チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

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第2章

第百四十九話 ドルトミア・アフター・ファイブ

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 夕方になり、ネネコーラン社のホールでルーミエとユウキを待っていると、魔法訓練を受けたものたちがぞろぞろ出てくる。ルーミエたちを見つけて手を振るとこちらにやってきた。

「お疲れ様。どうだった」

 授業は実技がなかったようで、ルーミエもユウキも表情は不満げだ。
 
「まだ今日は座学が多くて魔力を扱うこともなかっわ」

「退屈だった~」

 一日でなんとかなるものではないと分かっていたが、二人の落胆はしている。こういうときは美味しいものを食べて明日に備えるのが一番だ。

 屋外に出て雰囲気の良さそうな店を探して歩いていると通信指輪が震える。

「許可」

 ダンジョンに篭っていたカラルからの連絡だった。

『アキト様、今どちらですか?』

「え~と……いまネネコーラン社を出たところだよ?カラルは?」

『あ!見えましたわ』

 遠くからカラルが手を降っているその隣には人族っぽい若いイケメンと並んで歩いてくる。分析能力で確認すると、ドルトミアに初めてダンジョンを作った悪魔、ロンダールが一緒だった。

「アキト様お久しぶりです。どこにいるのか大体はわかるのですが、この人混みではなかなか探し出すのも一苦労ね」

「ロンダールも一緒にどうしたの?」

「ええ、ダンジョンの引き継ぎも一段落したのとわらわがアキト様にお会いしたくなったので、出てまいりましたの」

「およそ千百年以上ぶりに出てきたが、いや~この街の変わりようは凄まじいな」

 ロンダールはダンジョンを増やしていく中で第一ダンジョンの支配球により体を乗っ取られてしまった。ダンジョンを、そしてその周りにできる街や人の営みを愛していたロンダールにはこの街の景色はどのようにみえるのだろうか……。

「まだ店を決めてないんだけれど、どこでもいいか?」

「個室ではないところがいいな~」と、ロンダールが主張する。

「それなら、そのあたりの大きな店に入るか……」

 大通りにある大衆酒場に入った。店内は主に冒険者が多いが商人、学者、会社勤めの人、様々な人たちが集う。少し待って席に案内され、食べたいものを適当に注文をする。

 飲み物が運ばれてきたので、音頭を取る。

「みんなグラス掲げて~。祝いたいことをそれぞれ言ってね……俺はみんなとの出会いに」

 「この街のダンジョン全てに」ってやっぱりカラルのダンジョン好きはぶれない。

 ロンダールは「人々の営みに」とグラスを持ち上げる。

 「平和な時間に」と、言うのはノイリでやっぱり争いごとが無いのが一番だよな~。

 「魔法が使える喜びに」って言うのはユウキで、これから魔法の習得への期待が現れている。

 「え~っと……私たちのこれからに!」最後のルーミエは言うべきことに困っていたが、これからも楽しい日々が続けばいいな。

 みんな笑顔でグラスを掲げて

「「「「「「乾杯!」」」」」」

とグラスをぶつけ合った。

 ロンダールは自ら作ったダンジョンをコントロールさせるための”支配球”に千百年間ものあいだ体を乗っ取られていたが、俺たちが開放した後も支配球を責めるでもなく全てを許した。

「まぁ、自由にやれと命令したのも儂だからな~。しょうがないかな~って」

 軽っ!千年という気が遠くなるような年月を束縛されてその境地なのか?普通もっと怒るでしょ!?

「それでも開放された直後、目の前に業魔(ごうま)族のカラル様がいて運が良かったなぁ」

 いきあたりばったりすぎる……ただ単に長生きしたい。今の記憶を持ったまま寿命を伸ばしたいっていう気持ちはわからなくもない。そしてカラルの支配されることで寿命を終え、傀儡の第二の人生を選んだ。

 傀儡としての扱いは悪くなく、これまでと変わらない生活——ダンジョンを見回り、それぞれの支配球の話を聞いて、余裕があれば地上に出て人々の生活を愛でる。

「ロンダール、久しぶりの地上はどう?」

「そうだなぁ、全く別世界だなぁ。今回の休みでここの区画は全て見て回りたいものですな~」

 遠い目をして酒場の喧騒を楽しむロンダール。

「……特にこれだけの人が集まっているのだし、酒場、劇場、ダンスフロア——その熱気はそうとうなものだろうなぁ……人が集まれば娯楽が生まれる、そして規模が大きく連綿と続いていくのであれば大衆文化となり、それらが集まれば様々な派生もありえるのだろう」

 俺もこの街をノイリと一日見て回って、感じていたことだ。

「何だか楽しそうだな、何か面白いものがあったら教えてくれよ」

「ええ、必ずご紹介しましょうぞ」

「あっ、ロンダール。休みは何をしても自由だけれどアキト様を変な店に連れってってはだめだからね」

 カラルがそんなこと言うなんて珍しいな。そう思って聞いたら

「レイラから見張っといてって頼まれているのよ」

 なるほどね、仮面舞踏会みたいなことがないように心配しているのだ。

「そうだったのか。心得た。しかしアキト殿も大変よな、はははっ」

 他人事だから笑っていられるのだろう。俺は仮面舞踏会では本当に怖い思いをして、トラウマになっているので、話題を変える。

「……それはそうと、引き継ぎが一段落したのって言ってたけれど、どんな感じなの?」

 カラルは唐揚げを頬張りもぎゅもぎゅと咀嚼し飲み込む。

「ここ数日はかなりの数の内容を聞いたので、わらわのものにするのは時間がかかりそうだけれど、そうねぇ……全ダンジョンの管理がバラバラになっている所を直さないといけないわね」

 ロンダールの二杯目はエールではなくて日本酒のようなちびちび飲む系の酒をあおり、くぅ~たまらないって表情をしている。

「そうさな、本来であれば儂がこまめに巡回してやれば、ここまでバラバラにはならなかったんじゃろうが、それもまた一興じゃ。奴らの個性や悩んだところが垣間見れて面白いぞ、のう我が主よ」

「そうね、それもいいのだけれど全体的には階層が深すぎるわ、特に第七はちょっとやりすぎね。四百層って通常の冒険者には無理よ」

「そうそう、百五十階層くらいで留めておくのがよいじゃろうて……どれ休みが明けたら取り掛かろうかの……そうだ!直さねばならんといえば、下水問題じゃ」

「あ!忘れてた、明日の朝でも良いから仮工事やっといてくれない?」

 何だか二人は楽しそうだな。

「下水がどうしたの?」

「これだけの人口が集まればその下水ですら、精気や魔力を生成できるのよ、それもここ数百年くらい管理ができていなくてね」

「具体的には何するんだ?」

「あら!アキト様がダンジョンに興味を示してくださるなんて!
 ……生活から出る汚物や排水が地下に流れ込んでくるの。それをスライムなどの単細胞系モンスターで処理をさせているのだけれど流れがあると処理が遅くなるし貯めておくと臭いが酷くてコントロールが大変なのよ……」

「ほぉ~、なるほど。そのスライムを別のモンスターが捕食したりして魔力の供給の連鎖が起こるわけだ」

「ご存知でしたか!アキト様さすがですわ!」

 そんなに褒められるものでは……前世での社会科見学で行った下水処理施設を思い出していた。

「基本的にはダンジョンはこの世界には必要不可欠のものだと思っているし、それを生み出しているカラルやロンダールの考え方は好きだよ。だからもっと教えてくれよ」

「まあ、妻の趣味にも一緒に楽しんでださるのね、ほら、ロンダール。わらわの旦那様は素敵な人でしょう」

「ほほう、お若いのになかなか見どころのある男ですな」

 周りの冒険者たちはダンジョン攻略の話や武勇伝などをあちらこちらで会話している。そんな近くで俺たちはその攻略対象となっているダンジョンをどのようにして育てていくか、なんて話をしていると不思議な気持ちになるな。

 カラルとロンダールのダンジョン解説を長い時間聞くことになったが、色々と有意義な飲み会となった。
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チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい(小説家になろうへのリンク)続きは小説家になろうに掲載しています

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