チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號

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第2章

第百八十一話 会合 その四

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 レイラの登場にあっけにとられていた俺はふと娘のことを思い出した。

「イチカは?」

「今日からいつも昼間に来ている乳母さんに夜も見てもらってるの。その分私が昼間にゆっくり見ることができるしね」


 レイラがぱくぱくと美味しそうに食べるのでついつい見とれてしまっていた。どうやらカムラドネにはない味付けがあったようで料理の作り方を知りたいとかで、ロンダールは答えられず、厨房から料理人がやってきたり、演奏会――ライブの時間も迫ってきたのでバタバタとしながら店を出て会場まで案内してもらう。

 すでに入場時間は過ぎていたので建物の中にはすっと入れたがロビーには人がごった返しており、グッズ販売などもひどだかりができていて、前の世界でのライブ前の物販状況とあまり変わりがない。

 このまま並んで会場へ入っていくものかとも思ったが、ロンダールがロープが張ってある立入禁止と思われる通路へ案内する。勝手に入ってもいいものかとも思ったが支配人らしき男すっと現れロンダールにごそごそと耳打ちした。

 俺たちはそのまま薄暗い通路を進み小部屋に案内される。そこは一階と二階との中間の高さに位置して座るとちょうど目線が舞台と同じ高さである。炭酸系の酒とつまみが運ばれてきた。

 いわゆるVIP席と言われるところなのだろう。ライブと言えば、汗だくになりながらもみくちゃになる激しいライブしか経験がない俺にはこのような席での見学では物足りないと感じている。とはいえ郷にいれば郷に従えでロンダールのもてなしを素直に受けよう。

 レイラは全く何が始まるか聞かされていないが、会場の熱気や俺が好きだといった音楽がどんなものかをあたりをキョロキョロしている。

「女の子がちょっと多いかな?」

 客層は六割くらいが女性のようだ。カラルは出された酒をちびちび飲み落ち着いた雰囲気で待っている。

そして幕が開き、雷鳴轟くような爆音の演奏が始まった。



 ライブ会場を出て、ぶらぶらと四人であるき始める。

「いや~楽しかったねぇ」

 興奮冷めやらぬ俺だったが、カラルもレイラも俺が心底楽しんでいるのは理解してくれているようだった。

「初めて聞く音楽で随分と今の音楽と違ったね。どの曲が良かった?」

「始めから終わりまで爆音で演奏が進むと思っていたけれど、いろんな変化を楽しめたかな。どれも良かったんだけれど、やっぱり最後の曲かな……未来に希望を持って楽しく生きよう、過去に起きたことはすべて今日のために必要だったんだ、つらい経験も悲しい出来事も乗り越えてきた君へのご褒美なんだ。だから、明日も生き抜いてくれ……ってそんなメッセージが響いたな~」

 迷宮都市ドルトミアでの冒険者に向けての応援ソング……そんなところなのだろうか。俺は早々にVIPルームを抜け出しもみくちゃになりながら、初めて聞く曲ばかりだったが見様見真似で周りと調子を合わせ会場の盛り上がりについていった。

 カラルもレイラもVIPルームから出てきてはいたが、流石にこの集団に交じるのはためらっていたようで、後ろの方で眺めていたのを視界の隅で何度か確認をした。

「皆様、儂はこのへんで失礼させていただきます、また面白いものがありましたらお声がけいたしますぞ」

 そう言って立ち止まり頭を下げる。

「ああ、今日は本当にありがとう。ロンダール」

「ふふ、店舗の経営もいいけれど、ダンジョン管理も頼んだわよ」

「御意」

「……で、このあとはどうするの?」

 レイラが腕を絡めてくる

「そうだな、折角の晴天の夜だから空の上かな?」

 もう少し飲んでもいい気分だ。アイテムボックス内には酒も食べ物のたくさんある。1000万人都市はどこに行っても必ず人がウロウロしているので、箱魔法ですぐに飛び立つというのはなかなか難しい。

 二人と腕を組みながら、細い路地へと入る。極私的絶対王国(マイキングダム)発動……。百メートル四方を囲い、俺達が入った細い路地には意識を向けさせないようにする。精気の柱を頭上数百メートル先に伸ばす。と同時に転移魔法を展開。俺たちを囲う箱魔法のまま、展開した魔法陣を通り抜ければ人に気づかれることなく空の上へと到着する。

 二人にどこに行きたいか聞いたら、レイラは「星がたくさん見えるところ!」と答えて、カラルは「大海原の真ん中」と返してきた。

 星は高度を上げれば、見える世界は地上とはぜんぜん違うはずだ。そしてカラル希望の大海原の真ん中か……。パッと頭に浮かんだのは、ルーミエとユウキのふるさとエソルタ島だった。

 異世界転移も含めて移動しながら、カラルがベットを用意したり、俺はテーブルを出して飲み物を食べ物を次々と並べる。

 そんな様子を眺めていたレイラは「あらあら、なんだか手慣れたものね」と笑っていた。
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チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい(小説家になろうへのリンク)続きは小説家になろうに掲載しています

異世界に呼ばれて来た25歳DTの俺はキャバ嬢風の闇主様にすべてを捧げたい
ストーリー:「え!?勇者的活動NG? 誰かを救おうなんて、思ってないですよ」
  
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対人最強チート魔法と超破壊力の万能バットを駆使しながら、脱童貞を夢見つつ、あてもない異世界ブラック紀行が今始まる。
感想 24

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みんなの感想(24件)

煉
2019.01.13

舌から手を伸ばし頬×
下から手を伸ばし頬○

616號
2019.01.13 616號

ありがとうございます。修正しました。

解除
更新感謝━━━(≧∀≦人)━━━感謝

面白い┏( .-. ┏ ) ┓

616號
2019.01.13 616號

お返事し忘れていました。ごめんなさい。

更新頻度が空きますが、気長にまってください。

解除
ぜ
2018.04.28

ドリンク系のお名前!!

616號
2018.04.29 616號

ご感想ありがとうございます。

お気付きの通りカフェ系の名前でつけています。

解除

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