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クリスティーナの最後
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どのくらいそうしていたのか、気がつくと私は泣き疲れて眠ってしまっていたみたいで、再び馬車の中にクラウス様といた。馬車の微妙な揺れが心地よくて、また眠りそうになった時に、最後に覚えている記憶を思い出して赤面した。
やばい・・醜態をさらしてしまった。さすがにあれはいただけない。もし私がああいう場面に出くわしたら、一目散に逃げている。何かの雑誌の記事で、嫌われる女の行動ナンバー3に、感情的に泣く女というのがあった。もう二人とも私のことが大嫌いになったに違いない。
悶々と悩んでいると、私の目が覚めた事に気がついたクラウス様がいった。
「大丈夫か、水でも飲むか?」
私が頷くと、クラウス様が水の入った容器を手渡してくれた。体を起こして足元に横たわるマリス騎士を蹴らないように注意しながら長座席に座る。
「サクラの目が覚めたら説明をしてくれと殿下から頼まれているんだが、クリスティーナについて話すけど聞くつもりはあるか?」
「はい・・・お願いします」
クラウス様は私が王城を出てから会った出来事を、残さずに話してくれた。ゆいかちゃんがクリスティーナ様の正体を掴んでつかまえたこと・・・皆が私のために動いてくれたこと・・・。
それを聞いて、涙が枯れるくらい泣いたと思っていたのに、また涙が出てきて驚いた。クラウス様が心配そうに見るので安心させるためにいった。
「・・・これは嬉し涙なんです。私こんなに沢山の人に助けられていたんですね。それなのに私。元の世界に帰りたいなんて・・・自分の馬鹿さかげんに呆れます・・・ふふふ」
この時からだったと思う。私がこの異世界で生きていく覚悟を本当の意味で抱いたのは。
私は気を取り直して疑問に思っていたことを聞いた。
「あの・・・これからどうするんでしょうか?名目上私はレンブレント国王の花嫁で、その花嫁をさらってきてしまって、国家間の争いごとになったりしないんでしょうか?」
クラウス様は丁寧に説明してくれた。
「第一に貴方は、セリーヌ・ド・ボン・クレーヌ公爵令嬢ではない。正式にはウェースプ王国のセシリア・デラ・ルベージュ令嬢です。レンブレント国王が我が国の令嬢を拉致して無理やり結婚しようとした事を、公式に各国に通達する予定です。第2にレンブレント国王は死にました・・・というか時が動けば死ぬでしょう」
「どういうこと?死んだって・・・」
私は不穏な単語に驚きが隠せなかった。
「教会を去り際に、クリスティーナを見かけました。彼女は手に伝説の魔剣を持っていました。おそらく結婚の儀式用に用意されていた物を盗み出したのでしょう。彼女はレンブレント国王を狙っていました。恐らくその魔剣でレンブレント国王もろとも死ぬつもりだと思います」
クラウス様の話では、その伝説の魔剣で刺せば刺された者は刺した者の命と交わり、次に産まれ変わる時には同じ魂で産まれるらしい。刺した瞬間に互いの命は消え去り、次の生への準備にはいるとされている。
その性質から王族などの上位貴族の結婚式には、必ず儀式として形式的に用いられるらしい。死が二人を分かつとも、ずっと同じ生を生きられるようにと・・・。
「ギルセナ王国は独裁国家です。圧倒的な権力を誇る国王が亡くなれば、おそらく長らく圧制に耐えてきた国民が決起するでしょう。国は一時期荒れる事になるでしょうが、結果的に国民の生活は良くなると思います」
私は最後に見たクリスティーナ様の笑顔を頭に思い浮かべて、居たたまれない気持ちになった。
彼女も私と同じくらいの年の女の子だった。一体どんな人生を送ったら、自分の命を懸けてまで主人の命令に従い、最後にその主人と一緒に死ぬなんで決断をするようになるんだろう。
私は心の中でクリスティーナの冥福を祈った。
やばい・・醜態をさらしてしまった。さすがにあれはいただけない。もし私がああいう場面に出くわしたら、一目散に逃げている。何かの雑誌の記事で、嫌われる女の行動ナンバー3に、感情的に泣く女というのがあった。もう二人とも私のことが大嫌いになったに違いない。
悶々と悩んでいると、私の目が覚めた事に気がついたクラウス様がいった。
「大丈夫か、水でも飲むか?」
私が頷くと、クラウス様が水の入った容器を手渡してくれた。体を起こして足元に横たわるマリス騎士を蹴らないように注意しながら長座席に座る。
「サクラの目が覚めたら説明をしてくれと殿下から頼まれているんだが、クリスティーナについて話すけど聞くつもりはあるか?」
「はい・・・お願いします」
クラウス様は私が王城を出てから会った出来事を、残さずに話してくれた。ゆいかちゃんがクリスティーナ様の正体を掴んでつかまえたこと・・・皆が私のために動いてくれたこと・・・。
それを聞いて、涙が枯れるくらい泣いたと思っていたのに、また涙が出てきて驚いた。クラウス様が心配そうに見るので安心させるためにいった。
「・・・これは嬉し涙なんです。私こんなに沢山の人に助けられていたんですね。それなのに私。元の世界に帰りたいなんて・・・自分の馬鹿さかげんに呆れます・・・ふふふ」
この時からだったと思う。私がこの異世界で生きていく覚悟を本当の意味で抱いたのは。
私は気を取り直して疑問に思っていたことを聞いた。
「あの・・・これからどうするんでしょうか?名目上私はレンブレント国王の花嫁で、その花嫁をさらってきてしまって、国家間の争いごとになったりしないんでしょうか?」
クラウス様は丁寧に説明してくれた。
「第一に貴方は、セリーヌ・ド・ボン・クレーヌ公爵令嬢ではない。正式にはウェースプ王国のセシリア・デラ・ルベージュ令嬢です。レンブレント国王が我が国の令嬢を拉致して無理やり結婚しようとした事を、公式に各国に通達する予定です。第2にレンブレント国王は死にました・・・というか時が動けば死ぬでしょう」
「どういうこと?死んだって・・・」
私は不穏な単語に驚きが隠せなかった。
「教会を去り際に、クリスティーナを見かけました。彼女は手に伝説の魔剣を持っていました。おそらく結婚の儀式用に用意されていた物を盗み出したのでしょう。彼女はレンブレント国王を狙っていました。恐らくその魔剣でレンブレント国王もろとも死ぬつもりだと思います」
クラウス様の話では、その伝説の魔剣で刺せば刺された者は刺した者の命と交わり、次に産まれ変わる時には同じ魂で産まれるらしい。刺した瞬間に互いの命は消え去り、次の生への準備にはいるとされている。
その性質から王族などの上位貴族の結婚式には、必ず儀式として形式的に用いられるらしい。死が二人を分かつとも、ずっと同じ生を生きられるようにと・・・。
「ギルセナ王国は独裁国家です。圧倒的な権力を誇る国王が亡くなれば、おそらく長らく圧制に耐えてきた国民が決起するでしょう。国は一時期荒れる事になるでしょうが、結果的に国民の生活は良くなると思います」
私は最後に見たクリスティーナ様の笑顔を頭に思い浮かべて、居たたまれない気持ちになった。
彼女も私と同じくらいの年の女の子だった。一体どんな人生を送ったら、自分の命を懸けてまで主人の命令に従い、最後にその主人と一緒に死ぬなんで決断をするようになるんだろう。
私は心の中でクリスティーナの冥福を祈った。
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