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ユーリの想い (後編)
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サクラと夜の秘密の水泳の時間が来た。私は待ちきれなくて約束の時間よりも早めについた。彼女があの水着を着た姿を何度も想像しては、気持ちが高揚していくのを抑えられなくなる。
ようやくサクラが現れて、恥ずかしそうにクラマの服を脱ぐと、私の選んだ水着を下に着こんでいたようだ。私に水着姿を見られるのが恥ずかしいのか、すぐに水の中に飛び込んで私が来るのを待っている。
「ユーリも早くおいでよ。冷たくて気持ちがいいよ!」
私はすぐに服を脱いで川の中に入ると、彼女の腰を抱き川の縁に腰を掛けさせた。彼女の金色の瞳や金色の髪に月の光が当たって輝いている。そして、その吸い付くような滑らかな白い肌の上を、水滴が流れるように曲線を描きながら落ちていく。なんて美しいんだろう。
今はクラマの姿なので、彼女本来の髪や目の色とは違うらしいが、そんなことはどうでもいい。どんな色だろうが私の心を狂わせるには十分すぎるほどに、彼女は内面から溢れんばかりの美しさを放っていた。
まるで月の女神でも舞い降りたのかと思うほどの美しさに息をのむ。こんなに美しい彼女を見ているのが私だけだという思いが、さらに欲望を掻き立てる。
私はなんとか冷静さを取り戻してサクラに言いたいことを伝えた。彼女を守るためには伝えておかなくてはいけない大事なことだ。今回のようなことがあっては取り返しがつかない。これからは私がずっと彼女の傍を離れずに守っていきたい。
「・・・・分かった。私ユーリの世話係になる。今までの恩返しにどんどんお世話するから何でも言いつけてね!!」
彼女は私の気持ちを分かってくれたようで、すぐに気持ちを切り替え私のお世話をすると張り切りだした。そんな単純な所もすごく可愛い。
私が彼女の左肩の傷を見て落ち込んだのを察したのか、こんなことを言った。こういう言い方を彼女は時々する。私は苦笑を漏らした。
「気にしないで、ユーリ。それにこのくらいの怪我なら治してもらわなくてもいいよ。自然に1週間もすれば治るんだから。異世界の人は直ぐ魔法で何でもしたがるけれど、こういう怪我くらいは自分で治さないと、自然治癒力がなくなっちゃうよ」
彼女の全てを理解していると自負している私だが、時々さっぱり分からなくなる。一体サクラは、強い存在なのか弱い存在なのか、まったく判断不可能だ。私に守られていると思えば、その細い腕で剣を握って誰かを守って戦おうとする。そんなサクラもすべてが大好きだ。愛している。
私はサクラとの夜の秘密の水泳を楽しんだ。彼女は私と泳ぎの速さを競ったが、わざと毎回負けてあげた。彼女に勝ってしまうと彼女の泳いでる姿を見逃してしまう。そんなことは絶対にしたくなかった。私だけの彼女をこの目に焼き付けておきたかった。水の中を人魚のように泳ぐ彼女は、とても美しくて感動さえ覚えた。
私は今夜の事は一生忘れないだろう。彼女を独り占めできた気分になって、私は満足して寝所に入った。だがあまりに興奮していて、その晩はあまり眠れなかった。
次の日、サクラは他の雑用係の少年たちと集まって話をしていた。私は少し距離の離れた建物の陰から、そんな彼女をいつものように見守っている。木の葉の隙間から時々見える彼女の顔が楽しそうに笑っているので、護衛中だというのに自然と微笑んでしまう。だめだ、だめだ。これでは護衛にならない。私は自分で自分を戒めた。
その時サクラと少年たちが集まっている方を見て、剣を構える怪しい人物を見つけた。騎士団訓練場では、訓練する場以外での抜刀を禁止されている。私はその人物に気づかれないように背後を取り、後ろから拘束した。
「ぐぅっ!!!」
かなりきつく拘束したのでうめき声を出して暴れようとするのを、力ずくで抑え込む。それは最近訓練場に配属されたマリス騎士だった。腕に力を込めて苦痛を与えながら、一体どういうことなのか理由を聞く。
「何をしているのですか?クラマが目的だというならば容赦はしません。一生涯後悔してもらうことになりますよ」
少し腕の力を緩めてやると、マリス騎士が話し出した。
「どうして、貴方のようなお方が、あんな平民の取るに足らない少年を気にするのですか!!!」
そのセリフで大体の事が分かった。騎士団のみんなが水遊びをしていた時に、マリス騎士がクラマに言ったことも説明が付く。こいつは現在は6番隊所属だがそれ以前は2番隊でいた。その間にあのドルミグ副隊長に傾倒していても不思議ではない。
「そういえばドルミグはいまだに、クラマとキースを恨んでいるようですね。もしこれが彼の命令だとしたら、ドルミグは騎士の称号はく奪だけでは済まなくて、貴族の称号すら返還させられる羽目になるでしょう」
そのセリフに驚いて正気をなくしたマリス騎士が突然叫び始めた。
「違う!!ドルミグ副隊長様は関係ない!!これは俺、個人が考えたことだ!!だからあの方をこれ以上辱めることはやめてください!!」
やはり、ドルミグが一枚噛んでいたか。この時期に6番隊からの訓練場配属は滅多にないことだ。あいつが裏から手を回したな。
私は知りたいことは全て分かったので、マリス騎士を警邏隊に引き渡そうと伝心魔法を使おうとした。その時、とんでもない台詞が耳に飛び込んできた。それはクラマが他の少年に話している言葉だったが、その内容が私にとって許容できる範囲をはるかに超えていた!
「僕は男だからユーリス様をそんな目で見たことはないよ。好きなのは女の子だし、それにユーリス様を恋の対象になんて見たことがない。絶対にありえない!!」
余りの衝撃に一瞬我を忘れた。愛している人がその口で私の事を恋の対象に見たことがない。しかもそんなことは絶対にあり得ないといった。頭の中にサクラの台詞が何度も繰り返される。
私が茫然として呆けている隙を、マリス騎士は見逃さなかった。拘束されていた腕が緩んだすきに抜け出して剣を取り、クラマの方に向かって魔力の玉を打つ。何とか瞬間で我に返り、魔力の玉の軌道をなんとか逸らすことに成功した。
大きなエネルギーを秘めた魔力の玉はサクラのすぐそばを通って、その向こうの壁に当たって壁を崩したようだ。向こうの方から瓦礫が崩れる音が聞こえた、
危なかった!一瞬の差で助かった。私は安堵しながらも、再び腕の中に拘束したマリス騎士を、牽制の意味も込めて思い切り締め上げた。その時、先ほどの攻撃を見たサクラが私たちの前に現れた。私とマリス騎士を見て驚いた顔でこちらを見る。
「ちくしょう!!お前なんか死ねばいいのに!!平民の分際でユーリス隊長をたぶらかしやがって!!お前のせいでドルミグ副隊長があんなふうになっちまったんだ!!!」
マリス騎士がクラマの顔を見て悪態をつく。そのセリフにクラマが身を固くして怯えだした。私はサクラを安心させるため、腕の力を強めてマリス騎士を何もしゃべれない状態にした後でいった。
「クラマ!こいつの言うことは聞かなくていい!こいつは君の命を狙っていたんだ!このまま拘束して騎士団警邏隊に引き渡しますから、君は向こうに行っていてください!」
警邏隊の気配が近づいてくるのが分かるが、これ以上マリス騎士に彼女を傷つけさせることは我慢がならなかった。すると突然思いもよらぬ人物が目の前に姿を現した。金色の流れるような髪に金の瞳を持つ我がウェースプ王国の王子。アルフリード王子、その人だった!!
「サクラ!!無事なのか!!」
このような場所にいるはずもない王子の出現に、駆けつけた警邏隊の奴らもマリス騎士さえも言葉を失っている。アルフリード王子はそんな外野の事など気にもせずに、サクラを腕の中に抱きしめる。
「よかった!!お前に何かあったらどうしようかと思った!」
胸を針で刺されたような鋭い痛みが走る。愛しい彼女が他の男の腕の中にいる姿を見るだけで、こんなに心が痛む。マリス騎士が茫然とした顔をして二人の様子を見つめている。
「うそ・・・だろ・・・どうしてこんなところにアルフリード王子が・・・なんで王子までクラマを・・・」
恐らくこれで彼にも分かったのだろう。自分が平民で取るに足らない少年だと思っていた人物は、本当は王国にとって重要な人物であったという事を・・・。そうでなければ一国の王子が、魔力を莫大に使用する転移魔法など使って、こんなところにまで迎えになど来ないだろう。
マリス騎士は自分がしようとした事の重大さに、今さら気が付いたようだ。脂汗を流しながら、体を細かく震えさせている。
アルフリード王子がサクラを腕の中に抱いたまま、私の方を見ていった。恐らくそのまま王城にサクラを連れて転移するつもりなのだ。
「ユーリス、緊急事態だ!オレはサクラを連れて王城に戻る。お前もすぐに来い!!説明は後でする!」
「アルフリード王子!!」
私が王子の名を呼んだ時にはもう、サクラを連れて転移した後だった。あとに残された警邏隊とマリス騎士は、滅多に拝謁すら叶わない王子を目の前で見た驚きで、茫然と立ちすくんでいた。
マリス騎士が蒼白になって青ざめた顔でつぶやいた。
「俺はなんてことをしたんだ・・・もう、終わりだ・・・もう、何もかも・・終わりだ・・」
ようやくサクラが現れて、恥ずかしそうにクラマの服を脱ぐと、私の選んだ水着を下に着こんでいたようだ。私に水着姿を見られるのが恥ずかしいのか、すぐに水の中に飛び込んで私が来るのを待っている。
「ユーリも早くおいでよ。冷たくて気持ちがいいよ!」
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今はクラマの姿なので、彼女本来の髪や目の色とは違うらしいが、そんなことはどうでもいい。どんな色だろうが私の心を狂わせるには十分すぎるほどに、彼女は内面から溢れんばかりの美しさを放っていた。
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彼女は私の気持ちを分かってくれたようで、すぐに気持ちを切り替え私のお世話をすると張り切りだした。そんな単純な所もすごく可愛い。
私が彼女の左肩の傷を見て落ち込んだのを察したのか、こんなことを言った。こういう言い方を彼女は時々する。私は苦笑を漏らした。
「気にしないで、ユーリ。それにこのくらいの怪我なら治してもらわなくてもいいよ。自然に1週間もすれば治るんだから。異世界の人は直ぐ魔法で何でもしたがるけれど、こういう怪我くらいは自分で治さないと、自然治癒力がなくなっちゃうよ」
彼女の全てを理解していると自負している私だが、時々さっぱり分からなくなる。一体サクラは、強い存在なのか弱い存在なのか、まったく判断不可能だ。私に守られていると思えば、その細い腕で剣を握って誰かを守って戦おうとする。そんなサクラもすべてが大好きだ。愛している。
私はサクラとの夜の秘密の水泳を楽しんだ。彼女は私と泳ぎの速さを競ったが、わざと毎回負けてあげた。彼女に勝ってしまうと彼女の泳いでる姿を見逃してしまう。そんなことは絶対にしたくなかった。私だけの彼女をこの目に焼き付けておきたかった。水の中を人魚のように泳ぐ彼女は、とても美しくて感動さえ覚えた。
私は今夜の事は一生忘れないだろう。彼女を独り占めできた気分になって、私は満足して寝所に入った。だがあまりに興奮していて、その晩はあまり眠れなかった。
次の日、サクラは他の雑用係の少年たちと集まって話をしていた。私は少し距離の離れた建物の陰から、そんな彼女をいつものように見守っている。木の葉の隙間から時々見える彼女の顔が楽しそうに笑っているので、護衛中だというのに自然と微笑んでしまう。だめだ、だめだ。これでは護衛にならない。私は自分で自分を戒めた。
その時サクラと少年たちが集まっている方を見て、剣を構える怪しい人物を見つけた。騎士団訓練場では、訓練する場以外での抜刀を禁止されている。私はその人物に気づかれないように背後を取り、後ろから拘束した。
「ぐぅっ!!!」
かなりきつく拘束したのでうめき声を出して暴れようとするのを、力ずくで抑え込む。それは最近訓練場に配属されたマリス騎士だった。腕に力を込めて苦痛を与えながら、一体どういうことなのか理由を聞く。
「何をしているのですか?クラマが目的だというならば容赦はしません。一生涯後悔してもらうことになりますよ」
少し腕の力を緩めてやると、マリス騎士が話し出した。
「どうして、貴方のようなお方が、あんな平民の取るに足らない少年を気にするのですか!!!」
そのセリフで大体の事が分かった。騎士団のみんなが水遊びをしていた時に、マリス騎士がクラマに言ったことも説明が付く。こいつは現在は6番隊所属だがそれ以前は2番隊でいた。その間にあのドルミグ副隊長に傾倒していても不思議ではない。
「そういえばドルミグはいまだに、クラマとキースを恨んでいるようですね。もしこれが彼の命令だとしたら、ドルミグは騎士の称号はく奪だけでは済まなくて、貴族の称号すら返還させられる羽目になるでしょう」
そのセリフに驚いて正気をなくしたマリス騎士が突然叫び始めた。
「違う!!ドルミグ副隊長様は関係ない!!これは俺、個人が考えたことだ!!だからあの方をこれ以上辱めることはやめてください!!」
やはり、ドルミグが一枚噛んでいたか。この時期に6番隊からの訓練場配属は滅多にないことだ。あいつが裏から手を回したな。
私は知りたいことは全て分かったので、マリス騎士を警邏隊に引き渡そうと伝心魔法を使おうとした。その時、とんでもない台詞が耳に飛び込んできた。それはクラマが他の少年に話している言葉だったが、その内容が私にとって許容できる範囲をはるかに超えていた!
「僕は男だからユーリス様をそんな目で見たことはないよ。好きなのは女の子だし、それにユーリス様を恋の対象になんて見たことがない。絶対にありえない!!」
余りの衝撃に一瞬我を忘れた。愛している人がその口で私の事を恋の対象に見たことがない。しかもそんなことは絶対にあり得ないといった。頭の中にサクラの台詞が何度も繰り返される。
私が茫然として呆けている隙を、マリス騎士は見逃さなかった。拘束されていた腕が緩んだすきに抜け出して剣を取り、クラマの方に向かって魔力の玉を打つ。何とか瞬間で我に返り、魔力の玉の軌道をなんとか逸らすことに成功した。
大きなエネルギーを秘めた魔力の玉はサクラのすぐそばを通って、その向こうの壁に当たって壁を崩したようだ。向こうの方から瓦礫が崩れる音が聞こえた、
危なかった!一瞬の差で助かった。私は安堵しながらも、再び腕の中に拘束したマリス騎士を、牽制の意味も込めて思い切り締め上げた。その時、先ほどの攻撃を見たサクラが私たちの前に現れた。私とマリス騎士を見て驚いた顔でこちらを見る。
「ちくしょう!!お前なんか死ねばいいのに!!平民の分際でユーリス隊長をたぶらかしやがって!!お前のせいでドルミグ副隊長があんなふうになっちまったんだ!!!」
マリス騎士がクラマの顔を見て悪態をつく。そのセリフにクラマが身を固くして怯えだした。私はサクラを安心させるため、腕の力を強めてマリス騎士を何もしゃべれない状態にした後でいった。
「クラマ!こいつの言うことは聞かなくていい!こいつは君の命を狙っていたんだ!このまま拘束して騎士団警邏隊に引き渡しますから、君は向こうに行っていてください!」
警邏隊の気配が近づいてくるのが分かるが、これ以上マリス騎士に彼女を傷つけさせることは我慢がならなかった。すると突然思いもよらぬ人物が目の前に姿を現した。金色の流れるような髪に金の瞳を持つ我がウェースプ王国の王子。アルフリード王子、その人だった!!
「サクラ!!無事なのか!!」
このような場所にいるはずもない王子の出現に、駆けつけた警邏隊の奴らもマリス騎士さえも言葉を失っている。アルフリード王子はそんな外野の事など気にもせずに、サクラを腕の中に抱きしめる。
「よかった!!お前に何かあったらどうしようかと思った!」
胸を針で刺されたような鋭い痛みが走る。愛しい彼女が他の男の腕の中にいる姿を見るだけで、こんなに心が痛む。マリス騎士が茫然とした顔をして二人の様子を見つめている。
「うそ・・・だろ・・・どうしてこんなところにアルフリード王子が・・・なんで王子までクラマを・・・」
恐らくこれで彼にも分かったのだろう。自分が平民で取るに足らない少年だと思っていた人物は、本当は王国にとって重要な人物であったという事を・・・。そうでなければ一国の王子が、魔力を莫大に使用する転移魔法など使って、こんなところにまで迎えになど来ないだろう。
マリス騎士は自分がしようとした事の重大さに、今さら気が付いたようだ。脂汗を流しながら、体を細かく震えさせている。
アルフリード王子がサクラを腕の中に抱いたまま、私の方を見ていった。恐らくそのまま王城にサクラを連れて転移するつもりなのだ。
「ユーリス、緊急事態だ!オレはサクラを連れて王城に戻る。お前もすぐに来い!!説明は後でする!」
「アルフリード王子!!」
私が王子の名を呼んだ時にはもう、サクラを連れて転移した後だった。あとに残された警邏隊とマリス騎士は、滅多に拝謁すら叶わない王子を目の前で見た驚きで、茫然と立ちすくんでいた。
マリス騎士が蒼白になって青ざめた顔でつぶやいた。
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