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アイシス様と戦場に行く

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アイシス様は、私が気でも触れたのではないかと思ったらしく、すぐにアイシス様のお屋敷に帰る馬車に無理やり一緒に乗せられた。
イワノフ町に行くには転移門無しでは、馬で一週間の距離だ。なので転移門のある騎士団総本部に行きたかったので、馬車の中でアイシス様に必死でお願いした。

能力のことは話せないので、私がどうして大魔獣を倒せるというのか、その根拠を信じてもらうのは絶対不可能だ。
だけど、どうしても譲れない。
頑固として考えを変えない私に、アイシス様が言った。

「いい?転移門は限られた場所にしかない、高位魔術と高位魔法で作られたもので、王都には3箇所あるの。王城と騎士団総本部、そして大神殿。どこも結界で何重にも周りを固められているから、進入するのは不可能なのよ。それにもし仮にできたとしても、あとで死刑になることは間違いないわ。万が一行ったとして、どうやって大魔獣を倒すって言うの。それでも、まだ行くというの?」

そうだ。到底無茶な話だ。仕方がない。アルには悪いけど、一週間・・時間を止めて馬でイワノフ村まで行くしかないのか・・・。すっごく地味な能力だよねえ。テレポート能力とかが良かった。んで、地味に大魔獣を倒して、これまた地味に馬で一週間かけて戻る。
うわっこれ2週間以上かかるよ。ザ・ベスト・オブ・地味作戦だよ。

あれ待てよ?結界は効かないって事が分かっているし、今時間を止めて騎士団総本部に行って転送門だけの時間を戻す。それでもって、イワノフ村に行って大魔獣倒して帰ってくればいいんじゃないの?


おおーーー。そんな簡単なことどうして思いつかなかったんだろう。やっぱり地味な作業だっていうのは、変わらない気がするけど、2週間かけて移動するよりはよっぽどましな作戦だ。

よし、そうと決まれば早速時を止めなきゃなんだけど、アイシス様の前で止めちゃうと、地味に大魔獣を倒した後に、この馬車に戻ってこなければいけない。それに今は道の途中で、ここから騎士団総本部への道順がさっぱりわからない。とにかく一旦アイシス様のお屋敷に戻ろう。

心を決めた途端。アイシス様がにたりと・・・あまりにも妖艶な笑みがいき過ぎて、メデューサにでも見いられたかのように、背中がぞくりとするような笑みを浮かべて、おっしゃった。

「わたくしなら、転移魔法を使うことができますわ」

えーーーーーー!!!!もういいのに!!!

それに転移魔法って、上級魔法だよ?ほんと一握りの人しか使えないって聞いたけど、なんで医療班のアイシス様がーーー!!!?

「あ・・私。やっぱり気が変わったんでいいです。結構です。いや、ほんと・・・」

「わたくし、魔法は本来なら学校でもトップの成績でしたの。でもそのままだと、根暗なおじ様しかいない魔法庁で働くことになるでしょう?わたくしの夢は、騎士様の玉の輿でしたので、ちょーっと成績は手を抜いて、医療班をめざしたのですわ。ですから転移魔法。わたくしならできましてよ。さあ、さっそく屋敷に帰って支度を急ぎましょう。キアヌス様たちに遅れをとってしまいますわ」

「いや、だからもう、いいですって」

いやーー。あいかわらず人の話を聞かない女王様だよね。
かなり抵抗して固辞したけど、無理やり屋敷に連れ込まれて、動きやすい服装に二人して着替えさせられる。

ん?どうしてアイシス様も???

「わたくしが行かないと、帰ろうと思っても帰れませんことよ。大丈夫、イワノフ町の住民だって思ってくれるわ。思ってくれなくても。思わせるのよ!!!」

あいもかわらず女王様発言です。
私たちは侍女から借りた、普通の庶民風の女性の格好に着替えた。あれれ?私また女装中?
やる気満々の女王様に異議を唱えることは不可能だと知っている私は、沈黙することに徹した。

マントを羽織り、顔を隠す。
計画とは少し違うけど、イワノフ町に行くことができればそれでいい。そこで大魔獣を倒そう。

アイシス様が私に武器は要らないのかと聞いてきたので、武器庫に保管されていた剣の中から、日本の刀に似た細身の剣を貰った。

アイシス様は鞭を・・・といいたいところだったが、細身の短剣を服の下にしのばせる。
その後、お屋敷の地下のほうに連れて行かれた。そこには地下にしては広い空間広がっていて、地面には魔方陣が展開してある。
魔方陣の真ん中に二人で立った時、アイシス様が呪文を唱える。
女王様に、魔方陣、呪文って似合いすぎる!!
なんて思っている間に、転移が完了したらしい。


そこは戦場だった。

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