チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

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第1章

第九話 エスタを守れ その二

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 ゴブリンやオーク、ワイバーンやドラゴンなどのモンスターたちが続々と降下してくる。

 報酬が二倍というギルドの発表を聞いた冒険者たちが次々と勇んで表に出ていく中、ギルド内に残っている俺たちの話し合いは続いていた。

「もう少し詳しく教えてもらってもいいかな」

「私たちは遠夜見(とおよみ)の巫女の神託の導きによりアキトに会うために旅を続けてきたの。ノイリ……」

 ノイリの巫女見習いという肩書はそういうことだったのか。

 一呼吸おいてノイリが真剣な表情で語り始める。

「”東の果てに降り立つ彼のもの。あらゆる厄災を振り払い、異質な力をもって悪を打ち破るものなり——”
続きがあるようですが、聞いているのは、ここまでです。私たちの使命はその方を見つけることでした」

 遠夜見(とおよみ)の巫女が何者なのか全く分からないが、彼女たちの真剣な表情から冗談ではないことだけは確かだ。

「その”彼のもの”が俺なのか?」

「はい。神託の手掛かりになりそうな”東の果て”、”異質な力”の部分だけが頼りでした。昨日の戦闘を見て、これまで見てきたどの魔法使いもできない魔法制御力で確信しました」

 まだまだ未知な部分が多いんだけど、あれで結構高度なことだったんだな……。

 話をまとめると、今回のエスタへの襲撃の神託が出たのは三日前、俺に関する神託はもっと前から出ていて、それに導かれてここに来ていたということか。昨日この異世界に来たところなのに探し当てる三人は優秀だな——いや、昨日の森の中での出来事を思い返してみると、見つけ出すというよりかは俺が導かれていた感じだったな……。

 異世界に来たばっかりでもこの街を守りたいという気持ちはある。

 それに今攻め込んできている敵の数の多さに故に不安は感じているが、ドラゴンは別としてもほとんどのモンスターに対しては負ける気はしていない。しかしそう簡単にうまくいくだろうか。

 俺は悩み、しばらく沈黙が続く。

「……死ぬことが許されない状況だけど、とりあえずやってみよう」

 三人が真剣な表情で頷く。さらに俺は条件を提示する。

「そこで二つ頼みがある。行動は共にするが、危ないと判断したときは俺の指示に必ず従ってほしい」

「わかったわ」

「——それとこの戦いが終わったらさ、みんなでうまい飯でも食いに行こう」

「いいね。行こう行こう!」

「楽しみにしてるわ」

 なんだか死亡フラグのようなセリフだが、生きて帰るのが絶対条件だ。



 街の中心の広場を目指すことにして、三人には手出しをせずに俺に任せてほしいと伝える。

 歩いていくと血糊が道に広がり、武器が転がっていた。モンスターや人間の死体がないのは吸収されてしまっているからだろう。

 曲がり角からスケルトンファイター六体が出てきた。分析能力が発動、敵の名前、HPとMPのバーが頭上に表示されている。ファイターという名の通りMP部分が極端に短い。火魔法で一瞬で倒せるはずだが、自分の身体能力の限界を知りたい。

 間合いを詰めるべく全速力での移動を試みる。

 腰を少し落とし重心を下げ、地面を蹴る足にすべての力を込めると前世の身体能力では考えられないほどのスタートダッシュが発動する。三十メートルほどあった距離を一瞬で詰めることができた。

 目の前にいる三体のスケルトンファイターに黒剣で頭から胴体にかけて力まかせにぶった切る。

 残る三体が盾や刀を構え直す間に、その背後に回り込み、横薙ぎに首をはねる。時間にしておよそ五秒ほどで倒し、前世では絶対にできなかったであろう動きが軽々とできてしまう。

 数秒後には崩れ落ちたスケルトンファイターの骨が光の塵となって消えた。これが魂が取り込まれているってことか。敵、味方は関係無いんだな……。

 これまで見たことのない現象に見とれ、完全に油断していたところに弓矢とファイヤーボールが数発飛んでくる。

「アキト!危ない!!」

 ユウキが叫ぶ。

 三発目まではかろうじて避けることができたが、残りは全て被弾してしまう。

 あちち……。

 あれ?弓矢がどこにも刺さってない。ジャケットの防御力が高いからか?それとも俺の体は並大抵の攻撃では傷つかない体なのか……。

 HPが5ポイント減り、手や顔に火傷や切り傷を負ったが、みるみる治っていくことを感じる。

 ノイリの詠唱が始まる。俺に向けての回復魔法なのだろう。発動する頃には傷は全て自動で癒やされてしまっていた。

 『治癒魔法の出番がないな』と、思いつつもノイリにありがとう。と、伝える。

 それにしても自然治癒力が高すぎやしませんかね。不死身のようにみえてしまうかも。それにファイヤーボールを熱いと感じただけで、どんだけ魔法耐性高いんだよ。

 自分の強さに突っ込みどころがありすぎて、笑ってしまう。

 ファイヤーボールを放った魔法使いを含む、ハーピー、オーク、コボルトの大軍団が道幅いっぱいでこちらに歩いて向かってくる。

 ファイヤーボール、弓矢の追撃が飛んでくる中、前列の奴らがガチャガチャとこちらに向かって走り始めている。

 敵の攻撃を防ぐ方法を刹那に考え、高さ、厚さ二メートル、道幅いっぱいの直方体の圧縮火炎(マグマ)を防御壁のように展開し、飛んでくる攻撃を受け止めた。

 灼熱の防御壁を貫通するような強力な攻撃はなくその状態を維持して進む。

 圧縮火炎(マグマ)直方体の向こう側がどうなっているかは俺からは見えないが、倒したことを示すログが次々と流れているので、モンスターを倒していることは間違いない。とっさの判断で展開した術だが、攻防一体でいい感じだ。MPをさらに充填しながら前進していく。

「ノイリ、上空に敵だ」

 しばらく進んだところで、上空から聞こえる羽音でハーピーたちの存在をすぐに見つけることができた。槍の投擲攻撃があったが、ノイリの前に立ち薙ぎ払う。

 圧縮火炎(マグマ)の直方体の中から槍状にしたのものを一本作り出し、飛んでいるハーピーに向けて、高速で射出すると、避けることもできずに槍は突き刺さった。崩れ落ちていくハーピーから槍を貫通させ、回転を加え残りのハーピーを切り倒していく。

 俺の魔法は形を変える、移動させる、威力を増幅させるなどの事象に対してMPをその都度消費しているが、およそ一分で”強さ”ステータス分のMPを回復するので、うまくコントロールさえすれば魔法を使い続けることができる。

 大軍団を一掃するとレベルが二つ上がっていたので、ボーナスポイントを”強さ”と”守り”に振っておく。

◇ ◇ ◇
Lv7 HP:170/MP:170 
強さ:160 守り:160  器用さ:200 賢さ:160 魔法耐性:100 魔法威力:300 ボーナス:0
◇ ◇ ◇

 また空から風切り音が聞こえる。ワイバーンが上空から滑空しながら攻撃を仕掛けてくるが、鋭い爪での攻撃をかわし、黒剣で力いっぱい薙ぎ払うと、足を切り落とすことができた。動体視力、腕力ともに強化され、当たればそれなりのダメージを与えることができる。

 地に落ちたワイバーンは空に戻ろうとしてもがいているので、切りかかろうにも近づくのは危険だ。圧縮火炎球(マグマボール)で頭部への攻撃を行い、息の根を止めた。死んだあとは焦げ臭いにおいだけを残し、数秒後に何もなかったかのように本体はふっと消えた。

 上空にある魔法陣から続々とモンスターが降下し続けている。よく見ると数人の魔法使いが上空で魔法陣を維持しているようだ。

 ギルドの爺さんは、浮遊魔法で近くまで行って、魔法陣を破壊しろっていっていたけど、これだけワイバーンやグリフォンや翼竜が飛んでいると近づくことも難しいだろう。

 ここから魔法陣を破壊できないかな……。

 圧縮火炎(マグマ)で槍を作り出し、超高速で魔法陣のところまで飛ばす。魔法陣付近で回転をさせて魔法使いに切りかかると、防御する者もいたが、簡単に倒せてしまい、上空にあった魔法陣は消えた。

 魔法陣の構築にどれだけの時間を要するかは不明だが、モンスターの流入をひとまず止めることができた。

 続いて街の上空を悠々と飛び回るモンスターたちをターゲットにする。

 空全体を見渡すために、塀やベランダをつたって屋根の上にあがる。槍では照準が難しいので、槍を二つに分断。MPを更に注ぎ、球体に変形させたそれでモンスターを追いかけまわして、フェイントを入れながら着弾させていく。魔法耐性の強そうな飛竜にも圧縮火炎球(マグマボール)は有効のようだ。

 低空を飛んでいる奴は魂の吸収が間に合わず、墜落して建物を破壊してしまうけどしょうがないよな。

 そして空を飛んでいたモンスター数十体を全滅させた。
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チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい(小説家になろうへのリンク)続きは小説家になろうに掲載しています

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