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ユーリのプロポーズ
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アイシス様の献身的な、いや暴力的な看護で、私の体は見る見るうちに回復した。
ギルセナ王国から帰ってきてもう5日にもなるのにまだアイシス様の許可が下りず、いまだにベットの上で悶えていた。
うぅー・・・体、動かしたいよ!!
なんとか腕と足の筋肉だけでもベットの上で回復させようと、腕立て伏せをはじめた時、折り悪くユーリが突然部屋に入ってきた。ぎょっとして顔を右に回すと、目が合った。私の長い黒い直毛の髪がベットの上に垂れ下がって、さぞ恐ろしい姿だったに違いない。
「サ・・・サクラ・・何をしているんですか?」
そう私に尋ねるユーリの顔が、動揺して固まっている。
「こ・・これはね、腕の筋肉を鍛える運動なの。騎士団では、やったりしないの?」
「異世界の運動は変わっていますね。こちらでは筋肉は魔力を筋肉に通して鍛えますので、実際運動したりはしません」
えーーって事は、魔力ゼロの人は一生ひょろひょろってことなの?ずるい!私が頬を膨らませると、ユーリは笑っていった。
「サクラは鍛えなくてもいいですよ。だって世界最強ですから。それに私がついていますから、誰にも傷つけさせませんよ」
嫌味なのか?そりゃ、私の能力は世界最強だけど、世界一地味でもある。
「大丈夫、私だって本当は強いんだから。エルドレッド王子に2発も叩き込んだのよ。誰も褒めてくれないけどね」
私はベット上に正座で座って、剣を持っているかのように両手を振り上げる。そんな私の姿を見て、ユーリが溺愛マックススマイルになる。そしてベット脇の床に片膝を付いて座った。私がユーリに椅子を勧めようとする直前にユーリが突然、真剣な顔になって私を見た。
「サクラ・・・今日は話があってきました。聞いていただけますか?」
なんだろう、かしこまって・・・。
私はあまりのユーリの真剣な表情に、正座をしながらユーリのいる方向に向いて座りなおした。ユーリが騎士服のポケットから小さな箱を取り出して、私の目の前に差し出す。ちいさく息を吸ったかと思うと、ユーリは一気に話し始めた。
「サクラ、私は初めて君に会った時から君を愛していました。爵位も騎士の地位も国王に返還します。そして田舎で一緒に暮しましょう。もちろん君に似た子供も沢山ほしいです」
ユーリはそこで箱を開けて中身を見せた。箱の中には小さな指輪が入っていた。
「ただのユーリスとして君に結婚の申し込みに来ました。私と結婚してください。」
私は声が出なかった。なんていったらいいんだろう・・・。
でも、逃げちゃいけない。これは私が言うべきことだ。たとえユーリを傷つけても・・・それが私が彼にできる唯一のことだから。私は決心してはっきりとユーリの目を見ていった。
「ユーリ、私ね。アルフリードが好きなの。彼となら田舎に住めなくても、子供ができなくてもそれでもいいと思えるの。だから、ごめんなさい・・。」
泣いちゃだめだ!私が泣くのはずるい!私は目に力を込めて、涙を押しとどめた。
「ありがとう。サクラ・・・」
ユーリはそう笑いながら小さな声でいった。
「きちんと言葉にしてくれてありがとう。サクラ・・」
「わ・・・私こそ・・・ありがとう。こんな私を好きだって言ってくれてありがとう」
もう限界だった、せき止めていた涙が溢れてくる・・・。
「泣かないで・・泣かせるつもりはなかった」
ユーリは切なさそうな声で私にいう。
「な・・・泣いてないから・・これは涙じゃないから・・・」
私がそういうと、ユーリは箱の蓋を閉じて、再びポケットにしまうと立ち上がって言った。
「これで覚悟は決まった。ありがとうサクラ。アルフリード王子と幸せになってください」
そういって、私の部屋を後にした。
私はユーリにこれ以上かける言葉も見つからず、無言のまま見送るしかなかった。
ごめんね、ユーリ。
ギルセナ王国から帰ってきてもう5日にもなるのにまだアイシス様の許可が下りず、いまだにベットの上で悶えていた。
うぅー・・・体、動かしたいよ!!
なんとか腕と足の筋肉だけでもベットの上で回復させようと、腕立て伏せをはじめた時、折り悪くユーリが突然部屋に入ってきた。ぎょっとして顔を右に回すと、目が合った。私の長い黒い直毛の髪がベットの上に垂れ下がって、さぞ恐ろしい姿だったに違いない。
「サ・・・サクラ・・何をしているんですか?」
そう私に尋ねるユーリの顔が、動揺して固まっている。
「こ・・これはね、腕の筋肉を鍛える運動なの。騎士団では、やったりしないの?」
「異世界の運動は変わっていますね。こちらでは筋肉は魔力を筋肉に通して鍛えますので、実際運動したりはしません」
えーーって事は、魔力ゼロの人は一生ひょろひょろってことなの?ずるい!私が頬を膨らませると、ユーリは笑っていった。
「サクラは鍛えなくてもいいですよ。だって世界最強ですから。それに私がついていますから、誰にも傷つけさせませんよ」
嫌味なのか?そりゃ、私の能力は世界最強だけど、世界一地味でもある。
「大丈夫、私だって本当は強いんだから。エルドレッド王子に2発も叩き込んだのよ。誰も褒めてくれないけどね」
私はベット上に正座で座って、剣を持っているかのように両手を振り上げる。そんな私の姿を見て、ユーリが溺愛マックススマイルになる。そしてベット脇の床に片膝を付いて座った。私がユーリに椅子を勧めようとする直前にユーリが突然、真剣な顔になって私を見た。
「サクラ・・・今日は話があってきました。聞いていただけますか?」
なんだろう、かしこまって・・・。
私はあまりのユーリの真剣な表情に、正座をしながらユーリのいる方向に向いて座りなおした。ユーリが騎士服のポケットから小さな箱を取り出して、私の目の前に差し出す。ちいさく息を吸ったかと思うと、ユーリは一気に話し始めた。
「サクラ、私は初めて君に会った時から君を愛していました。爵位も騎士の地位も国王に返還します。そして田舎で一緒に暮しましょう。もちろん君に似た子供も沢山ほしいです」
ユーリはそこで箱を開けて中身を見せた。箱の中には小さな指輪が入っていた。
「ただのユーリスとして君に結婚の申し込みに来ました。私と結婚してください。」
私は声が出なかった。なんていったらいいんだろう・・・。
でも、逃げちゃいけない。これは私が言うべきことだ。たとえユーリを傷つけても・・・それが私が彼にできる唯一のことだから。私は決心してはっきりとユーリの目を見ていった。
「ユーリ、私ね。アルフリードが好きなの。彼となら田舎に住めなくても、子供ができなくてもそれでもいいと思えるの。だから、ごめんなさい・・。」
泣いちゃだめだ!私が泣くのはずるい!私は目に力を込めて、涙を押しとどめた。
「ありがとう。サクラ・・・」
ユーリはそう笑いながら小さな声でいった。
「きちんと言葉にしてくれてありがとう。サクラ・・」
「わ・・・私こそ・・・ありがとう。こんな私を好きだって言ってくれてありがとう」
もう限界だった、せき止めていた涙が溢れてくる・・・。
「泣かないで・・泣かせるつもりはなかった」
ユーリは切なさそうな声で私にいう。
「な・・・泣いてないから・・これは涙じゃないから・・・」
私がそういうと、ユーリは箱の蓋を閉じて、再びポケットにしまうと立ち上がって言った。
「これで覚悟は決まった。ありがとうサクラ。アルフリード王子と幸せになってください」
そういって、私の部屋を後にした。
私はユーリにこれ以上かける言葉も見つからず、無言のまま見送るしかなかった。
ごめんね、ユーリ。
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