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第4章 異世界からの訪問者
自称勇者
しおりを挟む「だーかーらー、俺は勇者だって言ってるだろう!!」
その言葉に組合中の喧騒が止み、視線が一斉にそちらへ集まった。
そこにいたのは癖っ毛の黒髪が特徴的な12,3歳といった年頃だろうか、生意気そうな少年がいた。
絡まているだろう受付嬢は新人なのか、困ったような顔をしてあたふたするばかりで、言葉につまっていた。
「おいおい、ありゃなんだ?」
「たまにいるんだ。小さな村から出てきたばかりの者たちが、自分の力を過信して勇者と勘違いするバカ者が。」
アリスはため息を付きながら、再びそちらに目を向ける。
少年の装備を見れば、革の胸当てに安い鉄の剣。
いかにも田舎から出てきましたと言わんばかりの装備。
「ねえねえアリスお姉ちゃん、ゆうしゃってなーにー?」
話についていけないちーちゃんが、アリスの袖を引っ張り尋ねる。
「ああ、ちーちゃんはお伽話とかで聞いて事はないかい?」
「ううん、しらなーい。」
「そうか。まあ簡単に言えば世界を救う英雄様のことだ。
いつの時代も世界の危機になると現れる、すんごい人のことさ。」
「へえーー、すごいねっ、あのお兄ちゃんがそうなの!?」
ちーちゃんが興奮した様子で少年を指差すが、アリスがそれを否定する。
「いいや、ちーちゃん、勇者というのはね、世界がどうしようもなくなった場合にしか召喚されないものなんだ。
勇者は強すぎるからな、彼が一人いるだけで国々が取り込もうと躍起になる。
・・・人気者過ぎて周りの人達が喧嘩しちゃうんだ。
そうすると、じゃあうちも勇者を呼ぶってなって、そのうち勇者だらけになって収拾がつかなくなるだろう。
だから偉い人たちが話し合って、勇者を呼ぶときはみんなで話し合ってからにしようね、と国を跨ぐ法を制定したのさ。
もちろん召喚する前には国中にその報せがいくわけだから、今の世に勇者がいるかどうかは、誰もが知っている。」
「へえー、難しいね。」
「かつて、秘密裏に召喚した国もあったようだが、周辺国家にばれるや否や、連合国を組まれ滅ぼされたらしい。
つまり抜け駆けは厳禁、身を滅ぼしてしまうのさ。」
「でも、万が一ってこともあるだろう。」
「仮にそうだったとしても、そんな歩く情報機密がノコノコ冒険者組合へやってきて、俺は勇者だ、なんて叫ぶわけがないだろう。」
「・・・まっ、そうだよな。」
アリスたちが話している間にも、自称勇者の問い詰めは収まることを知らず、受付嬢は涙目となっていた。
周囲の先輩受付嬢たちは、「これもまた試練」とばかりに放置。
「はあ、仕方ない。わたしが止めてくるとしよう。」
「お人好しだねー、ほっとけばいいのに。」
「ふん、やらない善よりやる偽善だ。二人はそこで待っていてくれ。」
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