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永遠の命の理由
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ユリアナ皇女様の銀色の瞳が少し揺れた気がした。すると突然ユリアナ皇女様の髪と目の色が変わった。銀色の輝く美しい髪は白くて硬い色に・・・銀色の目が血の色のように赤い色に・・変わった。そうして最後には襲撃者である、ジルとギアと同じ色になった。
「・・・これがわたしの本来の色なの・・・。時が止まった代償のようなものね・・・。貴方には全部話しておきたいわ。どうしてこんな事になったのか・・・どうして私たちが永遠の時を過ごさなくてはならなくなったのか・・・」
そう言ってユリアナ皇女様は、ゆっくりとジルとギアの顔を見つめてから一時おいて話し始めた。
「私は前聖女のハナ様が500年前にこの世界に召喚されたとき、ハナ様の侍女としてお仕えしていた魔術師だったわ。ハナ様がこの世界に来た時は彼女はまだ13歳の少女でした、私はその時20歳で、ハナ様の世話をするうちにハナ様は私を、まるで年の離れた姉のように慕ってくれたの」
ユリアナ皇女様の話によると、聖女ハナは私と違って時を止める能力だけでなく、莫大な魔力も持っていた。自身の魔力を使い、時間を戻したり進めたり、空間をつなぐことすら自由にできたので、稀代の能力を持つ聖女様として国民にあがめられていた。
最初は国王の願いを叶えたり、貴族たちの願いを叶えて感謝され、充実した日々を過ごしていたらしいが、時が経つにつれて人々の願いはどんどんエスカレートしていった。願いが叶えられることが当たり前になってきて、その願いが叶えられないと知ると聖女ハナを責めるものまででてきたらしい。
そもそも、皆が幸せになることなど無理な話で、誰かの過去を変えると誰かの過去が悪くなる。そうしてまた再び過去を変える。それを繰り返すうちに王国は崩壊の一途をたどった。
「・・・ハナ様は、18歳の歳で国王様と結婚されました。けれどもハナ様が40歳になるころには王国は内乱と混乱に満ちたまま滅びてしまったの。ハナ様は嘆き悲しみ、また時間をご自分が召喚された年まで戻した」
だけど、何度も何度も過去に戻ってやり直しても、遅かれ早かれ必ず20年後頃には王国は焦土になり人々は争いあい崩壊を繰り返した。何度も何度も聖女ハナは時間を戻したらしい。そうしてユリアナ皇女様もいつも聖女と一緒に過去に戻って、そんな聖女ハナを見続けていたのだ。
「・・・もう何度一緒に歴史をやり直したのか・・・もう忘れてしまいましたわ。そんな時、ハナ様が言ったのです。もう死にたいと・・・。そしてもうこんな悲劇を繰り返さないためにも、次の世代に同じ能力を持つ聖女が現れたら、王国の存亡の為にも殺してほしいと・・・。もうその頃にはハナ様には何の感情もみられませんでした。感情のない人形のような顔のまま、私に最後の命令を下したのです」
聖女ハナは侍女であったユリアナ皇女様とその息子2人の時を、最後の魔力を振り絞って止めた。そして自身の能力を女王の王冠に封じ込めて3つに分けた。そうしてそれは王国に代々語り継がれる伝説の3種の宝飾になった。
次に必ずまた召喚されて来るであろう時を止める聖女の能力を封じる為に・・・。その後、聖女の命を奪う目的で作られた3種の宝飾は、500年もの間にその言い伝えもどこかで変わってしまっていたのだろう。王族に引き継がれる宝飾としてその存在を残した。
ユリアナ皇女様は聖女ハナ亡き後その王国を去り、隣国でひっそりと暮らして王国を陰から監視していたらしい。500年の間に、今の公主制の礎を築いてナイメール公国を建国した王と密約を交わした。ナイメール公国の皇女は王国ができてからずっと、ユリアナ皇女様、ただ一人だったのだ。
私はその話を聞いて、図書館にあった本を思い出した。アルと初めて会った時に手にしたあの本。『 時を統べる少女 』という題名の本。一度手に取って読んでみたことがある。とても悲しい物語だった。
時を自由に操れる少女は、最初は皆の為に時を操る。死んだ子供を助け、病気のおじいさんを救った。けれどもそれに慣れた村人たちは、じきに少女を責める様になる。どうして畑に雨が降らないのか。どうしてあの子は助けたのに私の子は助けないのか。最後は怒った村人の一人に少女が殺されるといった物語だった。
その物語の主人公に聖女ハナが重なる。もしかして誰かが聖女ハナの人生を元に書き残したものなのだろうか。
私は聖女ハナの話を聞いて、ふつふつと怒りが湧いてきた。最後には我慢ができなくなって、怒りに任せて叫んだ。
「・・・馬っ鹿じゃないの・・・!!!」
ジルが不審そうな顔で私を見ながらいう。
「何がだ・・・?」
「悪いけど、私・・いまものすごく聖女ハナに怒っています。どうしてユリアナ皇女様と、ジルさんやギアさんをこんなひどい目にあわせたのか!それでどうして自分だけさっさと死んで逃げたのか!!・・・こんなのっ!ひどすぎる!ユリアナ皇女様達が可哀想・・・」
そうだ。彼女たちは自分だけが時間を止めた中で、少なくとも500年は生き続けてきたんだ。ううん、聖女ハナが何度も歴史を繰り返したと言っていた時間を含めると、恐らくもっと永い時間、永遠とも思える孤独を生きてきたんだ。
「時を止めた中で生きるのは地獄以外の何物でもないわ。どうして自分の大事な人をそんな目にあわせられるのか、理解できない!それにっ・・・あなた達だって・・・!!」
余りの怒りと悔しさに言葉が口から溢れ出てきて止まらない。
「あなた達だって、どうしてそんな理由で私を殺すのよ!私は人生をこれっぽちも諦めていないし、王国を滅亡に導いたりしない!私は聖女ハナとは違う!大事な人をそんな目にあわせるようなことは絶対にしない!もし万が一やるとしたら一緒に・・・一緒に地獄で生きていく!」
ジルとギアが私を驚いたような顔で見つめる。
「お前は俺たちが可哀そうだというのか?!他の奴らは不死身の体を羨ましがっていたぞ!可愛そうだなんて誰も言わなかった!!」
怒ったような声でギアが叫ぶ。
「そうよ!愛する人は先に逝って、誰とも人生を分かち合えないそんな人生、地獄と同じじゃないの!」
私も負けずに言い返した。ギアが私の剣幕にひるむ。
「あんた達はハナ様を崇拝しているのかもしれないけど、私にとってはただの甘えったれの、なんの覚悟もない女だとしか思えない!!私はいつだって覚悟していたわよ。特別な能力を持つ者には責任が伴うのは当り前でしょ!そんな理由で私の大事な人たちを傷つけたあなた達の事も許せない!」
私は言いたいことを言い切って鼻息を荒くしたまま、ギアの方を見ていった。
「あなた達・・・死にたいんでしょう。自分達が死んでいく人をどんな目で見ているのか知っているの?」
「やめなさい!!ジル、ギア彼女のいう事は聞かないで!!」
ユリアナ皇女様がいつもの冷静な表情を崩して、泣きそうな顔で言う。
「ははっ・・・俺たち・・そんなに顔に出ていたのか・・・?」
「・・・ギア・・・」
ジルが顔に苦悶の表情を浮かべて泣きそうな顔のギアを見つめる。私はそんな彼らに真実を突き付けた。たぶんこれが正解だ。永遠の時を生きてきた者が願うこと・・・それは・・・。
「羨ましいんでしょう・・?愛する人と共に生きて死ねる人たちが・・・」
この一言で周囲の雰囲気ががらりと変わった。取り乱すギアとそれを見守るジルを見つめていたユリアナ皇女様さえも、その瞳に涙を浮かべ始めた。
「聖女の能力を持つ私なら、あなた達の時を動かすことができるかもしれません。それとも聖女を殺してまた長い年月を生き続けるのですか?何も生み出さない、何も築けない人生を・・それに・・・」
ここで話を切って、私の話していることを黙って聞いてくれているユーリとアルの方を見てから続けた。その目には心配と愛情が入り混じっている。
「・・・それに私は断言できます。私は絶対に聖女ハナのようにはならない。私の周りには守って守られる大事な人たちがたくさんいます。その人たちがいる限り、王国を滅ぼすようなことにはなりません」
私は腰に両手を当てて胸を張り、精一杯のドヤ顔でユリアナ皇女様、ジルとギアに向かって叫んだ。
「・・・これがわたしの本来の色なの・・・。時が止まった代償のようなものね・・・。貴方には全部話しておきたいわ。どうしてこんな事になったのか・・・どうして私たちが永遠の時を過ごさなくてはならなくなったのか・・・」
そう言ってユリアナ皇女様は、ゆっくりとジルとギアの顔を見つめてから一時おいて話し始めた。
「私は前聖女のハナ様が500年前にこの世界に召喚されたとき、ハナ様の侍女としてお仕えしていた魔術師だったわ。ハナ様がこの世界に来た時は彼女はまだ13歳の少女でした、私はその時20歳で、ハナ様の世話をするうちにハナ様は私を、まるで年の離れた姉のように慕ってくれたの」
ユリアナ皇女様の話によると、聖女ハナは私と違って時を止める能力だけでなく、莫大な魔力も持っていた。自身の魔力を使い、時間を戻したり進めたり、空間をつなぐことすら自由にできたので、稀代の能力を持つ聖女様として国民にあがめられていた。
最初は国王の願いを叶えたり、貴族たちの願いを叶えて感謝され、充実した日々を過ごしていたらしいが、時が経つにつれて人々の願いはどんどんエスカレートしていった。願いが叶えられることが当たり前になってきて、その願いが叶えられないと知ると聖女ハナを責めるものまででてきたらしい。
そもそも、皆が幸せになることなど無理な話で、誰かの過去を変えると誰かの過去が悪くなる。そうしてまた再び過去を変える。それを繰り返すうちに王国は崩壊の一途をたどった。
「・・・ハナ様は、18歳の歳で国王様と結婚されました。けれどもハナ様が40歳になるころには王国は内乱と混乱に満ちたまま滅びてしまったの。ハナ様は嘆き悲しみ、また時間をご自分が召喚された年まで戻した」
だけど、何度も何度も過去に戻ってやり直しても、遅かれ早かれ必ず20年後頃には王国は焦土になり人々は争いあい崩壊を繰り返した。何度も何度も聖女ハナは時間を戻したらしい。そうしてユリアナ皇女様もいつも聖女と一緒に過去に戻って、そんな聖女ハナを見続けていたのだ。
「・・・もう何度一緒に歴史をやり直したのか・・・もう忘れてしまいましたわ。そんな時、ハナ様が言ったのです。もう死にたいと・・・。そしてもうこんな悲劇を繰り返さないためにも、次の世代に同じ能力を持つ聖女が現れたら、王国の存亡の為にも殺してほしいと・・・。もうその頃にはハナ様には何の感情もみられませんでした。感情のない人形のような顔のまま、私に最後の命令を下したのです」
聖女ハナは侍女であったユリアナ皇女様とその息子2人の時を、最後の魔力を振り絞って止めた。そして自身の能力を女王の王冠に封じ込めて3つに分けた。そうしてそれは王国に代々語り継がれる伝説の3種の宝飾になった。
次に必ずまた召喚されて来るであろう時を止める聖女の能力を封じる為に・・・。その後、聖女の命を奪う目的で作られた3種の宝飾は、500年もの間にその言い伝えもどこかで変わってしまっていたのだろう。王族に引き継がれる宝飾としてその存在を残した。
ユリアナ皇女様は聖女ハナ亡き後その王国を去り、隣国でひっそりと暮らして王国を陰から監視していたらしい。500年の間に、今の公主制の礎を築いてナイメール公国を建国した王と密約を交わした。ナイメール公国の皇女は王国ができてからずっと、ユリアナ皇女様、ただ一人だったのだ。
私はその話を聞いて、図書館にあった本を思い出した。アルと初めて会った時に手にしたあの本。『 時を統べる少女 』という題名の本。一度手に取って読んでみたことがある。とても悲しい物語だった。
時を自由に操れる少女は、最初は皆の為に時を操る。死んだ子供を助け、病気のおじいさんを救った。けれどもそれに慣れた村人たちは、じきに少女を責める様になる。どうして畑に雨が降らないのか。どうしてあの子は助けたのに私の子は助けないのか。最後は怒った村人の一人に少女が殺されるといった物語だった。
その物語の主人公に聖女ハナが重なる。もしかして誰かが聖女ハナの人生を元に書き残したものなのだろうか。
私は聖女ハナの話を聞いて、ふつふつと怒りが湧いてきた。最後には我慢ができなくなって、怒りに任せて叫んだ。
「・・・馬っ鹿じゃないの・・・!!!」
ジルが不審そうな顔で私を見ながらいう。
「何がだ・・・?」
「悪いけど、私・・いまものすごく聖女ハナに怒っています。どうしてユリアナ皇女様と、ジルさんやギアさんをこんなひどい目にあわせたのか!それでどうして自分だけさっさと死んで逃げたのか!!・・・こんなのっ!ひどすぎる!ユリアナ皇女様達が可哀想・・・」
そうだ。彼女たちは自分だけが時間を止めた中で、少なくとも500年は生き続けてきたんだ。ううん、聖女ハナが何度も歴史を繰り返したと言っていた時間を含めると、恐らくもっと永い時間、永遠とも思える孤独を生きてきたんだ。
「時を止めた中で生きるのは地獄以外の何物でもないわ。どうして自分の大事な人をそんな目にあわせられるのか、理解できない!それにっ・・・あなた達だって・・・!!」
余りの怒りと悔しさに言葉が口から溢れ出てきて止まらない。
「あなた達だって、どうしてそんな理由で私を殺すのよ!私は人生をこれっぽちも諦めていないし、王国を滅亡に導いたりしない!私は聖女ハナとは違う!大事な人をそんな目にあわせるようなことは絶対にしない!もし万が一やるとしたら一緒に・・・一緒に地獄で生きていく!」
ジルとギアが私を驚いたような顔で見つめる。
「お前は俺たちが可哀そうだというのか?!他の奴らは不死身の体を羨ましがっていたぞ!可愛そうだなんて誰も言わなかった!!」
怒ったような声でギアが叫ぶ。
「そうよ!愛する人は先に逝って、誰とも人生を分かち合えないそんな人生、地獄と同じじゃないの!」
私も負けずに言い返した。ギアが私の剣幕にひるむ。
「あんた達はハナ様を崇拝しているのかもしれないけど、私にとってはただの甘えったれの、なんの覚悟もない女だとしか思えない!!私はいつだって覚悟していたわよ。特別な能力を持つ者には責任が伴うのは当り前でしょ!そんな理由で私の大事な人たちを傷つけたあなた達の事も許せない!」
私は言いたいことを言い切って鼻息を荒くしたまま、ギアの方を見ていった。
「あなた達・・・死にたいんでしょう。自分達が死んでいく人をどんな目で見ているのか知っているの?」
「やめなさい!!ジル、ギア彼女のいう事は聞かないで!!」
ユリアナ皇女様がいつもの冷静な表情を崩して、泣きそうな顔で言う。
「ははっ・・・俺たち・・そんなに顔に出ていたのか・・・?」
「・・・ギア・・・」
ジルが顔に苦悶の表情を浮かべて泣きそうな顔のギアを見つめる。私はそんな彼らに真実を突き付けた。たぶんこれが正解だ。永遠の時を生きてきた者が願うこと・・・それは・・・。
「羨ましいんでしょう・・?愛する人と共に生きて死ねる人たちが・・・」
この一言で周囲の雰囲気ががらりと変わった。取り乱すギアとそれを見守るジルを見つめていたユリアナ皇女様さえも、その瞳に涙を浮かべ始めた。
「聖女の能力を持つ私なら、あなた達の時を動かすことができるかもしれません。それとも聖女を殺してまた長い年月を生き続けるのですか?何も生み出さない、何も築けない人生を・・それに・・・」
ここで話を切って、私の話していることを黙って聞いてくれているユーリとアルの方を見てから続けた。その目には心配と愛情が入り混じっている。
「・・・それに私は断言できます。私は絶対に聖女ハナのようにはならない。私の周りには守って守られる大事な人たちがたくさんいます。その人たちがいる限り、王国を滅ぼすようなことにはなりません」
私は腰に両手を当てて胸を張り、精一杯のドヤ顔でユリアナ皇女様、ジルとギアに向かって叫んだ。
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