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第1章

第四十話 カラルのお仕事

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 謁見の前日。早朝のベッドの中から領域(テリトリー)を展開し、魔法研のカラルの部屋のノートに目を通す。下記の内容をレポートにして提出したと記載されていた。

◇ ◇ ◇
遠夜見(とおよみ)の巫女の従者について直近の記録を確認した。エスタとカムラドネの英雄と思わしき人物の記録石(キロクセキ)の討伐情報を確認したところ、討伐情報は一般冒険者と同じレベルであり、襲撃統括者を倒したといった記録は残ってなかった。
◇ ◇ ◇

 ラスボスは襲撃統括者っていうのか……変なところで感心してしまう。

 カラルの上司に対して最初の報告内容が不明だが、何とかなるんじゃないかな。あとは炎使いということを隠しておけば大丈夫かもしれない。

 領域(テリトリー)を終了し、部屋に意識を戻す。女の子たちの手と足が複雑に絡み合うベッドの中で、みんなこんなに寝相悪かったかなと思いながら再び眠りについた。



 二度寝して起きたのはみんなが朝食をとっていた時だった。遅れてテーブルについて、用意された食事を始める。

「今日の昼か夜に昨日の悪魔族の女性と食事をしたいと思うんだけど、どうかな?」と、切り出してみたところ、みんな同意してくれた。

「その女性はアキトとどのような関係を望んでいるのかしら?」

 ルーミエは不安に思っているのか、ストレートな質問が飛んできたのでカラルの思っていることをそのまま伝える。

「彼女は俺との結婚を望んでいるようだ」

「……うぐっ!それでアキトは?」

「結婚はまだないとしても信頼できるようであれば、仲間にしてもいいと思っている。この人形を見てくれ」

 カラルが俺に預けた女の子の人形をアイテムボックスから取り出し、ルーミエに渡す。みんなまじまじと見つめて、胸をぷにぷにとつついたりしている。

「この人形はカラルそのものなんだ。出会ったときに、信頼の証として預ける。と、言って人形の足の小指をハサミで切り落としたんだ」

「どうなったの?」

「カラルの足の小指も同時に切り落とされた」

「「「「「……」」」」

 一同人形から指を離す。

「もちろんすぐに傷は直したよ。そこまでして、俺に取り入りたかった理由は会ったときに彼女の口から聞いてやってほしい。彼女の能力は精気の抽出、生成と物質生成能力はとても使えるし、そういったことを踏まえて彼女あってほしいんだ。ちなみに俺より強いかもしれない……」

 レベルのことはこの世界の人たちには伝えていない。言ってもおそらく通じないと思う。確かカラルのレベルは495、俺のレベルは294だが俺の場合レベル格差をうめることのできるチート魔法がどこまで通じるのか、試してみたい。



 もう一度魔法研に領域(テリトリー)で覗く。研究室ではカラルが調べ物をしているようだ。

 ドアをノックする。

「はーい。どうぞ」

「おはよう、カラル」

「あ、おはよう、アキト様。ドアのノックはアキト様が?」

「急に話しかけると驚かせてしまうと思って——」

「そんなお気遣いは不要なのに……。先ほどわらわの人形で遊んでなかった?」

「ああ、みんなに見せた。つついていることも感じるのか?」

「ええ、感じるわ。アキト様が胸を触っているって、思うだけでとてもドキドキしたのよ……。でも人形でなく、直で触っていただきたいわ」

 こういう何気ないエロさも結構好きだ。うちの子たちはお上品だからな。

「悪いがあれは俺じゃないんだ。次回からそうさせてもらうよ」

「うふふ、楽しみにしていますわ。それでご依頼のお店だけど、今日のお昼に個室で予約しておきました。貴族御用達の超高級料理店で、味に関しては食べたことがないからわからないけれど、間違いないと思うの」

「そうか楽しみにしているよ。待ち合わせは……」

 店の場所を聞き、直接店で落ち合うことになった。



 昼前までベッドでゴロゴロしていた。ルーミエは訓練場へ、レイラとノイリはテーブル席で書籍をにらめっこしながら勉強を、ユウキは俺とベッドでゴロゴロしている。

 暇ではあるが、可憐な女の子が横で一緒にいてくれるだけでも幸せだ。昨日の一緒に風呂に入ったことを思い出してしまう。

「どうして昨日は一緒にお風呂に入ってくれたの?」

「あたしは前から一緒に入りたいって思ってたけど、レイラがね、なかなか許してくれなかったんだ。でも、アキトがダンジョンに行っているときに色々と話をして説得した」

 説得してくれたのか……。

「ははっ、そうか、ありがとう」

 そういって頭を撫でたら「どういたしまして……また一緒に入ろうね」と、言って抱きついてきた。



 ルーミエが戻ってきて、汗を流してからカラルの予約している店に向かう。歩いて十分ほどのところに店はあり、三階建ての間口が広い石造りの建物だ。予約名を告げると個室に案内された。

 カラルはダークエルフに擬態して黒のシックなドレスで立っていた。カラルは店の者にいったん下がってもらうように指示をする。俺たち六人だけとなり、カラルが挨拶をする。

「皆様、初めまして。わらわは王立魔法研究所で客員研究員をしております、カラルと申します。この度は皆様とお近づきになりたくて、この機会をアキト様にご用意いただきました。本日はよろしくお願いします」

 思い!そして固すぎるぞカラル!軽いビッチな言動がお前の持ち味だろう!みんな突然の堅苦しい挨拶に呆然としている。

「ぷぷっ。何言ってんだよカラル、そんなキャラじゃないだろう。楽にしたらどうだ?」

 レイラも気を使って続ける。

「そうよ、別にそんな私たちもアキトと知り合って間もないし……気にしないで。私はレイラって言います。アキトの妻です。こちらが遠夜見(とおよみ)の巫女のノイリ」

「ノイリです。初めまして」

「私はルーミエです」

「あたしはユウキだよ。そんなに緊張しなくても責めたりなんかしないから安心してよ」

「挨拶もこんな感じでいいだろう。食事を頼むよ」

 カラルは入り口にある鈴を鳴らして店員を呼んだ。みんな席に着き、運ばれてくる料理と酒に舌鼓を打った。

 この世界に来てからというもの、食欲、睡眠欲、色欲をすべて充分に満たしている。ついでに言えば金欲も満たされているし、チートのおかげで命の危険や脅されることに怯えなくてもいい。欲望のままに生きていくことができる。

 カラルは歴史的知識や魔術的知識、あと地脈にも精通していることもあり、レイラとノイリと楽しそうに会話をしていた。

 今はルーミエとユウキを相手に国政の話やファッションの話や剣術の話がごっちゃになりながらも楽しそうに話をしている。エロいし、話題も豊富だし、賢いし、見た目も体格が良くてかっこいい。

 ——さて、どうやって仲間に誘うべきか。

 悩んでいる間に一通り料理が出され、デザートを待っているときにカラルが言った。

「唐突ではありますが、皆様の仲間にわらわも入れてもらえないでしょうか?」

「俺たちはずっと王都にいるわけじゃないから、仕事はどうするんだ?」

「客員研究者の身ですので、辞めても問題ありません。地脈システムにもいつでもアクセスできますし……」

  地脈システム。つまり記録石(キロクセキ)システムにいつでもアクセスできるだと?

「え!?なんで?」

「もともとわらわが強い冒険者を探すために作ったシステムなので——」

「もっと詳しく教えて」

 カラルへの興味は尽きない。
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