チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號

文字の大きさ
上 下
174 / 182
第2章

第百七十三話 宝玉の中で 其の三

しおりを挟む
 デーアは結婚し、デーア・アルメヒティヒとなった。ヴァイスハイトが侯爵家を継いだので、アルメヒティヒ侯爵夫人になる。アンジュはゲニーがオラーケル家の婿養子になりゲニー・オラーケルとなったので、名前は変わらずオラーケル侯爵夫人になった。

 ヴァイスハイトは文官になり、新人らしく事務仕事から始め、デーアも外務関連の部署の文官になった。だがある日定期的に行われる討論会で発言する機会があり、ヴァイスハイトはその場で宰相であるブライ侯爵に気に入られ、文官になって一ヶ月で宰相補佐に抜擢される。一方ゲニーは魔法の研究がしたいということで魔法団の第五部署、研究職の部署に就きたかったのだが、師匠である魔法団総帥のレーラー・ムスケルに第三部署の副団長の座が例の王子とその右腕を陥れるための事件で空白になったからなれと言われ、しぶしぶその座に就いた。第三部署は所謂戦いの時の皮切りの部署で、怪我も絶えなく、最悪命も落とす。なので治癒魔法が得意な者を集めた魔法治癒士もその部署に配属される。アンジュは治癒魔法が得意だったので、必然と第三部署に配属され、実質ゲニーの部下になった。

 忙しい毎日だったが毎晩のように愛し合っていた二組の夫婦の蜜月は想像よりも甘く、両家の使用人が見てられないと恥ずかしがるほどだった。それは隠居し田舎へ引っ込んだ両親たちにも届いていて、孫が見られるのも早いと期待も必然と高くなっていた。

 元々仲の良い四人は、週末各屋敷に交代で集まり食事を共にし、ついでにその日は泊まることになっている。

 いつものように食事も終えて、四人だけでリビングルームでお茶を飲んでると、ヴァイスハイトが口を開く。

「これは極秘情報だが、隣国のクリーク帝国が我がエーデルシュタイン王国に攻め入る計画を立ててるらしい」
「それでか。師匠も最近眉間にしわ寄せて各団長たちと会議を重ねてるのは」

 納得といったようにゲニーが頷く。

「ってか、極秘情報言っていいの?! ヴィーは仮にも宰相補佐でしょ?!」

 アンジュがヴァイスハイトに突っ込み、デーアは心配そうにヴァイスハイトを見つめた。

「ちゃんと許可は取ってある。明日にはデーアの部署にも、ゲニーたちの部署にも通達される予定だ」

 何事にも抜かりないヴァイスハイトが失態を犯すわけはなく、デーアは安心し胸を撫でおろす。

 とうとう新生活になり三ヶ月が過ぎようとした頃、隣国のクリーク帝国がエーデルシュタイン王国に攻め入ってきた。事前に情報が入っていたエーデルシュタイン王国の応戦の支度は万全だった。魔力が少なく銃や剣など武力に優れているクリーク帝国と、魔力が多く魔法に優れているエーデルシュタイン王国の戦いの勢力は明白で、エーデルシュタイン王国が優勢である。ヴァイスハイトは宰相と共に戦略にあたり、ゲニーは魔法団総帥からの命令で戦いの最前線に出て、軍の指揮をとることになった。

 ゲニーの帰りを待つアンジュは心細くなり、デーアのいるアルメヒティヒ家に住まわせてもらうようになった。

「ゲニーが最前線で指揮をとってから怪我人はいるもの、死者は出てないそうよ」

 デーアは朝食の席で浮かない顔をしていたアンジュを励ました。愛する夫がいつ命を落とすか分からない状況の妹の心境は手に取るようにわかる。

「うん。ヴィーも被害が少ないような戦略を立ててるって聞いたよ。大丈夫、ゲニーが死ぬわけないよね」

 そう言った可愛い妹が何とも辛そうにしていて、デーアは思わずアンジュを抱きしめる。

「そうよ。ゲニーなら大丈夫だわ。それに死んだらアンジュが未亡人になって、もしかしたら家のために再婚するかもしれないわ。ゲニーがそれを許すとは思えないもの。何がなんでも生き延びると思うわ。アンジュに対する執着心は底知れないもの」
「そこは執着より愛情と言って欲しいけど。ふふ、そうね。ゲニーなら死んでも自分に魔法をかけて生き返ってきそう。あと執着心はデーアの愛しの旦那様も底知れないよ? だって戦場から毎日朝晩と手紙が来るんでしょ?」

 アンジュはやっと頬を緩まし、姉を揶揄った。

「あら、それはアンジュの愛しの旦那様もじゃなかったかしら? ゲニーの場合小さな花束も手紙につけて送ってくるみたいじゃない。アンジュもその花を毎回押し花にして大切にとってあるんでしょ? 羨ましいわ。ヴィーに見習って欲しいと言おうかしら?」

 アンジュに揶揄われ、姉も負けじと目の前の妹を揶揄い返す。

 そして二人はふふっと笑い合った。
しおりを挟む
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい(小説家になろうへのリンク)続きは小説家になろうに掲載しています

異世界に呼ばれて来た25歳DTの俺はキャバ嬢風の闇主様にすべてを捧げたい
ストーリー:「え!?勇者的活動NG? 誰かを救おうなんて、思ってないですよ」
  
転移した異世界で闇主様からチート冒険者やうざい2頭身アニマルの排除を任された主人公の25歳童貞野郎。
 
 その途方もない目的達成のご褒美はなんとキャバ嬢のような盛り髪のセクシーな闇主様みずから、卒業のお相手をしてくださるとか!? 
 
対人最強チート魔法と超破壊力の万能バットを駆使しながら、脱童貞を夢見つつ、あてもない異世界ブラック紀行が今始まる。
感想 24

あなたにおすすめの小説

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...