時を止めるって聖女の能力にしてもチートすぎるんじゃないんでしょうか?

南 玲子

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夜会に向けて特訓

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それから、2週間後に行われる夜会にむけての、マナーやダンスの特訓があるため、休暇の殆どをそれに当てることになり、アルとはあれからまだ会えていない。

伝心魔法でしばらく会えないかもというと、猛烈に怪我の心配をされたので、あわてて否定した。ちょっとした短期のバイトだと、お茶を濁しておいた。
他の騎士様に見つかるといけないので、アイシス様のお屋敷で訓練をつんだ。ユーリス様は私が間違って足を踏んでも、にこにこ笑うばかりなので本当に申し訳ない気持ちになったが、生来の運動神経でもって、すぐにダンスは上達した。

「さすがだね。もうダンスのステップは完璧だ」

顔をデレデレにして、ユーリス様が褒めてくれる。
最近デレているユーリス様しか見たことがない。どうしてだろう?
まあ、日本舞踊を習っていたことがあったから、姿勢とかリズム感とかは結構あるんじゃないかと、自負している。
それに踊っていると爽快感があって、思ったよりもはまってしまった。時間を忘れてダンスに没頭している私に、ユーリス様は文句も言わずに付き合ってくれた。


ダンス楽しいーーー!!


結局夢中になって、10曲連続で踊ってしまって息が上がってしまったのでちょっと休憩する。
ダンスの練習ということで、舞踏会用のドレスほど豪華ではないが、ドレスを着用し女装している私を見る目が、もうなんだかとても愛しいものでも見るような感じで、少しいたたまれなくなる。

っていうかユーリス様、見つめすぎ!
一緒にいる間、いつも私のことを見つめていて、弟してしか見ていないのが分かっていても、照れくさくなる。

「今日のドレスも可愛いね。似合っているよ。こんなに可愛い人を見たことがないよ」

どこまで本気で言っているだろう。

「僕、男ですから。可愛いっていわれても嬉しくないです」

すかさず、釘を刺しておく。


私といる時はいつもこんな感じが最近のデフォルトだが、一旦訓練になると一転、ものすごい威圧感を放つ。
少し長めのウエーブのかかった栗色の髪の隙間から見える、その群青色の鋭い双眸に見つめられただけで、百戦錬磨の騎士も縮み上がっているのが見て取れた。
戦いぶりも、無駄のない完璧な動きで、確実に急所を突いて対戦相手を攻撃不能に至らしめる。なのにまだ全力で戦っている訳ではなさそうで、騎士団隊長というのは伊達ではないのだろうと思う。

シャツを脱いだときのユーリス様を一度見たことがあるが、その時はその無駄のない筋肉に、惚れ惚れと見とれてしまった。
筋肉フェチではなかったつもりだったが、思わず指で触りそうになった寸前でなんとか正気に返った。
あの時は、危なかった!!
あれがフェロモンというやつなのかと、恐るべし筋肉め!!

ユーリス様は普段は硬派な立派騎士隊長なのに、ただ私といるときだけ、デレデレ、甘甘お兄さんになるのだ。

そのギャップに、いまだ頭が追いつかない。

まだマナーの勉強があるんだった。夜会までには何とかなるのだろうか・・・。
気が重い。


私は盛大な溜息をついた。
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