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第六章~選択~

二人きりの下校②

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 ターミナル駅で楓と別れ、ミナミと一緒に最寄り駅で電車を降りる。
 最寄り駅は一緒だけどこうして二人で帰るのは久しぶりだ。
 初めて一緒に帰った時は女子と二人きりに慣れていなくて緊張しっぱなしだったなぁ。
 などど考えていると

「ねートモ聞いてる?」
 
 と言いながらもはや習慣の様に肩を叩いてくる。

「ごめん、ちょっと考え事してた」
「あー! さては楓のことでしょ~?」
「違う違う! ミナミと初めて二人で帰った時の事思い出してた」
「それなら別にいいんだけどね~」

 と言って、再び話し出した。
 会話の内容は大体がミナミの部活や友人の話で、愚痴や面白かった話等を聞いている。
 
「どれだけ食べても太らないって羨ましすぎるー!」
「ははは、でもまさかそんなに大食いだったとはな」

 今の話題は以前俺も少し話した小川留美おがわるみの大食いなのに太らないという話題だ。
 女子からしたら羨ましい体質なのだろう、さっきからミナミが羨ましいを連呼している。

「でもミナミは太ってる訳じゃないだろ? そこまで羨ましがらなくてもいいんじゃないか?」
「何言ってるの! 食べても太らないって世界中の女子の願望だよ!」
「そこまで!」
「そうだよ~。私直ぐ肉が付いちゃうからホントに羨ましい」

 と言いながら脇腹辺りを摘まんでいる。
 俺から見れば出る所は出て、引っ込む所は引っ込んで見える。
 それに短めのスカートから覗く太腿ふとももも健康的でスベスベしてそうだ。
 と考えていると、俺の考えを読んだかの様に

「トモは太腿好き?」
「えっ? な、何で?」

 ドンピシャで太腿が好きか聞かれて少しキョドッってしまった。

「私の足見てたでしょ?」

 横目でチラッと見ただけなのにバレてしまっていた。

「それはミナミは太ってないから気にする必要ないのにと思ってちょっと見ただけで、別に特別太腿が好きとかそういうんじゃないから!」

 と必死に言い訳をすると

「あははは、トモ必死すぎだって~」

 とお腹を抱えて笑われてしまう。
 確かに今のは必至過ぎたかもしれない。

「そんなに好きなら触ってもいいよ?」
「だからそういうんじゃないって!」

 再び「あはは」と笑った後

「でもホントにお腹の肉ヤバイんだよね~」

 と再び脇腹をムニムニしている。

「全然そんな事ないだろ、寧ろ運動してるから健康的でいいんじゃないか?」
「いや、ホントにヤバイんだって! 触ってみてよ」

 と言いながら俺の手首を掴んで手を脇腹に触れさせる。

「どう? ヤバくない?」
「俺には全然分からないな。っていうか手を離してくれません?」

 腰に手をやり、傍から見たら俺がミナミを抱き寄せている様に見えてしまう。
 というか楓以外の女子の身体を触るのが初めてなので顔が赤くなる。
 すかさずミナミは

「どうしたの~? もしかして意識してる?」

 と言ってきたので

「意識するなって方が無理だろ」

 と返すと手を離して

「良かった、ちゃんと異性として見てくれてるんだね」

 と意味深に言う。
 きっと友達としてではなく異性として意識してくれているか不安だったのだろう。

「トモはさ、もうしたの?」
「ん? 何を?」
「楓と付き合ってる時にさ、えっと、エッチしたのかなって」
「ゲホンッゴホンッ」

 唐突に何を言い出すんだ!

「いきなり何言ってるんだよ!」
「だって気になるもん! それで? しちゃったの?」
「する訳ないだろ!」
「もしかしてトモってソッチ系?」
「ソッチ系ってなんだよ、全然違うから」

 え? 何? 付き合っててそういう事しないとホモ扱いされちゃうの?

「楓の事だから積極的に行くと思ったんだけどね~、違ったか~」

 と何処か嬉しそうに言う。

「積極的な女子ってどう思う?」
「どうだろうな、経験がないから何とも言えないけど嫌いじゃないと思う」
「どうして?」
「俺がそういうのに臆病だから引っ張ってって欲しいのかも」
「なんかトモらしいかも」
「悪いな臆病者で」

 その後はまた普通の雑談になり、分かれ道で別れ帰路に就いた。

 家に帰ると誰も居なかったので風呂を沸かして入る事にした。
 今日の出来事や、これからの事をゆっくり考えたかったからだ。
 
 夕飯を済ませ、明日の試験勉強をしていると、通知音が鳴った。
 確認すると柚希からだった。

〈後で詳しい話聞かせて貰うから〉

 という内容だけが送られてきた。
 きっと楓と別れたのがバレたのだろう。
 柚希としてはプロデュースして俺が学校のアイドルと付き合えたのに別れるのは頭に来るだろうな。
 どんな言い訳をしようか考えたが、本当の事をキチンと説明する事にした。
 もしかしたら良いアドバイスが貰えるかもしれない。

 そして11時になり、柚希の部屋へ向かった。
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