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ルイスの告白
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事件の翌日にはレイモンドから大きな花束が届けられた。花束に添えられた手紙には便せん2枚にも渡って思いのたけが綴られている。レイモンドは思ったよりもミュリエルに夢中になっているようだ。そんなレイモンドの想いを知るとなおさらにミュリエルは追い詰められた気持ちになって、胸が苦しくなる。
学園に行くともうレイモンドとのことは噂になっているようで、朝から生徒たちにに囲まれて興味津々でレイモンドとのことを詳しく聞かれた。なので素直にお付き合いを始めたことを話しておいた。
これで学園でも公然の仲になったということだ。数日間は学園中でかなりの騒ぎになったようだが、それも日にちを追うごとに徐々に落ち着いてきた。
何でもミュリエルがあまりにも男性に興味を示さないので、陰で実は女性が好きなのではとクレアとの仲を邪推されていたらしい。氷の女王の初めての浮いた噂に皆が驚喜した。
知らなかった。この年になるまで恋を知らないっておかしい事だったなんて。それにしてもみんなの変な疑いも晴れたし、念願のレイモンドとの仲も好調で、なにもかも作戦通りにうまくいっているというのに、なぜか急に不安で押しつぶされそうな気持になる時がある。何故なのだろう。
考えても答えは出ないので、ミュリエルはその感情に蓋をした。
リュークはあの事件以来ミュリエルに構ってくることはなくなった。いい傾向だ。あの男とは相性がとことん悪い。関わらないのが最善だ。レイモンドとは毎日放課後二人であって話をしている。そうして彼はいつも別れ際、唇に軽いキスをする。回数を重ねるごとに、何にも感じないキスにも慣れてきた。この調子なら今後も大丈夫だろう。
ある日、授業の合間に突然ルイスが教室に現れた。ルイスはクラスが別なので会う事は特別授業の時のみだったのだが、急に現れた彼の姿を見てミュリエルは驚いた。
「ルイス、どうしたのそんなに慌てて・・・」
「ちょっと来て!!」
ルイスはクラスメイトが何事かと見守る中、いきなりミュリエルの手を引いて教室の外に連れ出した。そのまま校舎の外まで連れていく。ミュリエルは訳の分からないままに、彼の後をついていった。
「なに?いったいなんなの?ルイス、何かあったの?」
ミュリエルの問いには答えず、ルイスは彼女をひと気のない校舎裏の中庭まで連れて行くといきなり大きな声でいった。
「ミュリエル、レイモンドと付き合っているって本当なのか?!」
「・・・え、ええ。そうよ。数日前からお付き合いをさせていただいてるわ。それがどうかしたの?」
あまりのルイスの剣幕に気おされながらもミュリエルは答えた、身分違いだとかいうつもりなのだろうか。レイモンドは公爵家の跡取りでミュリエルは貧乏子爵家の令嬢だ。実際そんな噂があることも耳に入ってきている。だがミュリエルの王国最高峰であるジリアーニ学園での優秀な成績もあって、そこは暗黙の了解として黙認されているだけなのだ。
「そんな・・・オレはお前がいまは男に興味ないと思っていたから・・・」
「え・・・?」
ミュリエルの肩に置いた両手に力がこもる。彼は泣きそうな顔でミュリエルを見降ろして言った。
「オレじゃダメなのか?!オレなら成績もいいし、王帝魔術騎士になってお前とずっと一緒にいられる!そりオレはレイモンドと違って領地も爵位も受け継ぐわけじゃないけど、絶対に戦争で手柄をたてて、それくらい手に入れて見せる!だから、ミュリエル!オレを好きになれ!!」
「・・・でも・・」
「ずっと好きだったんだ!学園に入って初めてお前を見た時から好きだったんだ!!」
ルイスはそういってミュリエルの体を乱暴に抱きしめた。その体が緊張しているのか小刻みに少し震えている。
気付かなかった。まさかルイスが私を実に5年間も想ってくれていたなんて・・・。だって彼は私を見るたびに嫌がらせや、意地悪を言っていた。そんな状況で誰が自分に恋をしていると思うというのか?!もっと早くにルイスの気持ちを知っていれば、ターゲットの候補に彼も入っていたに違いない。
ミュリエルはそんなルイスの胸に手を置いてルイスと距離を置きながら言った。
「ごめんなさい。私はレイモンドと付き合っているの。こんなことは駄目だわ」
「・・・だからあいつと別れたらいい!オレのものになってくれたら今までみたいじゃなくて、絶対に大切にする!もっと努力して力をつけてお前を守ってやる!!」
「・・・・・・・」
ルイスの直情的な想いの告白にミュリエルは戸惑いながらも、レイモンドを裏切ることはできないともう一度強く思った。一度レイモンドと決めたのだから、それを覆すことはしないと何度も心に誓ったからだ。
「ルイス・・。ごめんなさい。あなたの気持ちは嬉しいけど、もう私はレイモンドのものなの。私からレイモンドに別れを告げるという事はあり得ないわ」
「・・・っ!・・どうしても・・・?」
「・・・・ごめんなさい・・」
ルイスは顔を真っ赤にして俯くと、しばらくそのままの体制でじっとしていた。そうして思いついたように突然顔を上げて、もう一度ミュリエルの顔を射抜くような視線で見つめるとこういった。
「オレ・・・いつまでも待つから・・。ずっと、待つから・・・オレはこれから王国最強の王帝魔術騎士になる!その時にまたお前に聞くからその時にまた答えを聞かせてくれ!約束だぞ!!」
ルイスはそう言い残すと、すぐに振り返って今来た方向をものすごい勢いで走り去っていった。残されたミュリエルは、新緑が辺り一面を覆いつくす中、春の風に吹かれて茫然とルイスの去っていった方向を見ていた。ミュリエルはルイスのまるで嵐のような告白に気おされていた。
自分では制御できないどうしようもない感情・・・あれが恋というものなのか・・・。そんな激しい感情を持ったことは未だかつて誰に対してもない。いま現在レイモンドに対してある感情は、罪悪感と責任感だけだ。これでいいのだろうか?
また感情が揺さぶられて胸が痛む。
「相変わらずのメス犬ぶりだな、ミュリエル。お前は誰かれ構わず金を持っていそうな男には尻尾を振るんだな・・・」
そこに現れたのは一番会いたくなかった人物。リュークだった。
学園に行くともうレイモンドとのことは噂になっているようで、朝から生徒たちにに囲まれて興味津々でレイモンドとのことを詳しく聞かれた。なので素直にお付き合いを始めたことを話しておいた。
これで学園でも公然の仲になったということだ。数日間は学園中でかなりの騒ぎになったようだが、それも日にちを追うごとに徐々に落ち着いてきた。
何でもミュリエルがあまりにも男性に興味を示さないので、陰で実は女性が好きなのではとクレアとの仲を邪推されていたらしい。氷の女王の初めての浮いた噂に皆が驚喜した。
知らなかった。この年になるまで恋を知らないっておかしい事だったなんて。それにしてもみんなの変な疑いも晴れたし、念願のレイモンドとの仲も好調で、なにもかも作戦通りにうまくいっているというのに、なぜか急に不安で押しつぶされそうな気持になる時がある。何故なのだろう。
考えても答えは出ないので、ミュリエルはその感情に蓋をした。
リュークはあの事件以来ミュリエルに構ってくることはなくなった。いい傾向だ。あの男とは相性がとことん悪い。関わらないのが最善だ。レイモンドとは毎日放課後二人であって話をしている。そうして彼はいつも別れ際、唇に軽いキスをする。回数を重ねるごとに、何にも感じないキスにも慣れてきた。この調子なら今後も大丈夫だろう。
ある日、授業の合間に突然ルイスが教室に現れた。ルイスはクラスが別なので会う事は特別授業の時のみだったのだが、急に現れた彼の姿を見てミュリエルは驚いた。
「ルイス、どうしたのそんなに慌てて・・・」
「ちょっと来て!!」
ルイスはクラスメイトが何事かと見守る中、いきなりミュリエルの手を引いて教室の外に連れ出した。そのまま校舎の外まで連れていく。ミュリエルは訳の分からないままに、彼の後をついていった。
「なに?いったいなんなの?ルイス、何かあったの?」
ミュリエルの問いには答えず、ルイスは彼女をひと気のない校舎裏の中庭まで連れて行くといきなり大きな声でいった。
「ミュリエル、レイモンドと付き合っているって本当なのか?!」
「・・・え、ええ。そうよ。数日前からお付き合いをさせていただいてるわ。それがどうかしたの?」
あまりのルイスの剣幕に気おされながらもミュリエルは答えた、身分違いだとかいうつもりなのだろうか。レイモンドは公爵家の跡取りでミュリエルは貧乏子爵家の令嬢だ。実際そんな噂があることも耳に入ってきている。だがミュリエルの王国最高峰であるジリアーニ学園での優秀な成績もあって、そこは暗黙の了解として黙認されているだけなのだ。
「そんな・・・オレはお前がいまは男に興味ないと思っていたから・・・」
「え・・・?」
ミュリエルの肩に置いた両手に力がこもる。彼は泣きそうな顔でミュリエルを見降ろして言った。
「オレじゃダメなのか?!オレなら成績もいいし、王帝魔術騎士になってお前とずっと一緒にいられる!そりオレはレイモンドと違って領地も爵位も受け継ぐわけじゃないけど、絶対に戦争で手柄をたてて、それくらい手に入れて見せる!だから、ミュリエル!オレを好きになれ!!」
「・・・でも・・」
「ずっと好きだったんだ!学園に入って初めてお前を見た時から好きだったんだ!!」
ルイスはそういってミュリエルの体を乱暴に抱きしめた。その体が緊張しているのか小刻みに少し震えている。
気付かなかった。まさかルイスが私を実に5年間も想ってくれていたなんて・・・。だって彼は私を見るたびに嫌がらせや、意地悪を言っていた。そんな状況で誰が自分に恋をしていると思うというのか?!もっと早くにルイスの気持ちを知っていれば、ターゲットの候補に彼も入っていたに違いない。
ミュリエルはそんなルイスの胸に手を置いてルイスと距離を置きながら言った。
「ごめんなさい。私はレイモンドと付き合っているの。こんなことは駄目だわ」
「・・・だからあいつと別れたらいい!オレのものになってくれたら今までみたいじゃなくて、絶対に大切にする!もっと努力して力をつけてお前を守ってやる!!」
「・・・・・・・」
ルイスの直情的な想いの告白にミュリエルは戸惑いながらも、レイモンドを裏切ることはできないともう一度強く思った。一度レイモンドと決めたのだから、それを覆すことはしないと何度も心に誓ったからだ。
「ルイス・・。ごめんなさい。あなたの気持ちは嬉しいけど、もう私はレイモンドのものなの。私からレイモンドに別れを告げるという事はあり得ないわ」
「・・・っ!・・どうしても・・・?」
「・・・・ごめんなさい・・」
ルイスは顔を真っ赤にして俯くと、しばらくそのままの体制でじっとしていた。そうして思いついたように突然顔を上げて、もう一度ミュリエルの顔を射抜くような視線で見つめるとこういった。
「オレ・・・いつまでも待つから・・。ずっと、待つから・・・オレはこれから王国最強の王帝魔術騎士になる!その時にまたお前に聞くからその時にまた答えを聞かせてくれ!約束だぞ!!」
ルイスはそう言い残すと、すぐに振り返って今来た方向をものすごい勢いで走り去っていった。残されたミュリエルは、新緑が辺り一面を覆いつくす中、春の風に吹かれて茫然とルイスの去っていった方向を見ていた。ミュリエルはルイスのまるで嵐のような告白に気おされていた。
自分では制御できないどうしようもない感情・・・あれが恋というものなのか・・・。そんな激しい感情を持ったことは未だかつて誰に対してもない。いま現在レイモンドに対してある感情は、罪悪感と責任感だけだ。これでいいのだろうか?
また感情が揺さぶられて胸が痛む。
「相変わらずのメス犬ぶりだな、ミュリエル。お前は誰かれ構わず金を持っていそうな男には尻尾を振るんだな・・・」
そこに現れたのは一番会いたくなかった人物。リュークだった。
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