上 下
133 / 182
第2章

第132話 トレイン

しおりを挟む

「やっぱり、アキトは強いよね~」
走りながらルーミエが呆れるように言う。

「そうありたいと思っていて努力はしているつもりだよ。それでもまだカラルの方が強いんじゃない?」

「技や体力的な強さに関してはわらわが上だと思うけど、何て言ったらいいのかしら?世界の理(ことわり)を超える強さっていうのかしら……アキト様の場合は生命そのものへの直接関与ができてしまう神のような存在っていうのかしらね」
カラルはそんなふうに思っていたのか……。

「ま、それでもあたしたちから見たらカラルも似たようなものよ……早く魔法を使えるようになりたいわ~」
そういうユウキはこのダンジョンのことが一段落ついたら、ルーミエと一緒に魔法訓練所に通うことにしている。どれくらいの期間や費用が習得までに必要かは不明だが、カンパニーに所属しているから何らかしらの特典とかあるだろう。戻ったら事務所によってに聞いてみよう。



第8ダンジョンからカラルのダンジョン改変能力で地中を掘り進み、第21ダンジョンの95層へ侵入する。ダンジョンが変われば雰囲気やモンスターががらっと変わるのはダンジョンを運営している奴の趣味や嗜好が反映されるのだろう。
出会うモンスターたちを瞬殺しながら進んでいると、98層でモンスターを引きつれて逃げるパーティがこちらに向かってきている。後ろからはリザードマンが30体ほどで追いかけてきている。

先頭の男が叫ぶ。
「リザードマンの大群だ!無理そうなら逃げてくれー」
モンスターをトレインしている場合は状況を簡潔に伝えのも冒険者のマナーだ。

「大丈夫だ!まかせろ!……」

水晶玉に小声で「しばらく話せなくなるようにするが許してくれ」と伝え極私的絶対王国(マイキングダム)で話すことを禁止した。

俺はミスリルの剣を持ち、リザードマンに向かって走り出すのと同時に1m大の圧縮火炎球(フレア)を5発を展開。向かってくるパーティの頭の上を通り越して先頭のリザードマンに命中させる。数体倒せたのと相手の足を止めることができた。

6人の冒険者とすれ違った後に、襲いかかってくるリザードマンの槍攻撃をかわしながら首をはねる。続く10体以上を全ての頭部への一撃で倒す。ルーミエとユウキも参戦して一瞬でケリはついた。

通り過ぎたパーティも離れたところから戦況を見守っていたようで、全て片付くと曲がり角のところから出てきた。

「いやーあんたたち強いな、助かったよ、ありがとう。俺はデバンという」
そう言って手を差し出してきたので、握手をする。

パーティのリーダーでデバンという男から、これまでの経緯を聞いた。

99層フロアボスの定期発生時期に合わせて、主戦場の80層から99層を目指してやってきたが、
この98層でパーティメンバーの9人が死んでしまい、残り6人となってしまった。残ったメンバー6人では80層まで戻ることは難しいと判断し、敵を回避しながらでも99層に向かうことにしたそうだ。

「アキトさんたちもこれから99層に向かうのか?」

「ああ」

「地図は持っているか?」

「いや、持っていない。ルートが変わると聞いているが……」

「まあ、そうなんだが……、知らないのか?パターンが7種類あるって」

「へぇ、知らないな」

「それでここまできたのか。そんだけ強ければ余裕ってか……。その強さに俺たちは頼りたいんだが、俺たちを99層の宿場町まで連れて行ってほしい。護衛としての代金は金貨2枚でどうだ?」

「いいだろう」
金はもらわなくても良かったのだが、ここではそういうものだと思い受け取っておく。

「よし、商談成立だ」

6人は戦力的にもかなり疲弊しているようで、ここでいったん食事も兼ねて休憩に入る。

「よかったらこれも食べてくれ」
エソルタ島やカガモン帝国での屋台で買った食事を提供するとみんな「うまい、うまい」と喜んで食べてくれた。
6人は男性3名、女性3名でレベルは150くらいの強さだ。

「どれくらいダンジョンにいるの?」
とルーミエが隣の女性に聞いた。

「4ヶ月くらいかしら、この99層のフロアボスで一稼ぎしたら半年くらい休みをもらうのよ」
どうりでみんな装備に汚れが目立つわけだ。

さらに隣の女性が力強く、自分の前で握り拳をつくる。
「そうそう、まだあたいの夏は始まっていない!ってかあたいは6ヶ月もぐりっぱなしよ。今年こそひと夏の思い出をつくらなきゃ!」
一夏の思い出か……。暑さや寒さがなくダンジョン内は季節感がないが、気温は一定で快適に過ごせる。

「でもさ、地上に戻るまでに結構かかるんじゃないの?」
女性同士で話が弾み始めたところでユウキも混じり質問している。確かに90層くらいあると一般冒険者だったら2週間くらいかかるんじゃないのか?

「それがね、フロアボスを倒した後に、ドロップ品を早く売って遊びたいって人が集まって地上への超高速移動パーティが組まれるのよ。私たちはそれが目当てでもあるから99層に行きたかったのよ」
女性陣はテンションが高いな。

「フロアボスのドロップで数年遊んで暮らせるってのを聞いたことがあるから、それで頑張れているようなもんだな……」
別の男性が疲れた表情で言う。

「おいおい、ローアン、暗いぞ!アキトさんにも護衛についてもらえるんだ。もう少し頑張ろう!」
デバンが男性を元気づけるように言った。

「今日の夜には99層の宿場町にはつけるように連れて行くよ」
と、俺が断言するとみんなほっとした顔になった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...