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第1章

第七話 新しい朝が来た

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 朝、目が覚めるとログ画面にメッセージがあった。

◇ ◇ ◇
新しい機能が追加されました。分析機能、アイテムボックスゴミ箱
◇ ◇ ◇

 アイテムボックスを確認するとゴミ箱アイコンが追加され、捨てる時にはそこに放り込めばいいようだ。

 分析能力については昨日買い物している時に、偽物をつかませられないか心配したけど、その時に要望したのが機能が具現化しているのかな。

 黒剣を抜き、『分析』と、念じ目を凝らす。

 ◇ ◇ ◇ 
素材:黒鋼、鋼 相場価格40万
 ◇ ◇ ◇ 

と、AR表示される。

 これで素材についてはおおよそわかるし、偽物をつかまされる心配はなくなった。五十万で購入したが相場価格は四十万か。ベルトや鞘も入れてそんなものかな。

 しかし、相場価格が分かれば、これを使って稼ぐことも可能かもしれないな。冒険者として生きていくことができなければ、商人として生きていくのも悪くない。



 教会のチェックアウト時間は早朝と決められいて、朝食はない。散らかすようなことはしていないので、ベッドをきれいにして教会をあとにする。

 シスターから近くに屋台街があり、種類も豊富にある、と聞いたので、行ってみることにした。

 屋台街は朝から多くの人がいて結構な賑わいを見せていた。定番の鳥唐揚げ、肉を焼いてパンにはさむ店、焼き飯、麺類を提供する店などが多くあり、東南アジアの屋台街を彷彿とさせる。

 今朝の気分はがっつり食べたい感じなので、唐揚げと焼き飯に目玉焼きがのっているものを選ぶ。ドリンクはフルーツジュースを注文し、銅貨数枚と交換する。

 手に入った分析能力が面白くて、買った物に対して発動させてしまう。唐揚げや目玉焼きは鶏の卵で、焼き飯の肉は豚だった。席についてがつがつと食べ始めると、馴染みのある味を感じた。これは……醤油だ!

 何を食べてもうまい、肉も柔らかくてジューシー、焼き飯の米もぱらぱらで最高だ。いい世界だ。飯がうまいと活力が湧く。

 街の喧騒を楽しみつつ、ルーミエたちとの待ち合わせをしたギルドに向かった。

 朝のギルドはこれから出発する人たちで賑わっていた。ギルドホール内を見渡すが、ルーミエたちはまだ来ていないので、昨日の討伐報酬を確認しよう。

 カウンターにできた列に並び、しばらく待った。順番が回ってきて受付の女性に要件を伝える。

「討伐の報酬確認したいんだけど」

「いいですよー、記録石をこちらに入れてねー」

 首から下げている記録石をだして、読み取り部分に入れる。

「え~と……巨大牛、オーク二、蛇、蛾、野犬、蜂九十八、ハーピー四で
……合わせて三十九万八千モコになります」

 記録石システムって正確に討伐数を算出するな。それにしても一日働いて約四十万。ちょろい……のか?いやいや蜂の時は死ぬかと思ったし、妥当なのかな。

 これくらいの報酬があれば、贅沢しなければ結構貯金もできるし、金に困るようなことはないな。

「あと、牛を持って帰ってきたんだが、どこで買い取りしてくれる?」

「ここで買い取りしますよ。……そっちの計りに載せてください」

「これ計りだったんだ」

 ちょっとした舞台みたいなところに、ドスンと1トンはある牛を出す。

計量器の針を見ながら、金額を決める。

「んーと。五万でどうですか?」

 こんなに大量に一人では処理できないし、調理して有効に使ってもらう方がよいだろう。

「それじゃあ買い取りで…」

 受付の女性が手をかざすと牛がスッと消える。

「食材は料理を提供している宿屋みたいに人が多く泊まるところなら、だいたい買い取ってくれるよ。あ、あとお兄さん冒険者になりたてのようだから言っておくけど、二足歩行のオークは豚やイノシシとは違って食べられないから、持って帰ってきたら駄目だよ」

「わかったよ」

 確かに二足歩行は確かに食べる気が起きないな。



 しばらくの間、クエストボードを眺めているとルーミエたちがやってきた。

「おはよう、アキト」

 振り返ると水色のロングワンピースの女の子が立っていた、ルーミエと気づくまで少し時間がかかってしまった。防具ではなく普段着だったので、思わずまじまじと凝視すると分析能力が発動した。

 ◇ ◇ ◇ 
ルーミエ:レベル32 剣士
166cm B92cm W60cm H90cm
18歳 元カノユール王国 第一王女 死亡可能残数5回
 ◇ ◇ ◇ 

 浮かび上がる個人情報。ふむ、スタイルいいな……、いや、すげえなこの分析能力!!なんだかテンション上がるぞ。えーと、元王女なのか……。訳アリ感が漂う。

 続いてノイリを凝視して分析能力を発動させる。

 ◇ ◇ ◇ 
ノイリ:レベル12 魔法使い
155cm B83cm W59cm H85cm
16歳 遠夜見(とおよみ)の巫女の見習い 死亡可能残数5回
 ◇ ◇ ◇ 

 ノイリはスレンダーな体型だな……いやいやそうじゃない。巫女の見習いか、普段何してんだろ。

 最後にユウキを分析した。

 ◇ ◇ ◇ 
ユウキ:レベル25 剣士
158cm B89cm W57cm H88cm
17歳 元イメノア王国 第三王女 死亡可能残数5回
 ◇ ◇ ◇ 

 ユウキもスタイルが良い。そして、こちらも元王女ですか……。雰囲気が軽い感じが第三王女らいしい。

 いろいろな事があったと思われる肩書が浮かび上がった。ありがとう分析能力。かわいい女の子3人がいきなり仲間になるなんて、おかしいと思ったんだよ。それ相応の理由があるのだろう。

「どうしたの、アキト?」

「えっ!ああ、おはよう、普段着なんだなぁって思って——」

 ルーミエは腕を上に伸ばし、「うーん」と、言いながら大きく伸びをする。

「ふふっ、朝から討伐しに行ったりすると思ってた?みんな朝は強くないから、ギルドに顔をだして、クエストや報酬の確認と装備点検して、昼から行動開始することが多いかな。……あっ、そうだノイリは換金ある?」

ノイリは首を横に振る。

「じゃあ、私とユウキで換金してくるね…」

 ルーミエとユウキはギルドカウンターへ、俺とノイリはテーブルについた。

 ノイリは緊張しているのか、辺りをきょろきょろして落ち着かない。何か会話をしなければ……だが身の上話は地雷の予感。

「ノイリはどんな魔法が得意なの?」

「……私は氷魔法と治癒魔法を習得していますが、まだまだ未熟で、いつも二人の足を引っ張っちゃって——」

 あの二人とはレベルが倍以上違うからしょうがない。
 
「そんなことないと思うよ、それに二人は剣士としてとても強いみたいだし、きっと大丈夫だよ」

 気にしているところに話を振ってしまったかな……。話題を変えよう。

「ところで魔法ってどうしたら上達するの?」

「練習あるのみですね。戦って経験することはもちろん上達の近道ですが、普段から訓練を怠らず、熟練度を上げるしかありません」

「そうか、やっぱり練習か……」

「でも、アキトさんはかなりの熟練者じゃないですか、昨日のハーピーを倒した時のファイアボールを四つも同時に制御するなんて本当にヤバいって思いました。ルーミエとユウキもあんあ魔法使いは見たことがないって言ってましたもん」

 全てチートボーナスのおかげだ。気になることをすべて聞いてしまおう。

「あと、この魔法について知ってる?」

 俺は箱魔法小さなものをつくり、ゴロンとテーブルの上に置いた。

「……これはまたレアな系統外魔法ですね」

 不思議そうにのぞき込み、指でこんこんとつつく。

「強度を上げることはできますか?」

「ああ、可能だよ、少しなら形も変えられる」

「うーん。……障壁という使い方になるのでしょうか。私にはそれくらいしか思い浮かびませんが、熟練度を上げて、アキトさんのアイディアしだいで、さらにこの魔法を強くできる可能性はありますね」

 この魔法を使っている奴はいないのか。その分可能性はあるってことで、自分で極めるしかないな。

「わかった、いろいろと試してみるよ。ありがとう」

 二人が報酬を受け取って戻ってきて、これからの予定を尋ねようとしたときに、街に鐘が鳴り響いた。

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