おいでよ、最果ての村!

星野大輔

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第2章 彷徨う森

ハッセル・フォンの手記2

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162年4月22日。

依然として出口は見つからない。
仲間たちもすっかり疲弊しきっている。
体力はもちろんだが、それよりも精神に影響が出始めている者があらわれた。

仕方あるまい。

食料は制限され、もう誰も言わなくなったが、自分等は何かしらの怪奇現象に巻き込まれたのだという事は明白だ。

解決策なんて思いつきもしない。

空でも飛べればあるいは抜け出せるのかもしれないな。

もしくは木という木を全部切っちまえば、森もなくなるだろう。
まあ、どれだけ広いのかも分からない森に、食料も体力もない俺たちが立ち向かって、果たして間に合うかどうかだが。
俺は間に合わないに全財産賭けるね。



兎にも角にも、手がかりすらないこの状況を打破してくれるなら何でもいい。



確かにそう願ったさ。
だけど神様、ありゃ、ねーぜ。

仲間の一人であるチェルルが食料をこっそりと持ち逃げした。
実際にそれに気付いたのは後になってからだが、まずチェルルが遠くへ走っていくのが見えた。

それを追うものは誰一人いなかった。

本来隊長である俺くらいは止めるべきであったのだろう。
しかしだ。
チェルルの行動も理解できないわけではない。
冷静でいることの方が、異常とさえ思える。

俺たちが狂わないでいれたのは、ただただ疲弊していたからだ。
狂う元気もない。
チェルルにはあった、それだけだろう。

だがそれが彼の死期を早めることになった。

チェルルが我々の元を去って、三十分と経たない頃。
彼の絶叫が森に木霊した。

元気をなくし俯いていた俺たちも、さすがに顔を上げた。
二週間以上森をさまよったが、人間や動物、魔物の一匹にも遭遇していない。

だが、チェルルの絶叫と同時に獣の咆哮が聞こえた。

顔を上げたまま俺たちは固まり、視線だけ交える。
今すぐ逃げるべきなのか、いやしかしどこに逃げるというのだ。

震える手を握りしめ、俺は仲間たちに命令を下した。

自分でも非情だと思う。
しかしこれはひとつの賭けでもあった。

生物のいないこの森で生きている獣。
何かのヒントがそこにあるはずだと。

重い足取りで、チェルルが消えた方へと歩く。
途中、喰い散らかせられた食料が発見される。
そこで俺はチェルルが食料を盗んだことに気づき、また、進んでいる方向に間違いがないことを確信した。

それから数分。
奴の姿があった。

森の中で唯一ぽっかりと日が差し込む場所。
その中央に一本だけ生える大樹の下で眠りこける一匹の獣。

とても幻想的なその出で立ちに息をのんだ。

間違いない。
こいつがこの森を「さまよわせて」いる元凶なのだと。



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