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020 強化

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 闇主様が去り、時間が止まった中で燕尾服の執事セバさんは闇主様の意向を伝える。

「あなたの行く先々で出会って、イラッとしたまたはムカついた相手を全力で絶滅させてください」

 なんだか、ふわっとした感じの依頼だが、とりあえず俺は引き受ける。このクエストの報酬はDT卒業。ノルマ、期限がない。故に達成条件も明確ではない。

 絶滅と聞いて、気になって聞いてみた。
「それじゃあ、今回のこの羊戦士の卵は?」

「卵は私が処分します。付近にいる羊戦士は、あなた様のおかげでほぼ全部絶滅です。離れたところに数体残っていますが、こちらは私が処分しておきます。あとで町のペットショップも潰しておきますのでご安心を…」

 さらりと鬼畜なことをおっしゃるセバさん。本当に絶滅させる気だったんだね…。

「それとチート能力を持った者も多くいる世界ですが、あなた様以外は我ら闇主様とは敵対する者たちです」

「こっちのチート持ちは俺以外に――」

「おりません」

「はいぃ?……相手の数は?」

「圧倒的多数でしょうか……」
 セバさんの歯切れが悪くなっている……。

「……もっと味方を増やさないんですか?」

「闇主様のやる気しだいです……」

 やる気出しましょーよ、闇主様……。
「幸いなことに闇主様はあなた様に大変好意を寄せておられるようです。あんなに恥ずかしがるところを見たことはありません。
武勲を上げ、闇主様の”初めて”をあなた様に奪われることで、さらに闇主としての器を大きくしていただきたいと思っております」

「ん……!”初めて”って?え!?闇主様は処女なの?」

「はい。初めての男性となれば、その影響力は絶大でございます。上手くいけば、もっとあなたにぞっこんになり、能力持ちの味方の百人、二百人増やすことも許可されますでしょう」

DTにぞっこんにさせるだけの技術も自信もないが、愛だけはある。よっしゃ、やってやろうじゃないか!

 俄然やる気になってきた俺にセバさんは付け加える。

「あと、闇主様から欲しいものがあれば用意するとご提案がありましたが、何か必要なものはありますか?」

「そうだな~」

 今の状況を見て考える。羊たちの落とした武器が散乱しているのを拾わないといけない。そうだ、さっきも大量にテイムするのが大変だったな。

「敵を一気に処理したいんだけど何かいい物ありません?」

「ふむ」

 セバさんは一考する。

「それでは万能バットに分身機能を追加します。あなた様と思考や持ち物、運動能力は同じ分身がつくれます。発動にはボタンを三つ付けますのでそれを押してください。一つは一体ずつあなたの武器を持った分身が現れるボタン、二つ目はそれが十体ずつ現れるボタン。三つ目は百体ずつ現れるボタンです。消えてほしいときは念じれば団体で消すか、個体を指定して消すか選べるようにしておきますが、いかがでしょう?」

 実体のある分身の術か…。俺の分身だから考え方も、一緒ならいいか。羊戦士はよりかは使えるだろう。

「じゃあそれで…」

「はい、ご用意完了しました。他にはございませんか?」
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