんとなる。

「--! だから隙を見て私の服を脱がそうとするのはやめてっ」

着たばかりのシャツのボタンを外されているのに気が付き、愛は文句を言う。彼は腕を振り払った愛の手首を掴んで、自分の方に引き寄せた。そうして開けたままの唇にキスが落とされる。

「んんっ……ん」

「最後の味見だ。それとアイ。王城とはいっても気負う必要はない。何かあったら俺がかばってやる。ミリリアを傍につけてやるから心配するな」

ダグラスはいつだって愛に優しい。でも愛は彼が優しければ優しいほど不安になってしまう。

(私……こんな風にダグラスと一緒にいていいのかな……)

愛は守られるだけの生活に、不安を覚え始めていた。
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