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旅人ひろし

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ある日の夜…。

愛は、ぐっすり眠っていた。

何処からともなく聞こえる。

「闇の世界へ…。」


愛の身体は、深い闇の中へ消えた。



(うぅ…こ、ここは?)

男が意識をとりもどす。

「お目覚めでございますか?」

黒髪の似合うとても美しい女性が話しかける。

男はベッドに寝かされていた。

周りを見渡す男。

「ここは?」

美しい女性は、道で倒れていた男を自分のバラック小屋に運び、看病をしていた。

「私の家でございます。安心して下さいませ。」

男は、美しい女性の名前を聞く。

「ありがとうございます。よろしければ名前を?」

美しい女性は答える。

「アイリです。聖女アイリ。あなた様は?」

男は答える。

「私は、愛です。」

聖女アイリは口に手をあて、くすくす笑った。

「ご冗談を。あなた様は男性ではございませんか。ふふっ。面白いお方。」


男は驚き、鏡はございませんか?と聞く。アイリは手鏡をわたす。

(あれ?どうなってるんだ?女じゃなかったか?男だなぁ。うーん。自分の名前、あっ!ひろしだ。)


「ひろし、ひろしです。」


聖女アイリは、笑顔でひろしを見る。

「ひろし様。もう少しお休みになって下さいませ。今、食事の支度をしてまいります。では。」

アイリは台所へ向かい、鍋に少しの米を入れておかゆを作っていた。

ひろしは、いろいろ思いだそうとするが、自分の名前以外、浮かんでこなかった。

アイリは、おかゆをひろしに渡す。

「もう、これくらいしか食べるものがございません。よろしければ。」


ひろしは、アイリに感謝しおかゆをいただいた。

ひろしは質問する。

「あの、アイリさん…じつは記憶をなくしてしまいここが何処なのかもわからないんです。ここはいったい?」

聖女アイリは悲しい表情をして、語り始めた。

「この世界は、魔道師カナエルにより、闇におおわれ、死者たちがはびこる世界になってしまいました。」


「魔道師カナエルたちから逃げ伸び、生き残った人々は、こうして、怯えながらひっそり暮らしています。」

「闇におおわれてしまった世界では、作物も育たず…もう、どうしたらよいか…。」

それを聞いたひろしは決意する。

「わかりました。アイリさん。俺…」

「魔道師カナエルを倒します。」


聖女アイリは驚き首を横にふる。

「魔道師カナエルはとてつもなく強い。怪しげな魔術を使い、死者を従わせる。あなたがいってもかなうわけがない…。」

ひろしは立ち上がる。

「行きます。必ず倒します。」


聖女アイリは、止めてもこの人は行ってしまう、それならと、決意した。

「私もおともします。」

ひろしはそれは危険だとアイリを説得する。

だが、アイリの決意は変わらず、

二人は、

打倒、魔道師カナエルの旅にでた。


   二人はまず、旅に必要なものを揃えるため、近くの村に行く事にした。

村へ向かう道中、ひろしは太めのきの棒を拾い武器として持っていた。

「村へはあとどのくらいですか?」

聖女アイリは指をさし少し遠くを見る。

「もう少しのところでございます。あ!見えてまいりました。」

ひろしは少し疲れていた。

(遠くないか?)


村に着いた二人は立ち尽くす。

村は死者たちに襲われ、誰もいなかった。

ひろしは怒りがこみ上げてきた。

「村がめちゃくちゃだ!許さないぞ。カナエル。」


その時、
死者たちが現れた。

(し、死者?)

ひろしは驚いた。

死者たちはひろしに襲いかかる。

「けけけ。」

ひろしは太いきの棒で死者たちをなぐっていく。

「てぇやー。」


ゴン

ドン


死者たちにはきかなかった。

うろたえるひろし。

(無理じゃない?これ。どうしよー。)


聖女アイリは、光のまとった手のひらで、死者たちにこうげきする。

「消えなさい、闇の者よ。」


聖女アイリは死者たちを倒した。


あ然とするひろし。

(俺…なにもやくにたってない…。)


聖女アイリは、ひろしをいたわる。

「お怪我はございませんか?」

ひろしは、アイリは術が使えることに驚き、その術のことを聞いた。

聖女アイリは光の使い手だった。

「私の術は、光。少しの怪我なら治せます。あと、多少の闇の相手なら、攻撃もできます。」

「ひろし様の術は?」


「…ないです。」

アイリは、え?と困惑した。
術もないのにカナエル討伐に向かう。それは、ただ返り討ちに合うだけ。

聖女アイリは少し考えた。

(術も使えないのに立ち向かうお姿。きっと勇者様。老師様のところへいけば、なんとか…。)

ひろしはすっかり落ち込んでいる。
魔道師で術を使うと言われてるのに、きの棒1本でいこうとする。


アホだった。

ひろしの落ち込んでいる姿を見て、聖女アイリは希望の言葉を口にする。

「大丈夫です。ここから少し離れたところにある、小さい町に老師さまがいます。」

「老師さまにお願いすればきっと…。」

落ち込んでいるひろしは老師さまにかけた。

(老師さまお願い。なんとかしてぇ。)

聖女アイリとひろしは町へ向かう。

その道中も死者たちが襲ってくるが、アイリが、バタバタ倒していき、ひろしはこそこそ逃げまわる。

くその役にもたっていなかった。

アイリとひろしは、町へ着く。

アイリは一人の老人を見つけ声をかけた。

「大道老師。お久しぶりでございます。」

大道老師と呼ばれる老人は、アイリを見て、安堵した顔をする。

「聖女アイリ様よくご無事で。ん?こちらは?」

アイリのとなりにいるひろしに気づいた。

アイリはひろしを紹介する。

「勇者ひろし様でございます。カナエル討伐に立ち上がってくれたのです。」

え?勇者?違うよーとあたふたするひろし。

大道老師は、ひろしに質問する。

「おぬし、術は?」

少し沈黙。

「………。ないです。」

大道老師は、びっくりして腰が砕けそうになった。

術なしでいくの?なんのしばり?え?どういうこと?アイリ様騙されてる?なんだこいつ?
頭の中が?の老師。

大道老師は、騙されているアイリ様を思い、
このアホに伝える。

「仲間をみつけよ。2人でよい。」

「みつけたら、またわしのところへくるがいい。」

「さすれば、道が開かれるであろう。」


こうして、ひろしは仲間を求めに行くことになる。


大道老師は教える。

「ここからさらに先にある町へ行け。一人でな。」

「アイリ様はここで、この者をお待ち下さい。」

引きはなされる二人。

アイリ様は、必ずきてください。

待っています。とひろしに伝えた。

ショボくれながらひろしは、話しの流れに逆らえず仲間を求め旅立つ。



ただの棒を持つひろしに勝てる死者などいない。

ひろしは逃げ回り町を目指す。

だが、死者に囲まれてしまった。

「近寄るなぁー!」

ドカ

ごき

すか

きの棒が手からすっこぬける。

「はわわわ。」

死者に攻撃されそうになった。

その時、


シャキーン

スパ

ポロ

カチン

死者たちは斬り刻まれた。


一人の剣士がひろしを救う。

「なにをしている!こんな所で。」

ひろしは事情を説明した。

「そうか、アイリ様はご無事で…。わかった。俺が一緒に行ってやる。」

「俺はカタオカ。手刀術の使いだ。」

ひろしは心強い見方ができてホッとした。


二人は…嫌、カタオカは死者をスパスパ斬り進む。

ひろしはただついて行った。

大道老師に教えてもらった町へ着く二人。

町は、まだ死者からの攻めには合っていない。

ひろしとカタオカは仲間になりそうな人を探す。

「なかなかいないよなー。」

カタオカは、この町にすごくでかい男が居ることをひろしに伝える。

ひろしはもしかしたらその人が仲間になってくれるかもと思った。

でかい男を探す二人。

その時、死者たちが町を襲いに来た。

「キャー。」

「死者がきたぞー。」

「みんなに逃げろーはやく。」

「うわぁー。」

「助けてー。」

逃げまどう人々。

カタオカは死者と戦う。

だが、死者の数は多い。

「くそ、きりがないぜ、斬ってるのに。」

ひろしは逃げ回る。

「来るなー。」


パキパキパキ


グシャ


どっかぁ~ん。


でかい男が死者たちを砕いたり、踏みつぶしていたりした。

「ふん、ふん。うほぉ~。」


でかい男とカタオカ、町の術者たちでなんとか死者たちをおい払った。

カタオカは訪ねる。

「加勢助かった。あなたの名前は?」

でかい男が笑ってうほぉうほぉ答える。

「ゴリラだ。」

「そうか、俺はカタオカ。こいつはひろしだ。」

ゴリラはひろしを見てうほぉる。

「そんな細っこい体じゃだめだ。もっと鍛えんとなぁ~。うほぉ。」

ひろしは引いていたが、事情をゴリラに説明する。

「アイリ様が生きていた。うほぉ~。」

「俺は、体が鋼のようになるマッチョ術使いだ。」


こうして、二人の仲間ができたひろしは、聖女アイリの待つ町へ戻る。
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