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第八章 過去の嘆き
255.四凶とファルミア-②(ファルミア視点)
しおりを挟む☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(ファルミア視点)
私が異世界転生した場所は……四凶もだけど、色んな意味で現実離れしている世界だった。
まず第一に、人間の寿命と成長速度がとんでもなくゆるやかだと言うこと。現代社会だったらあり得ないくらいだわ。
寿命が万年単位って、仙人通り越して怪物かと思いかけたわ。けど、文明の発展も超ゆっくりで魔法は魔術って名称で特化はしていても……昭和か平成程度で止まっている。
その代わり、遠方に行く時とかは自分の聖獣に乗るとか魔術で移動するとか……車が必要ないのよね? かと言って、聖獣の騎乗とかは貴族以上だから市民とかは馬とかが多いみたい。
私は……どうやら、黑の世界って言う異世界でもヴァスシードって王国。ムスタリカって貴族の家に生まれたらしいんだけど……誕生を望まれていたようで微妙なラインにいたわ。
だって、四凶って言う聖獣とも魔獣とも違う『守護妖』って生き物達の主人に選ばれた。そして、何千年も選ばれなかった事なので……国中騒いでしまい……あと敬遠されたわ。いくら、イケメン集団に変身は出来ても、本来は怪物のような外見。
(……だからって、育児放棄とまではいかないけど。食事と排泄以外知らんぷりってどうよ??)
まあ、元凶とも言える四凶達が色々教えてくれるからいいけど。
「すまなんだ、ファルミア」
メインで面倒を見てくれる、紫と黒のまだら模様の髪って色合いの渋めのイケメン。窮奇って四凶のリーダーがベッドで寝ているしか出来ない私のお腹をぽんぽんと撫でてくれた。
外見年齢はアラサー前後に見えるけど、見れば見るほどタイプだわ。正体を知っているから、恋愛感情にまでは発展しないけど。
(何度も謝らなくていいわよ?)
「しかし……まさか、母親らが主の世話を焼かぬかと思うと」
(だって、代替わりじゃなくてあなた達の主人になる適任者がいなかったんでしょう? そりゃ、無理だわ)
家の守護と、個人を宿主にするのはわけが違うと思う。
責任もだけど、覚悟も違う。それがいきなり自分達の子供がなったら……そりゃ驚くだけですまないわ。どう扱っていいのかわからないもの。私が親だったとしても無理よ。
今の母親はちょっと気弱な人なのか、授乳も毎回躊躇しているもの。授乳が終わったら、逃げるように窮奇に預けて自分の部屋に行っちゃうし。
父親の方は……まだ会っていない。
この家の当主らしいけど……どんな人なのかしら??
今の家族だから、気にならないわけじゃないもの。
「……しかし。今日辺り、主の父親も来るはずだ。赤児らしくしておいた方がいい」
(あら? やっと対面出来るの??)
「我らの主人となった知らせを国内外に伝えていたそうだからな? 主と会うのはおそらく初めてだ」
(……ふーん?)
母親はともかく、父親の方はまだ好印象あるのかしら?
ちょっとだけそうであって欲しいと思ってた時に。
扉が勢いよく開いたわ!?
「窮奇!! ファルミアと会わせてくれ!!」
窮奇の名前を知っている辺り、聞こえてきた声の主が父親??
なんか、走ってきたのか息切れているけど。顔を見たくても、赤ん坊だから体を起こせないわ。そうしたら、窮奇が抱っこしてくれた。
「急ぐでない、ロスバーン。……この赤児だ」
「……ほんとに??」
父親らしき顔がだんだんと見えてきた。碧色の髪に金の瞳って、この世界でのめちゃくちゃ配色そのままだけど……私を怖がっていないのに、ちょっと驚いたわ。窮奇から、普通に抱き上げたんだもの。
「あう……?」
テレパシー以外だとまだまだ喘ぎ声しか出ないので、父親の方を見ることにした。
「……………………いい」
「う?」
「超絶可愛い!!? 髪は俺だけど、目はミスティアと同じだ!! 顔立ちも彼女寄りだけど……すっごく可愛い!!」
私をベタ褒めしながら、痛くない勢いで頬擦りしてくれた……。嫌われていない?? 私の勝手な憶測だったのかしら??
「これ、ロスバーン。そんな勢いで」
「ああ、ごめん!……ミスティアには会っているんだよね??」
「……ああ。乳やりの後、すぐに我に渡して来るが」
「…………う~~ん? 事情は聞いておくよ。ファルミアが可愛い過ぎるから、緊張してるんじゃないかな??」
この父親……予想以上に親バカなんだと、ちょっとホッと出来たわ。
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