23 / 167
第三章~初めての恋愛~
天然
しおりを挟む
玄関を入り新島の案内で二階の部屋へ向かう。
所々にきっと高いであろう壺や絵画等の骨董品が飾られていた。
だからついついこんな言葉が出てしまった。
「新島の家って金持ちなんだな」
俺の言葉を受けて
「一般的にはそうね、ただ親が稼いでるってだけで私自身は大した事ないよ」
と淡々と答えた。
俺は振れてはいけない物に触れてしまったと感じ、部屋に着くまで黙っている事にした。
柚希も調度品に目が行ったりしているが俺のようなヘマはしないようだ。
それから少しして一つのドアの前で歩みを止めた。
「ここが私の部屋」
と言い、ドアを開けて俺達を招き入れる。
新島は「飲み物を持ってくるから適当に座ってて」と言い残し部屋を後にした。
柚希以外の女子の部屋は初めてだが、あまり女子の部屋という雰囲気は無かった。
必要最低限の物だけ揃えたという感じだろう。
ただ一つ女子の部屋なんだなと思わせたのは何処からか香って来るいい匂いだった。
しばらくして新島が戻り、俺と柚希に飲み物の入ったグラスを渡して新島も席に着いた。
俺達は部屋の中央にある丸いテーブルを三人で囲むように座っている。
三人が三人共顔が見える位置取りだ。
「今日は来てくれてありがとう」
いつもの調子でお礼をいう新島
「こちらこそお邪魔します」
と俺が言うと、柚希も
「今日はお招き有難うございます」
と、こちらも普段通りに挨拶する。
一通り挨拶を済ませた所で新島が声のトーンを落として、この会議の口火を切った。
「とりあえず何から話しましょうか?」
と言い、俺と柚希を一瞥する。
「柚希ちゃんが来てるって事は友也君から全て聞いたと思っていいのかな?」
「はい。全て聞いた上で来ました」
「そう」
短いやり取りの後、また少しの沈黙。
そしてその沈黙を破ったのは再び新島だった。
「柚希ちゃんに聞きたいんだけど、今までどういった内容の事をさせてきたの?」
その問に、柚希は春休みの特訓や新学期に入ってからの課題の事をはなした。
「なるほどね~。悪くないわね」
と言いながら俺を見る。
なんかさっきから会話に入れてないんですけど。
「でも学校が始まった今では柚希ちゃんのやり方には限界があるわね」
「はい。課題は出せてもサポートは出来ないので」
この場に俺必要なのかな?
「ですから、新島先輩との協力関係は素直に嬉しいです」
「そう言って貰えるとこっちとしても助かるわ。でもいいのかな? 上手くいけば友也君は私と付き合う事になるけど」
「むしろありがたいです」
「ありがたい?」
「はい。二人が付き合う事になればお兄ちゃんは学校一の完璧美少女の彼女持ちになります。そうなれば必然的に妹である私の株も上がりますから」
俺を置いてどんどん話が進んでいく。
「そう。ならよかった」
「ええ」
二人してニコニコと笑っている。
その笑顔が怖い。
「さっき言っていた課題の事だけど、昨日の課題はクリアできたの?友也君」
と、ここでようやく俺に話題が振られた。
「ああ、一応水瀬の事をあだ名で呼ぶ事にはなった」
と言うと柚希が
「それはどういう経緯でどんなあだ名で呼ぶ事になったの?」
「私も気になるわね」
二人から尋問もとい質問があったので、小川留美の事も含めて全て話した。
すると
「「はぁ」」
二人同時に溜息を吐かれた。
そんな変な事したかな? それとも手際が悪くて呆れられたのか?
そんな事を考えていると新島が
「友也君って天然なの?」
「いえ、私も今知りました」
いきなり俺が天然かどうかの話しになっている。
今の話の何処に天然要素があったんだ!
「な、なんだよ天然って」
と聞くと
「全然気づいてないみたいね」
「今時鈍感系は流行らないよお兄ちゃん」
とあきれられてしまった。
全く理解できない俺は少し語気を強めて言った。
「一体何の事だよ! 説明してくれ!」
俺の言葉に
「水瀬さんはお兄ちゃんの事が好きなんだよ」
「は?」
俺は新島に顔を向けると
「間違いなく惚れてるでしょうね」
「へぁ?」
何を言ってるんだ二人とも。
俺が水瀬に惚れられてるだって?
「いやいやいや! 騙されないぞ」
と全力で否定するが
「なんなら今から電話して告白でもしてみれば? そうすれば初彼女ゲットよ」
という言葉が帰ってきた。
え? もしかしてマジなの?
「でもどうして? 俺は別に特別な事はしてないぞ?」
と言うと再び二人から溜息を吐かれた。
「南は陸上部でのあだ名があまり好きではなかった。最初のあだ名が『ミナミナ』で、呼びづらいという理由で『ミナ』になった。嫌な理由は安直なあだ名だったから。でも友也君は『ミナミナ』の中に南って入っているだろ? と諭したわよね? その後、南は自分から『ミナミ』と呼んでと言ってきた。しかもそう呼んでいいのは友也君だけ。これだけ聞けば完全に惚れているとまで行かなくても異性として好意は持たれてる事は間違いないのよ」
マジなのか? でもたったそれだけで俺に好意を寄せるなんてありえるのか?
「俺は別にそんな深い意味で言った訳じゃないし、勘違いって事も」
と言った所で柚希が
「だから天然って言ったの! 天然ジゴロだってね!」
なんという事でしょう。
俺は知らない内に女の子を落としていたらしい。
所々にきっと高いであろう壺や絵画等の骨董品が飾られていた。
だからついついこんな言葉が出てしまった。
「新島の家って金持ちなんだな」
俺の言葉を受けて
「一般的にはそうね、ただ親が稼いでるってだけで私自身は大した事ないよ」
と淡々と答えた。
俺は振れてはいけない物に触れてしまったと感じ、部屋に着くまで黙っている事にした。
柚希も調度品に目が行ったりしているが俺のようなヘマはしないようだ。
それから少しして一つのドアの前で歩みを止めた。
「ここが私の部屋」
と言い、ドアを開けて俺達を招き入れる。
新島は「飲み物を持ってくるから適当に座ってて」と言い残し部屋を後にした。
柚希以外の女子の部屋は初めてだが、あまり女子の部屋という雰囲気は無かった。
必要最低限の物だけ揃えたという感じだろう。
ただ一つ女子の部屋なんだなと思わせたのは何処からか香って来るいい匂いだった。
しばらくして新島が戻り、俺と柚希に飲み物の入ったグラスを渡して新島も席に着いた。
俺達は部屋の中央にある丸いテーブルを三人で囲むように座っている。
三人が三人共顔が見える位置取りだ。
「今日は来てくれてありがとう」
いつもの調子でお礼をいう新島
「こちらこそお邪魔します」
と俺が言うと、柚希も
「今日はお招き有難うございます」
と、こちらも普段通りに挨拶する。
一通り挨拶を済ませた所で新島が声のトーンを落として、この会議の口火を切った。
「とりあえず何から話しましょうか?」
と言い、俺と柚希を一瞥する。
「柚希ちゃんが来てるって事は友也君から全て聞いたと思っていいのかな?」
「はい。全て聞いた上で来ました」
「そう」
短いやり取りの後、また少しの沈黙。
そしてその沈黙を破ったのは再び新島だった。
「柚希ちゃんに聞きたいんだけど、今までどういった内容の事をさせてきたの?」
その問に、柚希は春休みの特訓や新学期に入ってからの課題の事をはなした。
「なるほどね~。悪くないわね」
と言いながら俺を見る。
なんかさっきから会話に入れてないんですけど。
「でも学校が始まった今では柚希ちゃんのやり方には限界があるわね」
「はい。課題は出せてもサポートは出来ないので」
この場に俺必要なのかな?
「ですから、新島先輩との協力関係は素直に嬉しいです」
「そう言って貰えるとこっちとしても助かるわ。でもいいのかな? 上手くいけば友也君は私と付き合う事になるけど」
「むしろありがたいです」
「ありがたい?」
「はい。二人が付き合う事になればお兄ちゃんは学校一の完璧美少女の彼女持ちになります。そうなれば必然的に妹である私の株も上がりますから」
俺を置いてどんどん話が進んでいく。
「そう。ならよかった」
「ええ」
二人してニコニコと笑っている。
その笑顔が怖い。
「さっき言っていた課題の事だけど、昨日の課題はクリアできたの?友也君」
と、ここでようやく俺に話題が振られた。
「ああ、一応水瀬の事をあだ名で呼ぶ事にはなった」
と言うと柚希が
「それはどういう経緯でどんなあだ名で呼ぶ事になったの?」
「私も気になるわね」
二人から尋問もとい質問があったので、小川留美の事も含めて全て話した。
すると
「「はぁ」」
二人同時に溜息を吐かれた。
そんな変な事したかな? それとも手際が悪くて呆れられたのか?
そんな事を考えていると新島が
「友也君って天然なの?」
「いえ、私も今知りました」
いきなり俺が天然かどうかの話しになっている。
今の話の何処に天然要素があったんだ!
「な、なんだよ天然って」
と聞くと
「全然気づいてないみたいね」
「今時鈍感系は流行らないよお兄ちゃん」
とあきれられてしまった。
全く理解できない俺は少し語気を強めて言った。
「一体何の事だよ! 説明してくれ!」
俺の言葉に
「水瀬さんはお兄ちゃんの事が好きなんだよ」
「は?」
俺は新島に顔を向けると
「間違いなく惚れてるでしょうね」
「へぁ?」
何を言ってるんだ二人とも。
俺が水瀬に惚れられてるだって?
「いやいやいや! 騙されないぞ」
と全力で否定するが
「なんなら今から電話して告白でもしてみれば? そうすれば初彼女ゲットよ」
という言葉が帰ってきた。
え? もしかしてマジなの?
「でもどうして? 俺は別に特別な事はしてないぞ?」
と言うと再び二人から溜息を吐かれた。
「南は陸上部でのあだ名があまり好きではなかった。最初のあだ名が『ミナミナ』で、呼びづらいという理由で『ミナ』になった。嫌な理由は安直なあだ名だったから。でも友也君は『ミナミナ』の中に南って入っているだろ? と諭したわよね? その後、南は自分から『ミナミ』と呼んでと言ってきた。しかもそう呼んでいいのは友也君だけ。これだけ聞けば完全に惚れているとまで行かなくても異性として好意は持たれてる事は間違いないのよ」
マジなのか? でもたったそれだけで俺に好意を寄せるなんてありえるのか?
「俺は別にそんな深い意味で言った訳じゃないし、勘違いって事も」
と言った所で柚希が
「だから天然って言ったの! 天然ジゴロだってね!」
なんという事でしょう。
俺は知らない内に女の子を落としていたらしい。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く
とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。
まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。
しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。
なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう!
そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。
しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。
すると彼に
「こんな遺書じゃダメだね」
「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」
と思いっきりダメ出しをされてしまった。
それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。
「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」
これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。
そんなお話。
【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?
おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。
『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』
※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる