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嫌な予感
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私が王城に着いた時、いつも出迎えてくれるアルがそこに居なかった。
「今日はアルフリード殿下は、人と会うお約束がありまして来られません。大丈夫ですよ。私が代わりに南棟までお連れしますから」
ルーク補佐官様はそういうが、私はなんだか嫌な予感がした。アルとはもう10日以上会っていない。こんな事はアルと図書館で初めて出会って、初めてのことだったからだ。
南棟についてしばらくしてから、時間があったので久しぶりにブレント君を訪ねてみることにした。王宮の庭園を探してみると、意外とすぐに見つかった。
彼は西側の庭園で生垣の手入れをしている最中だった。庭いじりようの厚手の手袋に、カールした茶色い髪を麦藁帽から覗かせている。私をそのまん丸の目で見とめた瞬間、ひまわりのような笑顔で出迎えてくれた。
「ブレント君。久しぶり。元気だった?」
「はい。セシリア様も、お元気そうでなによりです」
あー癒されるーー!!この笑顔があれば、これからのスパルタ淑女教育も耐えられる!私は仕事の手を止めようとするブレント君にそのままでいいといって、しばらく彼の仕事ぶりを眺めながら会話した。
「僕が生まれた村は、この王城から100キノくらい離れたところなんです。その村は花が名産で、いろんな種類の花を栽培しています。今くらいの時期は一番の見ごろで、村中に色が溢れてものすごい美しさなんですよ」
「そうなんだ。私も一度行ってみたいな」
私は木陰の花壇のふちに腰掛けて、頬杖をつきながらブレント君の生まれ育った村に思いをはせる。
「村には僕が両親が死んだときに親切にしてくれた、ローズおばさん夫婦が居ますから、セシリア様がいらっしゃったら、腰を抜かして驚きますよ。本物のお姫様が来たって・・・くくく」
そばかすだらけのあどけない顔で笑いながら話す。いや・・・わたし本物ではないお姫様なんですけどね・・。
二人でそんな他愛もない話をしていると、向こうの方から人影が近づいてくるのに気がついた。そっと目を凝らすとそのうちの一人はアルのようだった。そういえば人と会う約束だといっていた。王国の大切なお客様なのかもしれないので、ブレント君と息を殺して生垣の陰に隠れる。
だんだんアルが近づいてくる。どうやらお客様は一人のようだ。目を凝らして見てみると、目を疑うような光景に息を呑んだ。
生垣の隙間から私が見たものは、楽しそうに互いに目を合わせながら談笑しあう二人の男女・・・アルフリード王子とクリスティーナ様だった。
傍目からみても二人はかなり仲がいいようで、クリスティーナ様の右手はアルの左腕にさりげなく置かれている。アルが彼女の耳元近くで何かを囁くと、こぼれる様な声を漏らしてクリスティーナ嬢が笑いだす。
ショックを受けてその場で動けないままでいる私に、ブレント君が二人に気づかれないように小声で言う。
「この一週間程よくお二人をこの庭園で見かけます。こうしてみると本当に良くお似合いですよね」
この一週間・・・。アルが政務が忙しいと、図書館に来なかった間も二人は会っていたのだろうか・・・。そうだ、今だって私が王城に来ているのを知っていながら、彼女との逢瀬を優先させている。
もしかして・・・。
私の頭の中に嫌な想像が広がっていく。
もしかしてアルは・・・クリスティーナ様を・・・
私はそれから自分がどうやって王宮の自分の部屋に戻ったのか覚えていない。気がつくと、寝室のベットの上でうつ伏せになっていた。心臓の鼓動が早鐘を打ったかのように響いている。
そうだ・・・なにか理由があるのかもしれない。それに万が一アルが本当にクリスティーナ様を好きになったとしても、私が文句を言う筋合いはない。私はアルの恋人でも何でもないからだ。
そう考えたとたんに、胸を針で突かれた様な痛みが突き抜ける。
大丈夫、そうなっても私は大丈夫。だって私はアルをそういう意味で好きではないのだから・・・。
私は自分に言い聞かせるように何度も心の中でそうつぶやいた。
「今日はアルフリード殿下は、人と会うお約束がありまして来られません。大丈夫ですよ。私が代わりに南棟までお連れしますから」
ルーク補佐官様はそういうが、私はなんだか嫌な予感がした。アルとはもう10日以上会っていない。こんな事はアルと図書館で初めて出会って、初めてのことだったからだ。
南棟についてしばらくしてから、時間があったので久しぶりにブレント君を訪ねてみることにした。王宮の庭園を探してみると、意外とすぐに見つかった。
彼は西側の庭園で生垣の手入れをしている最中だった。庭いじりようの厚手の手袋に、カールした茶色い髪を麦藁帽から覗かせている。私をそのまん丸の目で見とめた瞬間、ひまわりのような笑顔で出迎えてくれた。
「ブレント君。久しぶり。元気だった?」
「はい。セシリア様も、お元気そうでなによりです」
あー癒されるーー!!この笑顔があれば、これからのスパルタ淑女教育も耐えられる!私は仕事の手を止めようとするブレント君にそのままでいいといって、しばらく彼の仕事ぶりを眺めながら会話した。
「僕が生まれた村は、この王城から100キノくらい離れたところなんです。その村は花が名産で、いろんな種類の花を栽培しています。今くらいの時期は一番の見ごろで、村中に色が溢れてものすごい美しさなんですよ」
「そうなんだ。私も一度行ってみたいな」
私は木陰の花壇のふちに腰掛けて、頬杖をつきながらブレント君の生まれ育った村に思いをはせる。
「村には僕が両親が死んだときに親切にしてくれた、ローズおばさん夫婦が居ますから、セシリア様がいらっしゃったら、腰を抜かして驚きますよ。本物のお姫様が来たって・・・くくく」
そばかすだらけのあどけない顔で笑いながら話す。いや・・・わたし本物ではないお姫様なんですけどね・・。
二人でそんな他愛もない話をしていると、向こうの方から人影が近づいてくるのに気がついた。そっと目を凝らすとそのうちの一人はアルのようだった。そういえば人と会う約束だといっていた。王国の大切なお客様なのかもしれないので、ブレント君と息を殺して生垣の陰に隠れる。
だんだんアルが近づいてくる。どうやらお客様は一人のようだ。目を凝らして見てみると、目を疑うような光景に息を呑んだ。
生垣の隙間から私が見たものは、楽しそうに互いに目を合わせながら談笑しあう二人の男女・・・アルフリード王子とクリスティーナ様だった。
傍目からみても二人はかなり仲がいいようで、クリスティーナ様の右手はアルの左腕にさりげなく置かれている。アルが彼女の耳元近くで何かを囁くと、こぼれる様な声を漏らしてクリスティーナ嬢が笑いだす。
ショックを受けてその場で動けないままでいる私に、ブレント君が二人に気づかれないように小声で言う。
「この一週間程よくお二人をこの庭園で見かけます。こうしてみると本当に良くお似合いですよね」
この一週間・・・。アルが政務が忙しいと、図書館に来なかった間も二人は会っていたのだろうか・・・。そうだ、今だって私が王城に来ているのを知っていながら、彼女との逢瀬を優先させている。
もしかして・・・。
私の頭の中に嫌な想像が広がっていく。
もしかしてアルは・・・クリスティーナ様を・・・
私はそれから自分がどうやって王宮の自分の部屋に戻ったのか覚えていない。気がつくと、寝室のベットの上でうつ伏せになっていた。心臓の鼓動が早鐘を打ったかのように響いている。
そうだ・・・なにか理由があるのかもしれない。それに万が一アルが本当にクリスティーナ様を好きになったとしても、私が文句を言う筋合いはない。私はアルの恋人でも何でもないからだ。
そう考えたとたんに、胸を針で突かれた様な痛みが突き抜ける。
大丈夫、そうなっても私は大丈夫。だって私はアルをそういう意味で好きではないのだから・・・。
私は自分に言い聞かせるように何度も心の中でそうつぶやいた。
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