チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號

文字の大きさ
上 下
15 / 182
第1章

第十五話 エスタ出立準備

しおりを挟む
 ルーミエがリビングに来るなりこう言いだした。

「これからお風呂と朝食の準備をします。朝食は私たちが準備します。アキトは浴槽を置いてるのでお風呂を用意して下さい」

 どうしたどうした。朝の起きた時のようなデレた感じがない、事務口調なのでこちらも改まってしまう。

「お、おう」

 風呂場に行くと昨日買い出しの時に買ってきた木製の湯船が置いてあった。お湯をなみなみと注ぎ、手を入れて温度を確かめる。――よし、適温だ。

 脱衣室ではユウキとノイリの二人が準備して、俺が出ていくのを待っていた。

「わーい、お兄ちゃん、ありがと。……一緒に入っちゃう?」

「えっ!?」

 ユウキがいたずらな笑顔で聞いてきたので、ドキッとしてしまう。正直一緒に入りたい。

「だ、だめですよぅ、ルーミエにおこられますよ」と、ノイリが清く正しく引き止めてくれた。

 一緒に入ることを想像して顔がにやけてしまうのは男の性(さが)です。

 リビングでは黙々とルーミエが朝食の準備をしている。少し準備を手伝い、ルーミエと二人で先に朝食を食べ始めたが、何故か会話は無い。ルーミエどうしたんだろう?機嫌が悪いのかな?

 無言の朝食を食べ終わった頃に顔を手でハタハタとあおぎながら、バスタオルを巻いたユウキが出てきた。

「いやーおっさきー」

「ユウキ!アキトがいるんだから、服着なさいよ!」

「いつもは何もつけてないけど、暑いんだからバスタオルで許してよ~」

 ユウキは裸族なのか……。

「アキトさんありがとうございました。気持ちよく入れました」と、ノイリは礼儀正しくお礼を言ってくれた。

 湯上り美女が二人。うーん、眼福眼福。

 ルーミエから熱めのお湯を足すように指示があり、お湯を足していく。あつつ……熱すぎたな。水を入れる、ぬるいかな?適温がわからなくなってきた。手でお湯をかき回しているとバスタオルを巻いたルーミエが入ってきた。こちらもユウキと同じくいいプロポーションだ。なんだろう、これは男として試されているのだろうか?

「うん、いい感じよ。ありがとうアキト!」と、さっきの無表情とは打って変わって極上の笑顔でお礼を言ってくれると、ドキドキしてしまう。

 俺が風呂から出ていくと「んん~~~~~~」と、風呂場からとても色っぽい声が聞こえてきた。

 聞けばルーミエはお風呂好きで、入ると当分は出てこないそうだ。早く入りたい一心で、事務口調だったり、無言で朝食を食べていたんだな。

 朝食を食べている二人に今後の予定を聞く。

「この宿は今日で引き払うの。そのあとはギルドに行って、昨日の報酬の受け取ってからカムラドネに向かうための旅支度かな」

「ノイリ、どのくらいの移動になるの?」

「ここから馬で七日ほど南西に移動するんです」

「七日か……」移動だけでこれだけ長い時間を費やしたことがないので、言葉に詰まる。

 車や飛行機のない世界なので、あきらめて慣れるしかないのかな。唯一救いなのが、旅の荷物は全てアイテムボックスに入るので、馬車などには乗らず、身軽に移動はできるということぐらいだ。

 途中にタンメナという街があり、そこまで食料や水を補給する所は無い。移動と休息に時間をかけたいので、自炊はしない。少し多めに三食、十日分をそれぞれが屋台街で買い込んでもっていくとのこと。

 本当にアイテムボックス内の食べ物は基本的には腐らないってのは便利すぎるな。



 ルーミエがお風呂からあがって、落ち着いたころに宿を出てギルドへ向かう。

 ギルド内は昨日の襲撃の後の処理や報酬支払でとても混雑していて、討伐報酬の受け取りにも時間がかかった。

 ちなみに俺の改ざんされた討伐記録は気づかれなかった。討伐記録確認の際に記録石(キロクセキ)にはギルドからのお知らせが入ってくる。

 なになに……。

◇ ◇ ◇
重要案件:「首謀者ガルジアを倒したパーティについて」

 エスタを襲った災いを大きな犠牲を払いつつも退けた冒険者たちには大変感謝しています。また亡くなられた冒険者方々の一日も早い現場復帰と無事仲間との合流を果たされることを願っています。

 さて、ギルドでは襲撃首謀者ガルジアを倒したパーティを探しています。依然、目撃情報はなく生死が不明ではありますが、捕らわれていた三百人を超える魂が解放されたことをエスタ支部の協会で確認しております。また、それに付け加えモンスターが一掃されたことにより、当ギルドはガルジアの討伐完了と判断しました。そのパーティへの十分な報酬を用意し、また英雄としてエスタ首長から……」
◇ ◇ ◇

 と、長々と続いている。

 そうだ、死体はアズアフィアが飲み込んでしまっているので、見つからないよな。それでも記録石(キロクセキ)から情報が出てくると思っているのだろう。

 しかし英雄扱いは御免だな、このままバックレてしまおう。

 そしてお知らせの最後には一週間後にエスタを挙げての祝賀祭が執り行われると締めくくられていた。

 ギルドで討伐報酬を得た俺たちは屋台街で昼食をシェアしながら、おいしいと思ったものを四食ずつ注文していった。店の方そういった注文を受けることにも慣れていて、手際よく作って渡してくれる。

 栄養バランスも大切だ。肉野菜炒め、焼き肉、サラダ、唐揚げ、ご飯、パスタ系、焼き飯、スープ、デザートなどの果物も十分に購入した。

 四人分で銀貨五十枚くらい使っただろう。金に困らない生活ってのはこういうことなのかな。今まで感じたことのない金銭感覚だが心地よい。

 続いて武器と防具の店に向かい、ルーミエたちのそれぞれの武器や防具を見直すようだ。

 ガルジアから得た戦利品を渡してもいいのだが、彼女たちにとってオーバースペックだったり、出どころを他の冒険者に嗅ぎ回られても嫌なので、時期をみて渡すことにしよう。

 三人の手に金貨三十枚ずつ渡していく。

「こ、こんなにもらっていいの?」

「いいよ、討伐報酬以外にもたくさん稼いだからな。俺はすこし試したいことがあるから、ギルドの訓練所にいるよ、ゆっくり選んでくれ」

「わかったわ。じゃ、またあとでね」



 再びギルドに戻り訓練場に向かいながら、ノイリが言っていたことを思い出す。

 ”アイディア次第で魔法はもっと強くなる”

 それを試したくてここに来た。

【検討事項その一 野営時の無意識下における箱魔法の継続利用の実験】
 ガルジアからの戦利品中にあった、自動魔法継続の機能をもった指輪を使って箱魔法の継続使用を試みる。

 野営について彼女たちからまだ何も聞いていないが、ファンタジー世界の野営といえば交代で見張りに立つのがお決まりだ。毎日馬での移動になるし、しっかりとみんなが休息できるかどうかの実験だ。

 まずは対物理、対魔法の障壁で目隠しのために色を黒した箱魔法を自動魔法継続の指輪を通して発動すると一辺一メートル黒色立方体ができた。

 この箱魔法の強度を試す。襲撃された時でも、準備する時間が稼げればなんとかなるんじゃないのかな。

 剣で切りつけてみるがびくともしない。凝視すると分析能力が働き、箱自体の耐久値が見える。

 攻撃するたびに数値が減るが、指輪の機能で自動的にMPが補充され耐久値は元通りになった。MPは毎秒1から2ほど減っているが、俺の場合一分間でMPは自動回復するので問題ない。

 使えるな。野営時に彼女たちに提案してみよう。

【続いて検討事項その二 無意識下での魔法の継続使用について】
 箱魔法も指輪の機能を使うことで、無意識下での継続使用が可能になった。その延長で治癒魔法を自分自身に常時かけておくことができるのではないかと考えた。

 この世界では神の加護を得れば、四回まで死んでも大丈夫と言われているのだが、俺は異世界出身なので、実際この規定に当てはまるのかわからない。

 加護が無くて死んだらそこで終わりかもしれない。

 ”守り”を1に下げ、自動魔法継続指輪を使い治癒魔法を実行する。

 手のひらを剣の腹の部分にあてて、すっぱりと切る。いつものように自然治癒力でじわりじわりと治り、指輪の効果が発揮されていない。

 箱であったり、炎であれば常にMPを注ぐための対象があれば、指輪も魔力を供給でき効力を発揮する。しかし、治癒は充填対象となる体のHPは満タンにってしまうと、効力を発揮できないのかな?という感じで諦めた。

【検討事項その3 魔法の意識下での継続使用について】
 指輪を用いての継続治癒はできないと判断して、自分で意識をもって魔法をかけ続ける方法で実験をしてみる。

『継続治癒魔法』と、念じてみると毎秒3ずつMPが消費される。お、魔法がかかったぞ!?手のひらをすっぱり切ってみる。

 自然治癒のじわーと治る感じではなく、一瞬で傷がふさがる。切ったあと痛みを一瞬感じるが、あまり痛いと思わなかった。

 アズアフィアが毎分60MP消費、継続治癒が180消費となり、今の俺のステータスであれば、毎分MP回復は290あるのでおそらくMPが底をつくことはないだろう。あとは戦闘でどれだけうまく使えるか経験していくしかないな。

 しばらく実験を続けているとルーミエたちが迎えに来てくれた。

「アキトー、おまたせー」
 指輪を一瞬外し、展開していた箱魔法を解除した。

 さあ、出発だ。
しおりを挟む
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい(小説家になろうへのリンク)続きは小説家になろうに掲載しています

異世界に呼ばれて来た25歳DTの俺はキャバ嬢風の闇主様にすべてを捧げたい
ストーリー:「え!?勇者的活動NG? 誰かを救おうなんて、思ってないですよ」
  
転移した異世界で闇主様からチート冒険者やうざい2頭身アニマルの排除を任された主人公の25歳童貞野郎。
 
 その途方もない目的達成のご褒美はなんとキャバ嬢のような盛り髪のセクシーな闇主様みずから、卒業のお相手をしてくださるとか!? 
 
対人最強チート魔法と超破壊力の万能バットを駆使しながら、脱童貞を夢見つつ、あてもない異世界ブラック紀行が今始まる。
感想 24

あなたにおすすめの小説

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...