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第2章
第141話 支配球
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「ヤメロ」と、4号は言うが何もできない。
大量の血があふれだし、内蔵を突き破り背中側にロウブレンが貫通して
剣先は血まみれの水晶玉が突き刺さっていた。そのまま脇腹へ素早く切り進
め、回復魔法をロンダールにかけると、右腹部が綺麗に修復されていく。
「馬鹿などんな刃も我を傷つけることはできないのに……」
簡単に引き離されたことよりも、自身に傷が入ったことの方がショックだった
ようだ。
ロンダールは水晶玉が体から抜けて、意識がない状態になり、前のめりに倒れ
るのを受け止めた。
ロウブレンに突き刺したまま、1号に俺は問いかける。
「このダンジョンの支配権は誰が持っている?」
「我だ……」
「ふーん、ロンダールは随分衰弱しているように見えるが……」
「いつもぎりぎりまで力を使っているからだ。あと寿命も近いのではない
か?」
受け止めたロンダールを地面に寝かせたところでゆっくりと意識を取り戻した
ようだ。
「1号が体の外に出たのか……。それにお前は4号か……」
まだ意識が混濁しているロンダールに俺はこれまでの経緯を説明する。
4号のダンジョンを踏破した俺たちは、4号を見つけて、ロンダールに会いた
いというから興味本位で連れてきた。危害を加えるつもりはない、だからお前
たちの好きなようにしろ。
カラルは第4ダンジョンが欲しいと行っていたが、その思いは変わっていない
だろう。
俺たちが見守る中ロンダールはゆっくりと口を開く。
「4号よ……。会うのは千数百年ぶりだろうか……。随分と長い間そこの1号
に支配されて眠っていたようだ」
表情は穏やかで、支配されていたからといって怒っている様子はない。
「主ヨ、我ハ何度モ失敗シタ……」
これまでの出来事をぽつりぽつりと語る4号。それをうんうんと頷きながら、
聞いている。
すべてを語り終えたあとにロンダールはねぎらいの言葉をかけた。
「そうか、いろいろすまなかったな……すぐにでも行って助けてやりたかった
が、できなかったのだ。許してくれ」
もっと、血気盛んな魔族を想像していたのだが、どうも様子が違う。例えるな
ら……孫を見守る爺さんといったところか、何だかこちらまでまったりとして
しまう。
「しかし、儂には力も時間も残されておらん……。本来なら32の支配球すべ
てのダンジョンを回って、ゆっくりダンジョンを育て、上にある町にも顔を出
しながらゆうゆうと余生を送るつもりだったのだ。お前たちが何を思い、何を
欲するのか……。どうだ冒険者との対峙は楽しかろう?」
「ハイ」
支配球っていうんだ、アレ。
「そうだろう。1号は儂が力を込めて作りすぎた初代なのでな……あやつは血
の気が他のと比べると多いのう。まあそれもいいところだ。4号は少し優しく
しすぎたかな……。ほっほっほっ。どれ水脈が邪魔しているのをなんとかする
か……」
そういって立ち上がろうとするが、よろめいて手をついてしまう。
「もう、体が言うこときかんのう……そうじゃ、そこの綺麗な魔族のお嬢さ
ん」
「はぁい、なんでしょう?」
綺麗と言われ、うれしそうに浮かれて答えるカラルさんだった。
大量の血があふれだし、内蔵を突き破り背中側にロウブレンが貫通して
剣先は血まみれの水晶玉が突き刺さっていた。そのまま脇腹へ素早く切り進
め、回復魔法をロンダールにかけると、右腹部が綺麗に修復されていく。
「馬鹿などんな刃も我を傷つけることはできないのに……」
簡単に引き離されたことよりも、自身に傷が入ったことの方がショックだった
ようだ。
ロンダールは水晶玉が体から抜けて、意識がない状態になり、前のめりに倒れ
るのを受け止めた。
ロウブレンに突き刺したまま、1号に俺は問いかける。
「このダンジョンの支配権は誰が持っている?」
「我だ……」
「ふーん、ロンダールは随分衰弱しているように見えるが……」
「いつもぎりぎりまで力を使っているからだ。あと寿命も近いのではない
か?」
受け止めたロンダールを地面に寝かせたところでゆっくりと意識を取り戻した
ようだ。
「1号が体の外に出たのか……。それにお前は4号か……」
まだ意識が混濁しているロンダールに俺はこれまでの経緯を説明する。
4号のダンジョンを踏破した俺たちは、4号を見つけて、ロンダールに会いた
いというから興味本位で連れてきた。危害を加えるつもりはない、だからお前
たちの好きなようにしろ。
カラルは第4ダンジョンが欲しいと行っていたが、その思いは変わっていない
だろう。
俺たちが見守る中ロンダールはゆっくりと口を開く。
「4号よ……。会うのは千数百年ぶりだろうか……。随分と長い間そこの1号
に支配されて眠っていたようだ」
表情は穏やかで、支配されていたからといって怒っている様子はない。
「主ヨ、我ハ何度モ失敗シタ……」
これまでの出来事をぽつりぽつりと語る4号。それをうんうんと頷きながら、
聞いている。
すべてを語り終えたあとにロンダールはねぎらいの言葉をかけた。
「そうか、いろいろすまなかったな……すぐにでも行って助けてやりたかった
が、できなかったのだ。許してくれ」
もっと、血気盛んな魔族を想像していたのだが、どうも様子が違う。例えるな
ら……孫を見守る爺さんといったところか、何だかこちらまでまったりとして
しまう。
「しかし、儂には力も時間も残されておらん……。本来なら32の支配球すべ
てのダンジョンを回って、ゆっくりダンジョンを育て、上にある町にも顔を出
しながらゆうゆうと余生を送るつもりだったのだ。お前たちが何を思い、何を
欲するのか……。どうだ冒険者との対峙は楽しかろう?」
「ハイ」
支配球っていうんだ、アレ。
「そうだろう。1号は儂が力を込めて作りすぎた初代なのでな……あやつは血
の気が他のと比べると多いのう。まあそれもいいところだ。4号は少し優しく
しすぎたかな……。ほっほっほっ。どれ水脈が邪魔しているのをなんとかする
か……」
そういって立ち上がろうとするが、よろめいて手をついてしまう。
「もう、体が言うこときかんのう……そうじゃ、そこの綺麗な魔族のお嬢さ
ん」
「はぁい、なんでしょう?」
綺麗と言われ、うれしそうに浮かれて答えるカラルさんだった。
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