68 / 616
第二章 交わる会合
068.アズラント将軍-②
しおりを挟む
「おはようございます」
でも、まずは先に挨拶だ。
「おはようございますカティアさん。ですが、何故サイお兄様と?」
「ここの角で俺とぶつかってな。んで、今まで話してた」
「まあ、そうでしたの。ですから、そのような体勢なのですね?」
「お前さんでも首痛てぇのはしょーがねぇが、もっとちんまいからな」
背がちみっちゃいのは現状しょうがないことだ。
それよりも、気になったことが別に一つ出来た。
「お兄様?」
アナさんがそう言っていると言うことは、サイノスさんも王族の縁戚さん?
さすがに兄妹はないと思う。でなきゃ、エディオスさんが王様だって言う方がおかしくなっちゃうからだ。
「あら、そうですわね。カティアさんにはまだサイお兄様をご紹介出来ておりませんでしたから」
「一昨日まで遠征訓練だったからな。そこはしゃーねぇよ」
「さっきも言ってましたよね?」
「ああ。戦争はないが、魔獣討伐なんかの為の訓練は事欠かせねぇからな。今回は遭遇しなかったが、若い連中らを鍛えんのに色々訓練するんだ」
戦争はないんだけど、軍人さん達のすることは色々あるんですね。
「サイお兄様はゼルお兄様ほど近くはありませんが、わたくしやエディお兄様との縁戚ですの」
なんか、エディオスさん周辺の幹部クラスさん達が身内で固められてないか? 僕にはわからないことだから深く突っ込めないけども。
「ま、縁戚よりは幼馴染みの方が関係としては根強いがな」
「幼馴染みさん?」
「あん中じゃ俺が一番上だからな。エディは今や王とは言え、私的には俺としちゃ弟分に変わりねぇしよ」
「サイお兄様、エディお兄様がお聞きになられたら大変ですわよ?」
「いないからいいだろ? っと、ゼル起こしに行く途中だったな。じゃ、二人とも後でな」
さっ、とサイノスさんは立ち上がられ、軽く腰を伸ばしてから行かれてしまいました。
後ろ姿、マントと頭しか見えないけどかっこいいですな。髪も乱雑に伸ばしているとこも良いですね。
「ゼルお兄様もまた大変ですわね……」
「サイノスさんも言ってましたよね? そんなに寝起きが悪いんですか?」
「一度ご覧になられた方がと申し上げたいところですけれど、お止めになられた方が賢明ですわ」
「はぁ……」
でしたら、無闇に覗きに行こうとかは口に出さないでおこう。
「ふゅぅ……」
ここで黙りしていたクラウが寂しげに鳴いた。
「クラウ、お腹空いたの?」
「ふゅ、ふゅぅ」
「ん? 違うの?」
「ふゅ」
どうしたんだろうと思ったが、ここで立ってる訳にもいかないからアナさんと食堂に向かうことにした。
食堂に向かえば、まだ誰も来ていなかったので僕らが一番乗りだったようです。
なので、裏口を通って僕とクラウは厨房に向かいました。
「おはようございます」
「ふゅ」
あまり大きな声を出さずに言うと、若い男のコックさんのベイルートさんがこっちに気づいてくれた。
「あれ、カティアちゃん。おはよう」
「おはようございます。マリウスさんいらっしゃいますか?」
「料理長ね。ちょっと待ってて」
「あ、カティアちゃん?」
「おはようカティアちゃん」
ベイルートさんが気づかれてから、他のコックさんも僕に挨拶してくださいました。
皆さんライガーさんと同じようにちゃん付けです。
マリウスさんだけは変わらず敬称呼びだけど、特に気にしてない。
皆さんにも挨拶している間にマリウスさんがやって来られました。
「おはようございますカティアさん。どうかなさいましたか?」
「おはようございます。えと、今日のお昼なんですが僕が作ることになりました」
「ああ、わざわざありがとうございます。陛下から伺っておりますよ。今日もピッツァでしたよね?」
「あ、はい。ユティリウスさんが食べたがっていたようだったので」
「ユティリウス陛下……ですか。たしかに、ピッツァはあちらの陛下も大変待ち遠しかったようでしたしね」
「あはは……」
僕は昨日の夕飯やその後の落ち込み具合しか見てないけど、本当にすぐ食べたがっていたからね。
気合い入れて作りますとも!
「材料は取り揃えておきましょうか?」
「あ、えっと……ファルミアさんと一緒に作ることになるんで、とりあえず生地の方だけいいですか?」
「妃殿下と、ですか。わかりました。そのように用意しておきますね」
「お願いします」
なので、ピッツァの準備の方は特に問題なし。
お願いをしてから僕はクラウを抱っこしたまま戻れば、食堂の方にはアナさん以外にヴァスシードの皆さんも来ていて、給仕さんからコフィーをサーブしてもらってるところでした。
「あら、カティ。おはよう」
「おはようカティ」
「おはようございます」
「ふゅ」
四凶さん達は目礼で挨拶してくれました。
この人?達はどこまでも無表情だけど、礼節はちゃんとされているんだよね。
あの妖怪みたいなお姿と今のホスト風なお姿とじゃとても結びつかないけど、悪い人達とは思わないよ?
出来るだけ、元のお姿は見たくないけども。
「お、もう来てたのか?」
エディオスさんご登場。
あとはフィーさんとセヴィルさんに、サイノスさんもだよね? ただ、エディオスさんが来れば朝ご飯開始なので席に着きますとも。
「おふぁよう……」
クラウとオルジェ(オレンジ)のジュースを飲んでたら、フィーさんご登場。
今日もぴょいんと寝癖が目立っております。
一応は身だしなみされてるらしいけど、ああなっちゃうのは仕方ないみたい。時間が経ったら落ち着くんだよね、不思議。
「あとはセヴィルさんにサイノスさんですよね?」
「カティア、サイノスといつ会ったんだよ?」
「ここに着く前です」
偶然ぶつかったことも含めて説明すると、何故かエディオスさん難しいお顔になられた。
「お前のことどこまであいつに話すかだよなぁ……」
「あー……」
それはたしかに難しいことです。
「別にサイノスになら全部話してもいいんじゃない?」
とここで、寝ぼけ眼もコフィーでしゃっきりしたのかフィーさんが会話に入ってきた。
「けど、僕が異世界人のこと含めてってことですよね?」
「まあ、あいつは口固てぇからな」
「エディ、味方は多いことにこしたことはないわ。私もサイノスだったら問題ないと思うし」
ファルミアさんがそう言うなら、信頼の厚いお人なんだ。
僕もお会いして悪い人ではないのはわかってはいるよ? 子供の僕に気遣って、わざわざ目線合わせてくれるのにキツい姿勢とってくれたんですもの。あれ結構腰にくるのに、その後立ち上がられても特に問題なく歩いて行かれたから。
「それと私のことも一緒に話すわ」
「いいのかいミーア?」
「いいわよ。カティのこととなると、後々疑問に思うだろうから一緒の方がいいだろうし」
「あ、ありがとうございます」
サイノスさんにもファルミアさんが異世界からの転生者とはまだお話されていなかったんですね。
普通は信じられないことだから口外しにくいことだ。それをわざわざ僕のためにありがとうございます。
お礼を言うと、ファルミアさんから麗し過ぎる微笑みが返って来ました。
「大したことないわ。それに、今日は超久しぶりにピザが食べられるんですもの」
「なぁ。それ昨日も言ってたがピッツァと同じ意味なのか?」
「ええ、そうよ。ピザ発生の国の方ではピッツァなんだけど、カティがそう言っているのは職業柄が強いかもね。日本だとピザって言う方がほとんどだったの」
「「「へぇー?」」」
獣's以外の男性陣全員が関心されたかのように同じ言葉を呟いた。
「お待たせいたしました」
とここで給仕のお兄さんお姉さんが温かい朝食を持ってきてくださいました。
メインはオムレツじゃなくて、ミネストローネ的なスープでした。丸パンちゃんもあるけど、マカロニ的なパスタも入ってるし野菜もふんだんにあってとっても美味しそう。
しかも、クラウにも用意されてあったというのが驚き。まだ半日足らずなのにもうメンバーとして認識されてる模様。
クラウは熱々のスープが目の前に来ると、湯気の様子にこてんと首を傾いだ。
「ふゅ?」
「これはスープだよ? まだ熱いから、もうちょっと冷めてから食べさせてあげるよ」
「ふゅ!」
なので、クラウは先に出てきたパンにかじりついた。
「お、ちょうど食べてるとこだったか?」
「…………」
僕もいただきますをしていたところで、ようやくサイノスさんとセヴィルさんがやって来ました。
ただ、セヴィルさんいつもに増して眉間の皺が深いのは気のせいじゃないと思うの。
「お、おはようございますセヴィルさん」
「……ああ。おはよう」
なんかお辛そうですね?
心配になってジーっと見ちゃっていたら、セヴィルさんがふっと口元を緩められて僕の頭にぽんぽんと手を置いてくれた。
「そんなにも心配する程ではない」
「そ、そうですか?」
素敵微笑みに今日もドギマギしてしまう。
+α、昨夜知った事実もあるから余計に。
ガシャン!
なんの音?と音の発生源をたどれば、アナさんのお隣に座っていたサイノスさんが机にスプーンを落としていた。
「ゼ、ゼルが笑った……?」
まるで、この世のものでないのを見た!って反応。
琥珀色の瞳が驚愕に彩られ、口もあんぐり開いております。
「まあ、たしかにゼルがこんな風に笑うのは珍しいよね?」
「ええ、事実を知っていればそこまで不思議じゃないけれど。ここ40年の中でこれだけ自然に笑うのはほとんど見たことがないわ」
「俺は珍獣か……」
一変してむすっとお顔を顰めちゃいましたよ。
「事実? どう言うことだ?」
サイノスさんが復活されてこちらも眉間に皺を寄せられた。
「後で話してやるよ。とりあえずは食おうぜ?」
「エディオス、サイノスにすべて話すのか?」
「ああ。お前らが来る間にそう決めたからよ」
「ならいいが……」
「なんで今じゃダメなんだ?」
「長くなっからだ」
エディオスさんがきっぱりと言い切ったので、サイノスさんも口を噤んで朝食再開となりました。
僕はちょこっと緊張したけど、温かいミネストローネスープを口にした途端不安なんて吹き飛んでしまいました!
マトゥラーとポルト(コンソメ)の優しいお味に顔がふにゃって緩むのが自然とわかっちゃう。
美味し過ぎるけど、決してがっつかずに皆さんに合わせて静かに食べますよ。マカロニ的なパスタはもちもちでもアルデンテが絶妙でお腹にたまります。
「ふゅ」
「もうちょっと待っててね?」
「ふゅ」
クラウも食べたいようだけど、湯気がまだ立ってるからダメだと諭した。火傷はしないと思うけど、熱々のスープでむせる事もあるから念のために。
でも、まずは先に挨拶だ。
「おはようございますカティアさん。ですが、何故サイお兄様と?」
「ここの角で俺とぶつかってな。んで、今まで話してた」
「まあ、そうでしたの。ですから、そのような体勢なのですね?」
「お前さんでも首痛てぇのはしょーがねぇが、もっとちんまいからな」
背がちみっちゃいのは現状しょうがないことだ。
それよりも、気になったことが別に一つ出来た。
「お兄様?」
アナさんがそう言っていると言うことは、サイノスさんも王族の縁戚さん?
さすがに兄妹はないと思う。でなきゃ、エディオスさんが王様だって言う方がおかしくなっちゃうからだ。
「あら、そうですわね。カティアさんにはまだサイお兄様をご紹介出来ておりませんでしたから」
「一昨日まで遠征訓練だったからな。そこはしゃーねぇよ」
「さっきも言ってましたよね?」
「ああ。戦争はないが、魔獣討伐なんかの為の訓練は事欠かせねぇからな。今回は遭遇しなかったが、若い連中らを鍛えんのに色々訓練するんだ」
戦争はないんだけど、軍人さん達のすることは色々あるんですね。
「サイお兄様はゼルお兄様ほど近くはありませんが、わたくしやエディお兄様との縁戚ですの」
なんか、エディオスさん周辺の幹部クラスさん達が身内で固められてないか? 僕にはわからないことだから深く突っ込めないけども。
「ま、縁戚よりは幼馴染みの方が関係としては根強いがな」
「幼馴染みさん?」
「あん中じゃ俺が一番上だからな。エディは今や王とは言え、私的には俺としちゃ弟分に変わりねぇしよ」
「サイお兄様、エディお兄様がお聞きになられたら大変ですわよ?」
「いないからいいだろ? っと、ゼル起こしに行く途中だったな。じゃ、二人とも後でな」
さっ、とサイノスさんは立ち上がられ、軽く腰を伸ばしてから行かれてしまいました。
後ろ姿、マントと頭しか見えないけどかっこいいですな。髪も乱雑に伸ばしているとこも良いですね。
「ゼルお兄様もまた大変ですわね……」
「サイノスさんも言ってましたよね? そんなに寝起きが悪いんですか?」
「一度ご覧になられた方がと申し上げたいところですけれど、お止めになられた方が賢明ですわ」
「はぁ……」
でしたら、無闇に覗きに行こうとかは口に出さないでおこう。
「ふゅぅ……」
ここで黙りしていたクラウが寂しげに鳴いた。
「クラウ、お腹空いたの?」
「ふゅ、ふゅぅ」
「ん? 違うの?」
「ふゅ」
どうしたんだろうと思ったが、ここで立ってる訳にもいかないからアナさんと食堂に向かうことにした。
食堂に向かえば、まだ誰も来ていなかったので僕らが一番乗りだったようです。
なので、裏口を通って僕とクラウは厨房に向かいました。
「おはようございます」
「ふゅ」
あまり大きな声を出さずに言うと、若い男のコックさんのベイルートさんがこっちに気づいてくれた。
「あれ、カティアちゃん。おはよう」
「おはようございます。マリウスさんいらっしゃいますか?」
「料理長ね。ちょっと待ってて」
「あ、カティアちゃん?」
「おはようカティアちゃん」
ベイルートさんが気づかれてから、他のコックさんも僕に挨拶してくださいました。
皆さんライガーさんと同じようにちゃん付けです。
マリウスさんだけは変わらず敬称呼びだけど、特に気にしてない。
皆さんにも挨拶している間にマリウスさんがやって来られました。
「おはようございますカティアさん。どうかなさいましたか?」
「おはようございます。えと、今日のお昼なんですが僕が作ることになりました」
「ああ、わざわざありがとうございます。陛下から伺っておりますよ。今日もピッツァでしたよね?」
「あ、はい。ユティリウスさんが食べたがっていたようだったので」
「ユティリウス陛下……ですか。たしかに、ピッツァはあちらの陛下も大変待ち遠しかったようでしたしね」
「あはは……」
僕は昨日の夕飯やその後の落ち込み具合しか見てないけど、本当にすぐ食べたがっていたからね。
気合い入れて作りますとも!
「材料は取り揃えておきましょうか?」
「あ、えっと……ファルミアさんと一緒に作ることになるんで、とりあえず生地の方だけいいですか?」
「妃殿下と、ですか。わかりました。そのように用意しておきますね」
「お願いします」
なので、ピッツァの準備の方は特に問題なし。
お願いをしてから僕はクラウを抱っこしたまま戻れば、食堂の方にはアナさん以外にヴァスシードの皆さんも来ていて、給仕さんからコフィーをサーブしてもらってるところでした。
「あら、カティ。おはよう」
「おはようカティ」
「おはようございます」
「ふゅ」
四凶さん達は目礼で挨拶してくれました。
この人?達はどこまでも無表情だけど、礼節はちゃんとされているんだよね。
あの妖怪みたいなお姿と今のホスト風なお姿とじゃとても結びつかないけど、悪い人達とは思わないよ?
出来るだけ、元のお姿は見たくないけども。
「お、もう来てたのか?」
エディオスさんご登場。
あとはフィーさんとセヴィルさんに、サイノスさんもだよね? ただ、エディオスさんが来れば朝ご飯開始なので席に着きますとも。
「おふぁよう……」
クラウとオルジェ(オレンジ)のジュースを飲んでたら、フィーさんご登場。
今日もぴょいんと寝癖が目立っております。
一応は身だしなみされてるらしいけど、ああなっちゃうのは仕方ないみたい。時間が経ったら落ち着くんだよね、不思議。
「あとはセヴィルさんにサイノスさんですよね?」
「カティア、サイノスといつ会ったんだよ?」
「ここに着く前です」
偶然ぶつかったことも含めて説明すると、何故かエディオスさん難しいお顔になられた。
「お前のことどこまであいつに話すかだよなぁ……」
「あー……」
それはたしかに難しいことです。
「別にサイノスになら全部話してもいいんじゃない?」
とここで、寝ぼけ眼もコフィーでしゃっきりしたのかフィーさんが会話に入ってきた。
「けど、僕が異世界人のこと含めてってことですよね?」
「まあ、あいつは口固てぇからな」
「エディ、味方は多いことにこしたことはないわ。私もサイノスだったら問題ないと思うし」
ファルミアさんがそう言うなら、信頼の厚いお人なんだ。
僕もお会いして悪い人ではないのはわかってはいるよ? 子供の僕に気遣って、わざわざ目線合わせてくれるのにキツい姿勢とってくれたんですもの。あれ結構腰にくるのに、その後立ち上がられても特に問題なく歩いて行かれたから。
「それと私のことも一緒に話すわ」
「いいのかいミーア?」
「いいわよ。カティのこととなると、後々疑問に思うだろうから一緒の方がいいだろうし」
「あ、ありがとうございます」
サイノスさんにもファルミアさんが異世界からの転生者とはまだお話されていなかったんですね。
普通は信じられないことだから口外しにくいことだ。それをわざわざ僕のためにありがとうございます。
お礼を言うと、ファルミアさんから麗し過ぎる微笑みが返って来ました。
「大したことないわ。それに、今日は超久しぶりにピザが食べられるんですもの」
「なぁ。それ昨日も言ってたがピッツァと同じ意味なのか?」
「ええ、そうよ。ピザ発生の国の方ではピッツァなんだけど、カティがそう言っているのは職業柄が強いかもね。日本だとピザって言う方がほとんどだったの」
「「「へぇー?」」」
獣's以外の男性陣全員が関心されたかのように同じ言葉を呟いた。
「お待たせいたしました」
とここで給仕のお兄さんお姉さんが温かい朝食を持ってきてくださいました。
メインはオムレツじゃなくて、ミネストローネ的なスープでした。丸パンちゃんもあるけど、マカロニ的なパスタも入ってるし野菜もふんだんにあってとっても美味しそう。
しかも、クラウにも用意されてあったというのが驚き。まだ半日足らずなのにもうメンバーとして認識されてる模様。
クラウは熱々のスープが目の前に来ると、湯気の様子にこてんと首を傾いだ。
「ふゅ?」
「これはスープだよ? まだ熱いから、もうちょっと冷めてから食べさせてあげるよ」
「ふゅ!」
なので、クラウは先に出てきたパンにかじりついた。
「お、ちょうど食べてるとこだったか?」
「…………」
僕もいただきますをしていたところで、ようやくサイノスさんとセヴィルさんがやって来ました。
ただ、セヴィルさんいつもに増して眉間の皺が深いのは気のせいじゃないと思うの。
「お、おはようございますセヴィルさん」
「……ああ。おはよう」
なんかお辛そうですね?
心配になってジーっと見ちゃっていたら、セヴィルさんがふっと口元を緩められて僕の頭にぽんぽんと手を置いてくれた。
「そんなにも心配する程ではない」
「そ、そうですか?」
素敵微笑みに今日もドギマギしてしまう。
+α、昨夜知った事実もあるから余計に。
ガシャン!
なんの音?と音の発生源をたどれば、アナさんのお隣に座っていたサイノスさんが机にスプーンを落としていた。
「ゼ、ゼルが笑った……?」
まるで、この世のものでないのを見た!って反応。
琥珀色の瞳が驚愕に彩られ、口もあんぐり開いております。
「まあ、たしかにゼルがこんな風に笑うのは珍しいよね?」
「ええ、事実を知っていればそこまで不思議じゃないけれど。ここ40年の中でこれだけ自然に笑うのはほとんど見たことがないわ」
「俺は珍獣か……」
一変してむすっとお顔を顰めちゃいましたよ。
「事実? どう言うことだ?」
サイノスさんが復活されてこちらも眉間に皺を寄せられた。
「後で話してやるよ。とりあえずは食おうぜ?」
「エディオス、サイノスにすべて話すのか?」
「ああ。お前らが来る間にそう決めたからよ」
「ならいいが……」
「なんで今じゃダメなんだ?」
「長くなっからだ」
エディオスさんがきっぱりと言い切ったので、サイノスさんも口を噤んで朝食再開となりました。
僕はちょこっと緊張したけど、温かいミネストローネスープを口にした途端不安なんて吹き飛んでしまいました!
マトゥラーとポルト(コンソメ)の優しいお味に顔がふにゃって緩むのが自然とわかっちゃう。
美味し過ぎるけど、決してがっつかずに皆さんに合わせて静かに食べますよ。マカロニ的なパスタはもちもちでもアルデンテが絶妙でお腹にたまります。
「ふゅ」
「もうちょっと待っててね?」
「ふゅ」
クラウも食べたいようだけど、湯気がまだ立ってるからダメだと諭した。火傷はしないと思うけど、熱々のスープでむせる事もあるから念のために。
21
お気に入りに追加
892
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる