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番外編②

第92話『素人のクロワッサン』

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 とにかく、この事実を妃殿下にお伝えするかどうかなのですが。


「やめておいた方がいいわ。お父様以上にショックを受けて……寝込むでしょうし」


 との、リュシアーノ様のご提案により、妃殿下には秘匿することとなりました。義兄上も頷かれていらっしゃるましたから、それは正解ということですね。


「……であれば、このことは最高機密としよう」


 義兄上もそうお決めになられ、解散となると思いきや……イツキが持っていた籐籠の包みを外しました。


「個人的に練習して作っていたパンなんですが」


 現れたパンは……三日月のような形をしているパンでした。

 ふんわりではなく、サクサクしているパイのような。

 あれも異世界のパンなのでしょうか??


「イツキ! これってクロワッサン!?」

「はい。うまく出来たので、せっかくだからと持ってきたんです」

「すっごい! 家庭でも作れるのね!?」

「素人技術ですが」

「「「いやいやいや」」」


 僕もですが、イツキを素人だと誰も思っていませんよ。

 同じ異世界出身者のリュシアーノ様でも、物凄く感心なされいるのに……相変わらず、控えめな性格の女性ですね。

 とにかく、そのクロワッサンというパンを是非食べてほしい要望に、誰も異を唱えませんでしたので。

 ひとつ受け取り、食べてみたのですが。


「「「「「これは!?」」」」」


 見た目通りサクサクした食感なのですが、内側は少しふんわりもしている。さらに、これは贅沢にバターを使用しているのがわかるくらいの濃厚な味わい。

 甘さと塩気のバランスが絶妙過ぎて……とても美味しいです!

 皆ともに、がっつくように食べていきます!!


「美味しい!! これが素人技術? ブーランジェリーにあってもおかしくないわよ?」

「褒め過ぎですよ……折り込みを丁寧にしたくらいで」

「それを普通は省こうとするのに」


 異世界技術や文化の会話を遠慮なく出来ることが出来たので、おふたりとも嬉しそうですが。

 会話に、いつも以上についていけません!!

 僕もリュシアーノ様の婚約者として、もっと精進しなくては!!


「……頭が痛くなる。娘が、転生者で。以前はイツキと変わらないくらいの女性?」

「……義兄上。僕もはじめは混乱しましたが。リュシアーノ様はリュシアーノ様です。貴方様の御息女に変わりありませんよ」

「……お前が言うならそうか」

「ありがとうございます」


 僕は、転生者を受け入れられたリュシアーノ様も愛しています。

 今も、これから先も。

 とりあえず、レクサスが護衛に任命されたために部隊長の引き継ぎは誰にしようか決めなくてはいけませんが。
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