異世界臨終録

星野大輔

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臨終録X1

土井 誠

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臨終録_No.004

■氏名:土井 誠
■性別:男
■年齢:56歳

■死亡理由:
数日に及ぶ町議会の定例会二日目。古びた役場の中を、ベルトの上にでっぷりと乗った腹部を揺らしつつ、胸元のポケットでつぶれているタバコの箱を掻き出そうとしていた。気に食わない議員の顔を思い浮かべながら、大きな舌打ちをした時、世界は変わった。

チャリアとリフの二国を跨るゼルツィア大山脈。
夏頃は穏やかな川も、この季節は雪解け水により鳥たちの鳴き声をかき消すような怒号を鳴らしていた。
屈強な兵士といえど、唸るような川の流れには呑まれるしかない。それが何十年もまともに体を動かしたことのない肥満体であれば……。
必死に空気を取り込もうとした口には、空間を埋めようと水が攻め込んでくる。新調したばかりのスーツは一瞬にして水を吸い込み体にまとわりつく。そんな重くなる体などお構いなしに、自然の力は彼をピンポン玉のように岩場を何度も跳ね上げる。
肺が水を満たす前に、彼の頭は大きく凹んでいた。


■生存日数:1日
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