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第2章

第百五十六話 カムラドネの宴 その二

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       「……ぐふふ……ふぇ?」

 一人で妄想にふけっていたカラル。俺の強化について検討しているのにどうしたらそんなにニマニマできるのだろうか……。

 ルーミエが聞き直す。

「カラル、あの儀式からこれまでなかった魔法の素質が備わったように思うのだけれど、実際のところはどうなの?」

「ええ、そうよ」とカラルは即答した。

「わらわはアキト様と番(つが)いの契約をして炎の魔法を使えるようになり、霊格の炎を授かったわ。ルーミエは回復魔法が使えるようになったのよね?」

「うん、そうだけれど……ってことはユウキの判別できない水晶玉の反応は箱魔法になるのかな」

「——あ!だから誰も何魔法かわからないんだ……」

 俺の使用できる魔法が契約した人に伝わる仕組みのようだ。そういえば嫁たちを見る時にめったなことで分析能力は発動させることはなく、更にステータス項目を事細かに見ることもない。

 かわいい顔をみたり、胸元が広めな服だったら胸に目が行くし、スカートが短かったら美しい脚を眺めたり、髪をアップにしていたらうなじを眺めていたので、全く気付かなかった。

 ユウキが悩んでいるというのに、夫としてどうなのだろうかとも思われるかもしれないが、目が行ってしまうのだから仕方ない。

 ……もう少し細かく見てあげればよかったな。

 それでも綺麗だねとか、服がよく似合っている、などの褒め言葉はいつも忘れてはいないので許してやってほしい。

 分析能力発動……。

◇ ◇ ◇
ルーミエ Lv945 HP2870/MP1679
強さ:1745 守り:1240 器用さ:1180 賢さ:1220 魔法威力:15 ボーナス:160
◇ ◇ ◇

◇ ◇ ◇
ユウキ Lv922 HP3250/MP1356
強さ:1503 守り:1106 器用さ:1050 賢さ:983 ボーナス:222
◇ ◇ ◇

 さらに詳細項目を見るとユウキには”箱魔法”追加されてあり、ルーミエには”回復魔法”が追加されていることを確認した。

 ルーミエには”魔法威力”が追加されていたのでボーナス分をすべて移動させる。ユウキには”魔法威力”の項目が追加されていない。この違いは……魔法が使えるか使えないかの違いで、訓練して使えるようになったら追加される項目なのかもしれない。となれば俺が箱魔法の出し方の伝授が必要だな。


 俺の隣で食事中、表情の暗かったユウキはいつもの笑顔を取り戻し、「お兄ちゃん!箱魔法の使い方教えてよ」と腕を絡ませてきた。

 俺だけの固有の魔法だったが、使うことができる人が増え、それが嫁だということで何だか俺も嬉しい。

 早速、手のひらに収まる小さな箱を作りユウキに渡す。

「早速だけど、これと似たようなものを作れるかな?よく触ってイメージするんだよ」

「わかった!」

「それとユウキ、二人で旅行に行かないか?」

「いいよ……でもどこに?みんなは?」

「ルーミエとはこのあいだドルトミアに移動する時に旅行したし、カラルも一緒にいることが多かったし、ユウキと二人きりでどこかにいきたいなぁって思って……」

 なんとも下手な旅行の誘い方だが、ルーミエがフォローしてくれた。

「海上の満天の星を見上げながらのお風呂は最高だったわ~」

「え~いいな~。……でもあたしがいなかったらルーミエは魔法の訓練どうするの?」

「一人ぼっちでドルトミアにいて生活するのも寂しいし、訓練は一人でもできるから、カムラドネでのんびりさせてもらおうかな……」

「それなら安心だね、それじゃあ出発は明日の朝?実は行きたいところはもう前から決めてあるんだよね~。砂漠のオアシスの国セルーノだよ!」

「どこかで聞いたことがあるな……」

 そう思いノイリに尋ねる。

「えーと、砂漠の国セルーノは国土のほとんどが砂漠と荒野の国でありながら、鉱石が多く採れ、経済的には裕福な国です。その国土は主に三つに分類され、山間部には世界最大級の高さを誇るノレディア山脈があり、複数の鉱脈が眠っているといわれていて、麓の町は発掘事業で賑わっているようです。そして頂上付近は雲よりも高く、年中を通して湧き出る大量の雪解け水は三本の大河となって砂漠を貫き海に流れ出ています。
 海岸部では川から得られる肥沃な土壌では農業が盛んで、漁業も豊富な種類の魚が多く、海鮮類の食材も美味しいことで有名ですね。
 そして海岸部と山間部を結ぶ国土の真ん中にあるオアシスには灼熱の土地柄でありながら、雪解け水の川が大きな天然溜め池に流れ込み美しいオアシスを形成していて観光地としても有名ですね」

 さすが遠夜見(とおよみ)の巫女……というよりも何も見ないでそこまで言えてしまうところが凄すぎる。

「となるとユウキのお目当ては”ラッテの冒険”で出てくるあの湖を見に行くのね。そうかアキトとの旅行はそういうのでも良かったのか~、あ~しまった~」

とルーミエが頭を抱えている。

「いいでしょ~」

 ようやくここで俺も本で読んだことのある物語だということに気づいた。

「ああ、あれか。巨大な芋虫が湖の水を飲んじゃう話だ」

「いくら日照りで水が少ないからっていっても、大きさを見てみたくてね。エソルタ島から一年くらいかけないとたどり着かないほど遠いところにあるからね~。気軽に行ける場所じゃないのよ」

「ドルトミアから西の方角に数か月移動して、更に海を渡って行く行程なの……ノイリ地図持ってる?」

「私の部屋に資料があるから、明日の朝に部屋に来てね」

「ありがとう。それじゃあお兄ちゃん、明日は移動が大変だけどよろしくね」

 冒険者ラッテの聖地巡礼の旅も悪くない、ユウキの表情も明るくなったので、純粋に旅行を楽しめそうだ。
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