王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

番外編②

第90話 国王の反応

「話とはなんだ？　ワルシュだけでなく、ネルらまで」


　謁見の申請をした後、すぐに陛下に御目通りが叶いました。たまたまお時間がすぐに取れたか……ワルシュ殿から、何か一言付け加えがあったかもしれませんね。

　イツキのことだけでなく、リュシアーノ様の事もですから。


「率直に言うぜ、リュカルド。俺ら全員が知っている秘密を打ち明ける」

「秘密？　お前たちが俺にか？」


　全然思い当たらないようですね？　これまで、イツキやリュシアーノ様が巧妙に隠していたせいもありますが……普通の鑑定の技能スキルでは、性別などはともかく他のステータスがかなり隠されていたとワルシュ殿がおっしゃっていました。だから、陛下はわかっていらっしゃらない。

　ですから、今から打ち明けるのです。


「そうだ。……今まで見れんかった、イツキのステータス事情。あいつは、異世界からの渡航者ってことだ。他にも、最近錬金術師の職業ジョブがついたことでああいった料理が作れるようになった」

「……………………は？」


　この反応は仕方ありません。いきなり、妻と娘の友人が異世界からの渡航者である真実。

　それを二年近くも秘密にしていたこともですが、錬金術師の職業ジョブのせいで薬効のある料理を作り出せたこともです。普通以上に驚かれても致し方ないでしょう。

　さらに、ワルシュ殿は続けられました。


「イツキだけじゃねぇ。お前さんの娘もだ。正確には、『転生者』だが」

「！？　待て！？　リュシアーノが！？」

「そっちも俺はさっき知ったが……考えてもみろ。性格の変化や態度とかを」

「……それは」


　受け入れるべき事実。

　僕もあの頃は大変驚きましたが。僕の想いを受けてくださるために、それまでのご自分と『ワカナ』としてのご自分を受け入れられた。それがあり、今のリュシアーノ様となっていらっしゃいます。

　聡明であるのは、イツキと同じ世界にいた魂を受け入れられたから。この真実を陛下が耳にされた今、どう反応されるか。

　陛下は目を見開き続けたかと思えば、椅子からひっくり返られました！？


「「「陛下！？」」」

「……リュカルド。可能性として考えてはなかったのか？」

「…………なかった」


　微塵ではなくとも、そこまでの心境変化は……父親として誇らしく思っていたのかもしれません。たしかに、ないとは言い切れませんが……リュシアーノ様の心の変化は大きかった。

　そのきっかけが、僕の告白だったのは……自分としては、複雑な気持ちではありますが。

　倒れた陛下をワルシュ殿は起こしもせずに、さらに言葉を続けられました。


「だから、イツキが真実を知らぬとも狙われる以上に……嬢ちゃんも危険かもしれんとネルが言ったんだ。こいつはずっと転生者の真実は知ってたからな？」

「…………何故、と。前なら言ったが」

「お前さんは国王だろ。頭は悪くない」

「……そのつもり、だ」


　陛下……義兄上は、理解が早い。僕のリュシアーノ様への想いは本物ですが。

　リュシアーノ様が抱えていらっしゃる秘密を打ち明けるのは、ご本人があまり吹聴しないように気をつけられていた。王女が転生者では、色々と面倒ごとが起きると。

　アーネストとレクサスはタイミングの都合で知ったとはいえ。

　現在、渡航者のイツキにあれだけ刺客を寄越す愚か者が後を絶たない。

　なら、いずれリュシアーノ様にも魔の手が伸びることでしょう。その可能性を義兄上はご理解されたはず。


「ですから……義兄上。あの方にも暗部の護衛をお付けした方がいいかと」

「……護衛はもともとつけていたが。イツキでそれなら、リュシアーノにも行く可能性は高い。特に学園内で内通者がいるとも限らん」


　義兄上は立ち上がられ、すぐに書簡を書いていかれる。父親としても、国王としても……困惑したいのに、相変わらず優秀な方です。