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好きな人って
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「あ、あの、奏雨くん、まいちゃんのお兄さんの言う通り好きな子いたんですか…?」
少し申し訳ないけれど気になっていた。すると面倒くさそうに奏雨くんは大きなため息をついた。
い、嫌だったかな??
「アイツが勝手に言ってるだけだろ。知らねぇ。」
奏雨くんは特に気にする素振りも見せなかった。私は聞くのに躊躇っていたから少しホッとした。
「あっ、奏雨くんはどんな人が好きなんですか…?」
この際だし気になるから聞いてみよう!!
すると奏雨くんは少し困ったような表情で言った。
「わかんねぇ、けど、一緒にいて落ち着く奴…?あとは、優しい奴、」
そうだったんだ、奏雨くんならモテそうなんだけどなぁ…
「ちなみに柚萌は?」
「へ…?」
私も聞かれるとは思っていなかったから少しびっくりした。
「えっと、私も恋したことないのでわからないんですけど、奏雨くんみたいな人…ですかね」
「俺みたいな奴…か」
奏雨くんはほんとに理想的な人だと思う。料理も勉強もなんでも出来て、優しい。ほんとにこんな人が恋人だったりしたら幸せだろうなぁ…。
なんて思ってるとまた奏雨くんに頭を撫でられた。
「奏雨くん…結構な頻度で私の頭を撫でてるんですけど…」
「落ち着くんだよな。多分癖。」
当たり前のように撫でてくるけど本当にその見つめられる視線に慣れず段々と顔が赤くなっていく。
「奏雨くん好きな人出来たら絶対成功しますよ!!自信持ってくださいね」
恥ずかしさを紛らわすために私は笑顔で奏雨くんにそう言った。奏雨くんは
「ありがと」
心臓に悪すぎる…私は今日だけで寿命がすごい縮んだ気がした。
朝起きてすぐ、違和感に気づいた。今日は土日で学校もお休みだけど、奏雨くんがいない。疲れてるのかな?などと思いながら常備してあるパンを食べた。
流石に遅い。もうお昼もすぎて2時くらいになっていた。凄く心配になったので奏雨くんの部屋に行ってみることにした。
コンコン
「奏雨くん、いますか…?」
返事が返ってこない。もしかして、いない…?
「もうお昼ですよ…!」
すると何かにぶつかったような大きな音がした。
「大丈夫ですか!?」
私はもう心配でしかない。凄く焦ってるといつもとは違う雰囲気の奏雨くんが出てきた。
「今起きた…。おはよ。」
まだぽけーっとしている奏雨くんが目を擦りながら私に言った。
いや、それより、、
「さっきの音はなんですか…??」
「さっき…?何のこと?」
ほんとに知らないような表情で私に聞き返してきた。え…?ど、どういうこと…?てか奏雨くんいつもと違うような、、顔も赤いしふらついてる…これはもしかして
「奏雨くんおでこ失礼します」
そう言って奏雨くんの額に手を当てると思っていた通り、奏雨くんは熱があった。
こんなに遅い時間に起きるのも納得だった。
「熱ありますよ?安静にして治してください!!」
すると奏雨くんは少し不満気な顔で私の方をじっと見つめてきた。
「わかった。」
いつも見ている奏雨くんはしっかりしたお兄さんのような存在なのでこんな奏雨くんを見るのはレアじゃないかと思ってしまう。少し可愛い。
失礼しますと言って奏雨くんの部屋に入り、奏雨くんは布団にまた戻って寝ようとしていた。
そしてモゾモゾと布団に入ると私の方をまた見ていた。
「ど、どうしたんですか…?」
私がそう聞くと奏雨くんはにこっと綺麗すぎる笑顔で
「柚萌可愛い」
と残して眠りについたのだった。
私はとにかく心臓が落ち着かなくて、もう放っておいたら苦しくなるんじゃないかってくらい全身が赤くなっていた。
すると苺ちゃんから電話がかかってきた。
「もしもし…?」
『もしもし柚萌~?なんかいつもより挙動不審だけど大丈夫?』
「う、うん、どうしたの…?」
『いや、暇だったら一緒に遊びに行かないかな~って思ったんだけど』
「実は今奏雨くんが熱出しちゃって、看病してるの」
『もしかしてだけど、今柚萌が照れてるのって奏雨さん関連~??』
うっ、バレた…
「だってだって、不意打ちの笑顔と可愛いって言うのは誰でも照れちゃうでしょ…?」
全人類が惚れちゃうよ…。。
『え、柚萌って、奏雨さんの事好きなの…?』
そう聞かれたら、、分からない。私は人を好きになったことがないから。
「人を好きになるってどんな感じなの…?」
『例えばだけど、その人とずっと一緒に居たい、その人に幸せになって欲しい、一緒に居て心地いいとかかなぁ~』
そうするともう私奏雨くんの事好きじゃん!?いやいやいや、でも、
「そんなことないと、思う…。」
苺ちゃんはにやにやしたトーンで
『まいは応援するよ~』
と言ってくれた。
まぁ、確認する期間は必要だよね。
『じゃあそろそろ切るねばいばーい』
「ばいばい!」
私は電話が切れた後改めて奏雨くんの事を考えていた。
奏雨
あの変人の妹と会ったあと、次の日あいつと話をした。
「え~奏雨ってあの子のこと好きでしょ~??」
うざい。本当にうざい。
「しらね。」
すると迅はいつもは見せない影の部分の顔をしながら俺に言いかけてきた。
「じゃあ、天使ちゃん俺が貰っちゃうけど。」
にっこりとしている裏側なんて考えたくもなかった。こいつに柚萌を渡せるかよ。
「好きでもないんだったら別にいいでしょ」
淡々と俺に考える時間さえも与えないようにと迅は俺に言ってくる。
「柚萌は渡さない。」
俺も迅もびっくりしていた。俺がびっくりしていた理由はわからない。迅が驚いてる理由は
「あの奏雨が、、全く人に興味も持たなかったのに、」
何故かわからないけど、柚萌は他の誰かに渡したくない。そう自然に思っていた。
「奏雨、人を好きになるってそういうことなんだよ。まぁ俺もあんな天使ちゃん他に居ないから俺のものにしたいけど。」
人を好きになる…?
俺にはものすごく程遠い話だった。恋愛なんてしたことも無かったしする気もなかった。
「俺が柚萌の事を好きなのか…??」
考えれば考えるほど混乱してくる。こんなに考えたのは何時ぶりだろうか。勉強なんかより全然大変だ。
「だってずっと天使ちゃんのことしか考えてないでしょ?朝教室来てから帰るまでずーっと彼氏じゃない方が不思議だけど。」
俺は迅にもわかるほどずっと柚萌のことを考えてたのか…??
やばい頭が混乱しすぎている。
「まぁ、気づいた頃には俺に取られてるかもねっ」
迅はキャピっていう効果音がつきそうなポーズをして俺を煽りに煽っていた。
今日1日俺はずっとぽけーっとして過ごした。いつも授業は聞いてないがいつも以上に入ってこなかった。
そして何故か柚萌と顔を合わせづらくなり、今日は予定があるから、先に帰っててと連絡を入れた。
「最近の俺どうなってんだ…。」
俺は今学校の近くの公園のベンチに1人で座っていた。
この公園遊具とか特にないから殆ど人も来ない。
「あれ、浅木さん…?」
聞き覚えのあるような声がして振り向くとなんか柚萌の教室で見たような気がする奴がいた。
「なにしてるんですか…?」
「……」
俺も正直何してるかよく分からねぇ。
そう顔をしかめているとそいつがハッとしたように言い始めた。
「無礼をお許しください。僕は橋塚 宙斗です。」
そう言って俺に頭を下げてきた。少し震えているようでなんか申し訳ない気持ちになっていた。
「頭上げろ。別にお前のせいじゃない。」
そう言うと安心した顔になった。
「立ってるのもあれだから隣座れ」
俺が告げるとそいつは失礼しますと言って俺の隣に座った。
「浅木さん、考え事ですか…?」
俺の顔を覗き込んで聞いてきた。
そして、今までは気づかなかったが可愛らしい顔立ちが見えた。
「ん、まぁそんな感じ。」
「僕で良ければお聞きしますよ」
にっこりと俺に笑顔をむけた。まぁ名前出さなきゃ大丈夫か。
「あのさ、ある奴に言われたんだよ。俺がとある子のこと好きでしょって。」
そう話し始めるとそいつはびっくりしたような表情を浮かべたあと少し考えるような仕草をしてまた聴き始めた。
「んで、そうなのかと思って」
宙斗は言いづらそうに俺に聞いた。
「もしかしてなんですけど、その人の事を考えると頭から離れなかったり、心拍数が上がったり、よく分からないけど安心感に包まれたりしますか…?」
俺は無言で頷いた。既に顔をしかめていた宙斗は余計に難しく、とても言いづらそうに
「浅木さん、もうその人のこと大好きじゃないですか…。」
と言った。
そうだったのか、結構どうしようもなさそうな感じだな。
「ちなみになんで好きになったかなどわかりますか…?」
少しキラキラとした目で見られて話さずには居られなかった。
「俺の事を変だって言わないで、尊重してくれた。」
多分それが大きいだろう。我ながらちょろいなとも思うが、今までちゃんと心から思ってくれた奴は居なかったから。
「浅木さんが、変…?」
あー、そうかこいつは知らないか。別に隠すことでもないし言うことにした。
「俺女で、こんなんだからよく変って言われる」
宙斗は凄く分かりやすく驚いていて、もう宙斗の目には戸惑いしか見えなかった。
「確かにびっくりはします…。」
柚萌は殆ど驚くことも無くてそのまま普通に接してくれていた。俺にとっても凄く心地いいものに思えたんだろう。
「浅木さん、僕応援しますよ。頑張ってくださいね。」
本当にそう思ってるみたいで、その言葉に嘘はなかった。
「僕そろそろ帰りますね。ありがとうございました。失礼します。」
俺もそろそろ帰ろうと思ったが、好きだと自覚してしまった後だともう死ぬほど恥ずかしくて目も合わせられないかもしれない。
そんな感じで百面相をしてるとぽつぽつと雨が降ってきた。
……帰るか。
「奏雨くん!!」
ドアの向こうから柚萌の声がした。俺は昨日帰ったあとすぐ寝ていたみたいで、長時間寝ていた。
てか、今何時だ…?
そう思い時計を見ると時計の針は2時を指していた。
いや、寝すぎだろ。
心の中でそうツッコミを入れ、起き上がろうと立ち上がった瞬間俺はベッドから転げ落ち、勢いよく壁にぶつかった。
身体が思うように動かなくて歩くのも精一杯だ。
やっとの思いでドアを開けると、心配した様子の柚萌が立っていた。
「奏雨くん大丈夫ですか…?さっきの音とかも」
「さっきの音…?」
多分倒れた時の音か…?
「ていうか顔赤いですよ、おでこ失礼します…。」
そう言われて柚萌の手が俺の額に触れた。凄く冷たくて心地いいものに感じた。
「熱ありますよ!!!寝ててください。」
きっと昨日雨の中帰った挙句そのまま寝たからだな。でもまだやることあるんだけどな、寝ないとダメか、と思いぼーっとする意識の中モゾモゾと俺はベッドに入り、柚萌に何かを告げて眠りに落ちた。
「おはようございます!って言っても夜ですけどね、ゼリーとか食べれそうですか?私お粥とかは1人で作ったら大変なことになりそうだったので、辞めておきましたすみません。」
申し訳なさそうに俺に謝ってきたが、逆に感謝される側だろ、。
「ありがとう。」
俺は出来る限りの笑顔で柚萌に感謝を告げた。すると柚萌はいつもとは違う反応を見せた。
「…っ!!」
顔が急に真っ赤になっていて、俺から目を逸らしていた。
もしかして俺の風邪移した…?
「風邪か…??」
そう聞くと柚萌は顔を逸らしたまんま俺に言ってきた。
「違います…!!大丈夫です」
何が大丈夫なんだろうか。心配になってきた。そう思ってさっき柚萌がしたように俺も手を当てようとした、が、俺はその寸前に昨日の事を思い出した。
その瞬間俺はもうどうすることも出来ないままただ硬直していた。
「とっ、とにかく、熱測ってください、熱が下がっていても、一応安静にしてくださいね。私は部屋に戻りますっ!!」
足早に部屋から立ち去って行った。
あれ、俺もしかしてじゃなくても避けられてる…?
多大なショックと少しの安堵で心がいっぱいになって眠りにはつけそうになかったのであった。
少し申し訳ないけれど気になっていた。すると面倒くさそうに奏雨くんは大きなため息をついた。
い、嫌だったかな??
「アイツが勝手に言ってるだけだろ。知らねぇ。」
奏雨くんは特に気にする素振りも見せなかった。私は聞くのに躊躇っていたから少しホッとした。
「あっ、奏雨くんはどんな人が好きなんですか…?」
この際だし気になるから聞いてみよう!!
すると奏雨くんは少し困ったような表情で言った。
「わかんねぇ、けど、一緒にいて落ち着く奴…?あとは、優しい奴、」
そうだったんだ、奏雨くんならモテそうなんだけどなぁ…
「ちなみに柚萌は?」
「へ…?」
私も聞かれるとは思っていなかったから少しびっくりした。
「えっと、私も恋したことないのでわからないんですけど、奏雨くんみたいな人…ですかね」
「俺みたいな奴…か」
奏雨くんはほんとに理想的な人だと思う。料理も勉強もなんでも出来て、優しい。ほんとにこんな人が恋人だったりしたら幸せだろうなぁ…。
なんて思ってるとまた奏雨くんに頭を撫でられた。
「奏雨くん…結構な頻度で私の頭を撫でてるんですけど…」
「落ち着くんだよな。多分癖。」
当たり前のように撫でてくるけど本当にその見つめられる視線に慣れず段々と顔が赤くなっていく。
「奏雨くん好きな人出来たら絶対成功しますよ!!自信持ってくださいね」
恥ずかしさを紛らわすために私は笑顔で奏雨くんにそう言った。奏雨くんは
「ありがと」
心臓に悪すぎる…私は今日だけで寿命がすごい縮んだ気がした。
朝起きてすぐ、違和感に気づいた。今日は土日で学校もお休みだけど、奏雨くんがいない。疲れてるのかな?などと思いながら常備してあるパンを食べた。
流石に遅い。もうお昼もすぎて2時くらいになっていた。凄く心配になったので奏雨くんの部屋に行ってみることにした。
コンコン
「奏雨くん、いますか…?」
返事が返ってこない。もしかして、いない…?
「もうお昼ですよ…!」
すると何かにぶつかったような大きな音がした。
「大丈夫ですか!?」
私はもう心配でしかない。凄く焦ってるといつもとは違う雰囲気の奏雨くんが出てきた。
「今起きた…。おはよ。」
まだぽけーっとしている奏雨くんが目を擦りながら私に言った。
いや、それより、、
「さっきの音はなんですか…??」
「さっき…?何のこと?」
ほんとに知らないような表情で私に聞き返してきた。え…?ど、どういうこと…?てか奏雨くんいつもと違うような、、顔も赤いしふらついてる…これはもしかして
「奏雨くんおでこ失礼します」
そう言って奏雨くんの額に手を当てると思っていた通り、奏雨くんは熱があった。
こんなに遅い時間に起きるのも納得だった。
「熱ありますよ?安静にして治してください!!」
すると奏雨くんは少し不満気な顔で私の方をじっと見つめてきた。
「わかった。」
いつも見ている奏雨くんはしっかりしたお兄さんのような存在なのでこんな奏雨くんを見るのはレアじゃないかと思ってしまう。少し可愛い。
失礼しますと言って奏雨くんの部屋に入り、奏雨くんは布団にまた戻って寝ようとしていた。
そしてモゾモゾと布団に入ると私の方をまた見ていた。
「ど、どうしたんですか…?」
私がそう聞くと奏雨くんはにこっと綺麗すぎる笑顔で
「柚萌可愛い」
と残して眠りについたのだった。
私はとにかく心臓が落ち着かなくて、もう放っておいたら苦しくなるんじゃないかってくらい全身が赤くなっていた。
すると苺ちゃんから電話がかかってきた。
「もしもし…?」
『もしもし柚萌~?なんかいつもより挙動不審だけど大丈夫?』
「う、うん、どうしたの…?」
『いや、暇だったら一緒に遊びに行かないかな~って思ったんだけど』
「実は今奏雨くんが熱出しちゃって、看病してるの」
『もしかしてだけど、今柚萌が照れてるのって奏雨さん関連~??』
うっ、バレた…
「だってだって、不意打ちの笑顔と可愛いって言うのは誰でも照れちゃうでしょ…?」
全人類が惚れちゃうよ…。。
『え、柚萌って、奏雨さんの事好きなの…?』
そう聞かれたら、、分からない。私は人を好きになったことがないから。
「人を好きになるってどんな感じなの…?」
『例えばだけど、その人とずっと一緒に居たい、その人に幸せになって欲しい、一緒に居て心地いいとかかなぁ~』
そうするともう私奏雨くんの事好きじゃん!?いやいやいや、でも、
「そんなことないと、思う…。」
苺ちゃんはにやにやしたトーンで
『まいは応援するよ~』
と言ってくれた。
まぁ、確認する期間は必要だよね。
『じゃあそろそろ切るねばいばーい』
「ばいばい!」
私は電話が切れた後改めて奏雨くんの事を考えていた。
奏雨
あの変人の妹と会ったあと、次の日あいつと話をした。
「え~奏雨ってあの子のこと好きでしょ~??」
うざい。本当にうざい。
「しらね。」
すると迅はいつもは見せない影の部分の顔をしながら俺に言いかけてきた。
「じゃあ、天使ちゃん俺が貰っちゃうけど。」
にっこりとしている裏側なんて考えたくもなかった。こいつに柚萌を渡せるかよ。
「好きでもないんだったら別にいいでしょ」
淡々と俺に考える時間さえも与えないようにと迅は俺に言ってくる。
「柚萌は渡さない。」
俺も迅もびっくりしていた。俺がびっくりしていた理由はわからない。迅が驚いてる理由は
「あの奏雨が、、全く人に興味も持たなかったのに、」
何故かわからないけど、柚萌は他の誰かに渡したくない。そう自然に思っていた。
「奏雨、人を好きになるってそういうことなんだよ。まぁ俺もあんな天使ちゃん他に居ないから俺のものにしたいけど。」
人を好きになる…?
俺にはものすごく程遠い話だった。恋愛なんてしたことも無かったしする気もなかった。
「俺が柚萌の事を好きなのか…??」
考えれば考えるほど混乱してくる。こんなに考えたのは何時ぶりだろうか。勉強なんかより全然大変だ。
「だってずっと天使ちゃんのことしか考えてないでしょ?朝教室来てから帰るまでずーっと彼氏じゃない方が不思議だけど。」
俺は迅にもわかるほどずっと柚萌のことを考えてたのか…??
やばい頭が混乱しすぎている。
「まぁ、気づいた頃には俺に取られてるかもねっ」
迅はキャピっていう効果音がつきそうなポーズをして俺を煽りに煽っていた。
今日1日俺はずっとぽけーっとして過ごした。いつも授業は聞いてないがいつも以上に入ってこなかった。
そして何故か柚萌と顔を合わせづらくなり、今日は予定があるから、先に帰っててと連絡を入れた。
「最近の俺どうなってんだ…。」
俺は今学校の近くの公園のベンチに1人で座っていた。
この公園遊具とか特にないから殆ど人も来ない。
「あれ、浅木さん…?」
聞き覚えのあるような声がして振り向くとなんか柚萌の教室で見たような気がする奴がいた。
「なにしてるんですか…?」
「……」
俺も正直何してるかよく分からねぇ。
そう顔をしかめているとそいつがハッとしたように言い始めた。
「無礼をお許しください。僕は橋塚 宙斗です。」
そう言って俺に頭を下げてきた。少し震えているようでなんか申し訳ない気持ちになっていた。
「頭上げろ。別にお前のせいじゃない。」
そう言うと安心した顔になった。
「立ってるのもあれだから隣座れ」
俺が告げるとそいつは失礼しますと言って俺の隣に座った。
「浅木さん、考え事ですか…?」
俺の顔を覗き込んで聞いてきた。
そして、今までは気づかなかったが可愛らしい顔立ちが見えた。
「ん、まぁそんな感じ。」
「僕で良ければお聞きしますよ」
にっこりと俺に笑顔をむけた。まぁ名前出さなきゃ大丈夫か。
「あのさ、ある奴に言われたんだよ。俺がとある子のこと好きでしょって。」
そう話し始めるとそいつはびっくりしたような表情を浮かべたあと少し考えるような仕草をしてまた聴き始めた。
「んで、そうなのかと思って」
宙斗は言いづらそうに俺に聞いた。
「もしかしてなんですけど、その人の事を考えると頭から離れなかったり、心拍数が上がったり、よく分からないけど安心感に包まれたりしますか…?」
俺は無言で頷いた。既に顔をしかめていた宙斗は余計に難しく、とても言いづらそうに
「浅木さん、もうその人のこと大好きじゃないですか…。」
と言った。
そうだったのか、結構どうしようもなさそうな感じだな。
「ちなみになんで好きになったかなどわかりますか…?」
少しキラキラとした目で見られて話さずには居られなかった。
「俺の事を変だって言わないで、尊重してくれた。」
多分それが大きいだろう。我ながらちょろいなとも思うが、今までちゃんと心から思ってくれた奴は居なかったから。
「浅木さんが、変…?」
あー、そうかこいつは知らないか。別に隠すことでもないし言うことにした。
「俺女で、こんなんだからよく変って言われる」
宙斗は凄く分かりやすく驚いていて、もう宙斗の目には戸惑いしか見えなかった。
「確かにびっくりはします…。」
柚萌は殆ど驚くことも無くてそのまま普通に接してくれていた。俺にとっても凄く心地いいものに思えたんだろう。
「浅木さん、僕応援しますよ。頑張ってくださいね。」
本当にそう思ってるみたいで、その言葉に嘘はなかった。
「僕そろそろ帰りますね。ありがとうございました。失礼します。」
俺もそろそろ帰ろうと思ったが、好きだと自覚してしまった後だともう死ぬほど恥ずかしくて目も合わせられないかもしれない。
そんな感じで百面相をしてるとぽつぽつと雨が降ってきた。
……帰るか。
「奏雨くん!!」
ドアの向こうから柚萌の声がした。俺は昨日帰ったあとすぐ寝ていたみたいで、長時間寝ていた。
てか、今何時だ…?
そう思い時計を見ると時計の針は2時を指していた。
いや、寝すぎだろ。
心の中でそうツッコミを入れ、起き上がろうと立ち上がった瞬間俺はベッドから転げ落ち、勢いよく壁にぶつかった。
身体が思うように動かなくて歩くのも精一杯だ。
やっとの思いでドアを開けると、心配した様子の柚萌が立っていた。
「奏雨くん大丈夫ですか…?さっきの音とかも」
「さっきの音…?」
多分倒れた時の音か…?
「ていうか顔赤いですよ、おでこ失礼します…。」
そう言われて柚萌の手が俺の額に触れた。凄く冷たくて心地いいものに感じた。
「熱ありますよ!!!寝ててください。」
きっと昨日雨の中帰った挙句そのまま寝たからだな。でもまだやることあるんだけどな、寝ないとダメか、と思いぼーっとする意識の中モゾモゾと俺はベッドに入り、柚萌に何かを告げて眠りに落ちた。
「おはようございます!って言っても夜ですけどね、ゼリーとか食べれそうですか?私お粥とかは1人で作ったら大変なことになりそうだったので、辞めておきましたすみません。」
申し訳なさそうに俺に謝ってきたが、逆に感謝される側だろ、。
「ありがとう。」
俺は出来る限りの笑顔で柚萌に感謝を告げた。すると柚萌はいつもとは違う反応を見せた。
「…っ!!」
顔が急に真っ赤になっていて、俺から目を逸らしていた。
もしかして俺の風邪移した…?
「風邪か…??」
そう聞くと柚萌は顔を逸らしたまんま俺に言ってきた。
「違います…!!大丈夫です」
何が大丈夫なんだろうか。心配になってきた。そう思ってさっき柚萌がしたように俺も手を当てようとした、が、俺はその寸前に昨日の事を思い出した。
その瞬間俺はもうどうすることも出来ないままただ硬直していた。
「とっ、とにかく、熱測ってください、熱が下がっていても、一応安静にしてくださいね。私は部屋に戻りますっ!!」
足早に部屋から立ち去って行った。
あれ、俺もしかしてじゃなくても避けられてる…?
多大なショックと少しの安堵で心がいっぱいになって眠りにはつけそうになかったのであった。
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