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宰相の姪 クリスティーナ嬢
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1週間後、やっとユーリが魔獣退治から帰還するとの連絡が入った。私は小躍りでもし始めるのかと思わんばかりに喜んだ。
やった!!この地獄の特訓から開放される!!
いま私はアルの執務室でそのニュースをたった今、アルから聞いたところだ。その傍らにはルーク補佐官様が立っている。心の底からの私の笑顔を見てアルが眉をしかめる。
「・・・そんなにユーリスに会えるのが、嬉しいのか・・・」
アルの無表情の顔にほんのり切なさがうかんでいたのを、浮かれていた私は全然気が付いていなかった。
「はい。本当に嬉しいです!!やっと騎士訓練場に帰れるんですね!!もうこのまま王城で一生過ごすのじゃないかと、不安で夜も眠れませんでした!!」
私の言葉に反応して、アルの無表情の上に無表情が張り付いた顔をして、苦しそうに言葉を紡ぎだす。
「・・・そうか・・王城で一生過ごすのは・・・そんなに嫌なのか・・」
「そうです!だって眠るとあの肖像画が私を襲いに来る夢をみるんです。デルフォヌ夫人じゃなくてデリューヌ夫人だぞぅって!!もう悪夢です!」
あまりにアルフリード王子から悲壮感が漂ってきたため、ルーク補佐官が助け舟を出した。
「ほらセシリア嬢は、淑女教育でお疲れでしたので、今回開放されることで喜んでいらっしゃるのですよ。決してアルフリード殿下と別れるのが嬉しいという訳ではないのです」
私はルーク補佐官の言葉に、やっと我が意を得たりとばかりに話し出す。
「大体、淑女教育って貴族の方が生まれたときからやっているものを、たった1週間やそこらで全部詰め込もうとするから、もう最初に詰めた記憶が漏れ出してきちゃって・・・。うううううぅ、だって、だって、これ以上はもう無理なんですぅ・・」
ルーク補佐官は、キューリス夫人をはじめたくさんの教師から、セシリア嬢は聡明で物覚えも良く、何でもすぐに器用にこなすとべた褒めの賛辞を受けている。
しかしそれらはおそらく、セシリア嬢のその生来の生真面目さから、教師の期待に応えようとして、必要以上に頑張ってしまうきらいがあるからのようだ。求めたこと以上に結果を出してしまうから、教師のほうもますます更なる上を求めてしまう。
これは一度、教師達と話し合ってみる必要があるな・・とルーク補佐官は思った。
その時、侍従が執務室にやってきた。なんでも宰相の姪のクリスティーナ様が、王城に到着したらしい。彼女はリュースイ宰相に市井で生きていた所を見いだされてから、2ヶ月ほど貴族のレディとしての訓練を受けたそうだ。
宰相がクリスティーナ様をアルに紹介したいというので、私まで貴賓室について行く事になった。豪華で天井の高い格式高そうな部屋につくと、そこには恰幅のいい、ちょび髭を生やしたリュースイ宰相にクリスティーナ嬢が、アルフリード王子を待っていた。
アルが自己紹介を終えると、彼女は平民として今まで育ってきたとは思えないほどに優雅にアルフリード王子に礼をした。
「クリスティーナ・ダン・ボロヌイエールです。お会いできて光栄です。アルフリード殿下」
「これは・・・」
クリスティーナ様を一目見たとたんに、ルーク補佐官様が感嘆の声を漏らした。それは彼女が思いがけず洗練されていたからではない。クリスティーナ嬢の雰囲気や見た目があまりにもセシリア嬢に似ていたからである。クリスティーナ様は驚く事に私と同じ黒いロングの髪に、黒い瞳をしていた。もちろん顔の造作は全然違うが・・・。
アルフリード殿下も同じ気持ちを抱いたようで、意外な様子でクリスティーナ様を見つめている。
そこに宰相が口を開いた。
「我が弟の妻が黒い髪に黒い眼をしていましたから、母親に似たのでしょう。こうして比べてみるとセシリア嬢とはかなり違いますが、後ろから見ると区別がつきそうにありませんな。注意してくださいね。アルフリード殿下・・・ははは」
そういって笑った。皆が挨拶をした後私の出番になったので、私もクリスティーナ様に挨拶をした。
クリスティーナ様は私を見てはにかんだように笑った。
か・・・可愛い!!
私はクリスティーナ様と今度私が王城に来たら一緒にお茶をする約束をした。なんてたって私。今日中には、何が何でも訓練場に帰るつもりでいますからね!!
アルがどんな風に彼女のことを思ったのか、少し気になってチラッと顔を見てみると、ばっちり目が合って、後でこっそりこんなことを耳打ちされた
「大丈夫だ。オレは子供の頃から筋金入りの女嫌いだ。どんな女でも大嫌いだから安心しろ」
はて・・・じゃ私は一体・・・あまり深く考えないでおこう。うん・・・。
私はアルに見送られてルベージュ子爵家へ向かった。最後にまた図書館で会う日の約束も取り付けた。
アルは最後に名残惜しそうに私の頬にキスをした。護衛の人が見ている前だったので私は真っ赤になり、それからはアルの顔を見ることができなかった。
やった!!この地獄の特訓から開放される!!
いま私はアルの執務室でそのニュースをたった今、アルから聞いたところだ。その傍らにはルーク補佐官様が立っている。心の底からの私の笑顔を見てアルが眉をしかめる。
「・・・そんなにユーリスに会えるのが、嬉しいのか・・・」
アルの無表情の顔にほんのり切なさがうかんでいたのを、浮かれていた私は全然気が付いていなかった。
「はい。本当に嬉しいです!!やっと騎士訓練場に帰れるんですね!!もうこのまま王城で一生過ごすのじゃないかと、不安で夜も眠れませんでした!!」
私の言葉に反応して、アルの無表情の上に無表情が張り付いた顔をして、苦しそうに言葉を紡ぎだす。
「・・・そうか・・王城で一生過ごすのは・・・そんなに嫌なのか・・」
「そうです!だって眠るとあの肖像画が私を襲いに来る夢をみるんです。デルフォヌ夫人じゃなくてデリューヌ夫人だぞぅって!!もう悪夢です!」
あまりにアルフリード王子から悲壮感が漂ってきたため、ルーク補佐官が助け舟を出した。
「ほらセシリア嬢は、淑女教育でお疲れでしたので、今回開放されることで喜んでいらっしゃるのですよ。決してアルフリード殿下と別れるのが嬉しいという訳ではないのです」
私はルーク補佐官の言葉に、やっと我が意を得たりとばかりに話し出す。
「大体、淑女教育って貴族の方が生まれたときからやっているものを、たった1週間やそこらで全部詰め込もうとするから、もう最初に詰めた記憶が漏れ出してきちゃって・・・。うううううぅ、だって、だって、これ以上はもう無理なんですぅ・・」
ルーク補佐官は、キューリス夫人をはじめたくさんの教師から、セシリア嬢は聡明で物覚えも良く、何でもすぐに器用にこなすとべた褒めの賛辞を受けている。
しかしそれらはおそらく、セシリア嬢のその生来の生真面目さから、教師の期待に応えようとして、必要以上に頑張ってしまうきらいがあるからのようだ。求めたこと以上に結果を出してしまうから、教師のほうもますます更なる上を求めてしまう。
これは一度、教師達と話し合ってみる必要があるな・・とルーク補佐官は思った。
その時、侍従が執務室にやってきた。なんでも宰相の姪のクリスティーナ様が、王城に到着したらしい。彼女はリュースイ宰相に市井で生きていた所を見いだされてから、2ヶ月ほど貴族のレディとしての訓練を受けたそうだ。
宰相がクリスティーナ様をアルに紹介したいというので、私まで貴賓室について行く事になった。豪華で天井の高い格式高そうな部屋につくと、そこには恰幅のいい、ちょび髭を生やしたリュースイ宰相にクリスティーナ嬢が、アルフリード王子を待っていた。
アルが自己紹介を終えると、彼女は平民として今まで育ってきたとは思えないほどに優雅にアルフリード王子に礼をした。
「クリスティーナ・ダン・ボロヌイエールです。お会いできて光栄です。アルフリード殿下」
「これは・・・」
クリスティーナ様を一目見たとたんに、ルーク補佐官様が感嘆の声を漏らした。それは彼女が思いがけず洗練されていたからではない。クリスティーナ嬢の雰囲気や見た目があまりにもセシリア嬢に似ていたからである。クリスティーナ様は驚く事に私と同じ黒いロングの髪に、黒い瞳をしていた。もちろん顔の造作は全然違うが・・・。
アルフリード殿下も同じ気持ちを抱いたようで、意外な様子でクリスティーナ様を見つめている。
そこに宰相が口を開いた。
「我が弟の妻が黒い髪に黒い眼をしていましたから、母親に似たのでしょう。こうして比べてみるとセシリア嬢とはかなり違いますが、後ろから見ると区別がつきそうにありませんな。注意してくださいね。アルフリード殿下・・・ははは」
そういって笑った。皆が挨拶をした後私の出番になったので、私もクリスティーナ様に挨拶をした。
クリスティーナ様は私を見てはにかんだように笑った。
か・・・可愛い!!
私はクリスティーナ様と今度私が王城に来たら一緒にお茶をする約束をした。なんてたって私。今日中には、何が何でも訓練場に帰るつもりでいますからね!!
アルがどんな風に彼女のことを思ったのか、少し気になってチラッと顔を見てみると、ばっちり目が合って、後でこっそりこんなことを耳打ちされた
「大丈夫だ。オレは子供の頃から筋金入りの女嫌いだ。どんな女でも大嫌いだから安心しろ」
はて・・・じゃ私は一体・・・あまり深く考えないでおこう。うん・・・。
私はアルに見送られてルベージュ子爵家へ向かった。最後にまた図書館で会う日の約束も取り付けた。
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