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第2章 彷徨う森
砕けるつるぎ
しおりを挟むちーちゃんの攻撃をうけ、瀕死の状態の聖獣。
二回も攻撃を受けながら生きているのはちーちゃんが装備している「みねうちブレスレット」のおかげだ。
「ぐぐぐ…なぜだ。
あんなぼろぼろの剣で、なぜ我にダメージを…」
そこまで口にして聖獣はひとつ思い当たるものがあった。
「貴様、まさか…勇者なのか!?」
「ううん、ちがうよ」
その推測も一蹴される。
「ではなぜだ、あの剣の耐久性を超えておる攻撃力…ぐはっ、はぁはぁ。
勇者か魔王でなければ何だと、、言うのだ。
いや勇者だとしても、幼すぎる。
とても我を倒すレベルまであがってるとは思えぬ…くっ、ほんとになんなのだ貴様は…はぁはぁ」
命はとりとめているといっても虫の息。
手当てしなければいつ死んでもおかしくない。
聖獣は話をしながら、その裏で回復に専念していた。
しかしそれを見逃すガイランドではない。
「聖獣よ。
気になることはいくつもあるが、この機を逃す儂ではないぞ。
随分と長い間、世話になったな。」
「くっ!」
ガイランドは懐からありったけの練り玉を取り出す。
「さらばじゃ!」
「ぐおおおーーーっ!」
大きな爆炎を巻き起こし、聖獣はその命を散らした。
何百年、何千年とこの森で神葉樹を守り続けてきた神の御使い。
彼の唯一の不運は、ちーちゃんと出会ってしまったことだろう。
とぅるるっとゅとゅー♪
「あっ、れべるあっぷの音だ!
わーーい、すんごく久しぶりだー♪」
嬉しそうにアリスへ抱きつくちーちゃん。
「??
しかし、よくやったなちーちゃんとケルベロス。
二人がいなかったら、きっと負けていただろう。」
「そうだな、ちーちゃん。
ご褒美に街についたら、何か好きなものかってやるぜ」
「いいの!
わーい、わーい!」
飛び跳ねるちーちゃん。
その拍子に、手に持っていた剣を落としてしまう。
古びた剣は重力に引かれ地面へと落ちると、ガシャンと音を立てて、その刀身を粉々に砕かした。
「あー…こわれちゃった」
「きっと、あれがこの聖剣に宿っていた最後の力だったのだろう」
「うむ、あれだけの力を放出したのじゃ、仕方あるまい」
いや、只々古かっただけである。
至極まっとうな経年劣化。
勿論、そんなことを思うものはこの場にいなかった。
アリス、ラック、ガイランドは完全にそれを聖剣と思いこんでいる。
錆びきった刀身の破片は、木漏れ日を受け土にまじりキラキラと鈍く輝いていた。
聖剣、あながちそれも間違いではないのかもしれない。
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