49 / 57
ユーリスの届かぬ想い
しおりを挟む
サクラは今どうしているのだろうか?アルフリード王子が無理やり彼女を転移魔法で連れ去ってから、私の心は揺れ動いたままだ。
ギルセナ国の森の中で休憩を取った時、彼女は一人で立ってみるといって聞かなかった。地面に降ろして立たせて上げると、子供のように喜んでから微笑んだ。自分で立てることがそんなに嬉しいのかと、微笑ましく思った。私が森の説明をすると、サクラはあらたまって身を正すと私にお礼を言った。
「ユーリ、こんなに遠くまで私を迎えに来てくれてありがとう!」
その時の彼女は鬱蒼とした魔獣が出る森の中にいながら、純白の花嫁の衣装をまとい、その白色のドレスの上に透き通るような色をした黒髪をたらしていて、まるで色の無い世界に浮かび上がった一筋の虹のように美しかった。
一瞬見惚れて時間を忘れるが、気を取り直して先ほどの自分を誤魔化すかのように饒舌になる。
「サクラ、その格好。とても素敵です。黄色のドレスも似合っていましたけど、純白色もその黒髪に映えてものすごく綺麗です。惚れ直しました」
サクラがいつものように照れて頬を桜色に染めながら目を逸らした。そんな仕草も全てが可愛くて仕方が無い。二人きりの時間を楽しんでいると、邪魔なアルフリード王子がやってきた。クリスティーナのことで彼女に誤解されているのが堪らなく嫌らしい。
自業自得だ。あんな女の術中にはまり、サクラを傷つけた事は彼女が許そうとも私は一生許さない。私は殿下を睨んだ。
アルフリード王子が弁解を重ねる度に、サクラの機嫌は悪くなる一方だった。殿下が他の女性に見せるような冷血な態度で、彼女に接したであろう事は想像の範囲内だったが、まさか憎悪の感情までぶつけていたとは・・・サクラはその悪感情に無防備にさらされて、かなり傷ついているようだった。怒りが増してくる。
彼女は思い出しながら話すうちに、その時の感情が蘇ったようでだんだん感情的になってきた。そこで彼女は言ったのだ。
一番大切な人に裏切られて憎まれて怒鳴られた・・と。
私はショックを隠せなかった。アルフリード王子がクリスティーナに骨抜きにされたせいで、サクラが王城を出たと聞いた時から恐れていた事だった。
責任感の強い彼女が騎士訓練所の仕事も中途半端なまま、何もかも捨てて出て行った。しかも彼女は私の帰りを待とうとはしなかった。その事実に、まさかとは思っていたが・・・。
でもこれで確信した。彼女は・・・サクラは私よりもアルフリード王子が好きなのだと・・・。
その後の彼女は感情に流されたまま、子供のように言葉を紡いでいった。異世界にたった一人で連れてこられた17歳の少女の本心だったに違いない。今まで気丈に抑えていた感情が爆発したのだろう。
私は嘆き悲しむ彼女を抱き締めることしかできなかった。これが愛しい彼女に私ができる精一杯だった。
私はその時に決心した。彼女が誰を選ぼうとも、私はサクラを一生愛して悲しい時はこうして抱き締めてあげよう・・・。
ギルセナ国の森の中で休憩を取った時、彼女は一人で立ってみるといって聞かなかった。地面に降ろして立たせて上げると、子供のように喜んでから微笑んだ。自分で立てることがそんなに嬉しいのかと、微笑ましく思った。私が森の説明をすると、サクラはあらたまって身を正すと私にお礼を言った。
「ユーリ、こんなに遠くまで私を迎えに来てくれてありがとう!」
その時の彼女は鬱蒼とした魔獣が出る森の中にいながら、純白の花嫁の衣装をまとい、その白色のドレスの上に透き通るような色をした黒髪をたらしていて、まるで色の無い世界に浮かび上がった一筋の虹のように美しかった。
一瞬見惚れて時間を忘れるが、気を取り直して先ほどの自分を誤魔化すかのように饒舌になる。
「サクラ、その格好。とても素敵です。黄色のドレスも似合っていましたけど、純白色もその黒髪に映えてものすごく綺麗です。惚れ直しました」
サクラがいつものように照れて頬を桜色に染めながら目を逸らした。そんな仕草も全てが可愛くて仕方が無い。二人きりの時間を楽しんでいると、邪魔なアルフリード王子がやってきた。クリスティーナのことで彼女に誤解されているのが堪らなく嫌らしい。
自業自得だ。あんな女の術中にはまり、サクラを傷つけた事は彼女が許そうとも私は一生許さない。私は殿下を睨んだ。
アルフリード王子が弁解を重ねる度に、サクラの機嫌は悪くなる一方だった。殿下が他の女性に見せるような冷血な態度で、彼女に接したであろう事は想像の範囲内だったが、まさか憎悪の感情までぶつけていたとは・・・サクラはその悪感情に無防備にさらされて、かなり傷ついているようだった。怒りが増してくる。
彼女は思い出しながら話すうちに、その時の感情が蘇ったようでだんだん感情的になってきた。そこで彼女は言ったのだ。
一番大切な人に裏切られて憎まれて怒鳴られた・・と。
私はショックを隠せなかった。アルフリード王子がクリスティーナに骨抜きにされたせいで、サクラが王城を出たと聞いた時から恐れていた事だった。
責任感の強い彼女が騎士訓練所の仕事も中途半端なまま、何もかも捨てて出て行った。しかも彼女は私の帰りを待とうとはしなかった。その事実に、まさかとは思っていたが・・・。
でもこれで確信した。彼女は・・・サクラは私よりもアルフリード王子が好きなのだと・・・。
その後の彼女は感情に流されたまま、子供のように言葉を紡いでいった。異世界にたった一人で連れてこられた17歳の少女の本心だったに違いない。今まで気丈に抑えていた感情が爆発したのだろう。
私は嘆き悲しむ彼女を抱き締めることしかできなかった。これが愛しい彼女に私ができる精一杯だった。
私はその時に決心した。彼女が誰を選ぼうとも、私はサクラを一生愛して悲しい時はこうして抱き締めてあげよう・・・。
0
お気に入りに追加
907
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
《 ベータ編 》時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?
南 玲子
恋愛
時を止めるの最新作、出ました!!ベータ編です。日本で普通の高校生だった倉島 桜 17歳は聖女として異世界に召喚され、偽物と判断されて大神殿から放り出された。一人異世界で生きていかなければいけなくなった桜は、持ち前の前向きさと素直さで騎士団訓練場の雑用係の少年クラマとして働き始める。そこでユーリス騎士隊長とアルフリード王子に出会い、王位争奪の揉め事に巻き込まれながら、時を止める力を使ってなんとか危機を脱出する。今回は、怪しげな襲撃者が出てきて聖女の命を狙っているという。サクラの命が危ない!!サクラを愛する二人の男性。ユーリス騎士隊長とアルフリード王子は彼女を守りきれるのだろうか?襲撃者たちの狙いは一体何なのか?!聖女の秘密に迫る今回の作品。必読です。
時を止めるの最新作、出ました!!ベータ編です。日本で普通の高校生だった倉島 桜 17歳は聖女として異世界に召喚され、偽物と判断されて大神殿から放り出された。一人異世界で生きていかなければいけなくなった桜は、持ち前の前向きさと素直さで騎士団訓練場の雑用係の少年クラマとして働き始める。そこでユーリス騎士隊長とアルフリード王子に出会い、王位争奪の揉め事に巻き込まれながら、時を止める力を使ってなんとか危機を脱出する。今回は、怪しげな襲撃者が出てきて聖女の命を狙っているという。サクラの命が危ない!!サクラを愛する二人の男性。ユーリス騎士隊長とアルフリード王子は彼女を守りきれるのだろうか?襲撃者たちの狙いは一体何なのか?!聖女の秘密に迫る今回の作品。必読です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる