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番外編②

第89話 危機はひとつでない

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 アーネスト経由で、ゲイリッシュ殿の報告を聞きましたが。

 以前から懸念していたことですが、どこからかイツキに『錬金術師』の職業ジョブと薬効付与の食事の噂を聞きつけたのでしょう。

 粗を探せば、ポロポロと出てくる出てくる。

 誘拐を企てようとしていた、愚かな者どもの刺客ら。ゲイリッシュ殿がすべて捕縛してくださいましたが、次から次へとやって来るとか。

 アーネストも流石にキレてしまい、異名に違わぬ『閃光』の如く、ゲイリッシュ殿以上に捕えてかき集めたと。

 最愛の妻を、愚かな企てに利用しようとされていたと分かれば、当然の憤怒。

 今も、レクサスが珍しくビクビクしている横で苛立っていますから。


「……そうですか。では、僕からもひとつ、懸念事項があります」

「け、懸念?」

「……なんですか」

「ここに君たちがいるから言えることですが。リュシアーノ様の方も気をつけなくては」

「「!?」」

「僕らは知っていますが。あの方も異世界からの転生者。その事実は、知るのはイツキ以外僕らだけ。しかし、学園にはあの方が育てたブルードベリーで薬効のある料理が出来たと……知られています」


 イツキのこともですが、僕が気づいたのはそこです。

 イツキの職業ジョブを知るきっかけとなったのは、リュシアーノ様が彼女に渡したブルードベリー。二人はいつも通りに作っただけですが……この世界では偉業を成し遂げたに等しい。

 であれば、もともと政治利用しやすいと……愚か者が狙うリュシアーノ様も危うい。

 僕の婚約者であることもですが、一個人として狙う意味があるとなれば……秘密を知れば、なおのこと危険です。僕の愛する御方を利用? 絶対させるものですか!!

 しかしながら……この危機を一個人として動くわけにはいきません。婚約者としても、近衛騎士の隊長としても。


「……せやったら、隊長? 陛下方に秘密打ち明けるん?」

「……それは、色々危険ではないか? レクサス」

「…………いいえ。いい機会です。ワルシュ殿も混えて、僕らが知っていることをお伝えしましょう」


 陛下は鑑定の技能スキルをお持ちですのに、イツキを見抜けなかったということは……異世界の人間には守護か何かがあるということでしょう。

 であれば、この機会を使うしかありません。

 ワルシュ殿のところに行き、謁見の旨を伝えると大袈裟なくらいにため息を吐かれました。


「……なんとなく、予想してたが。リュカルドの嬢ちゃんもかよ」

「打ち明けずにすみません」

「いや。俺はリュカルドの悪友だからな? ぽろっと言っちまう可能性はある。が、イツキのこともあるし、言うなら早い方がいいな」

「ええ。同行お願い致します」


 すぐに受け入れてくださったので、ありがたいことです。さすがは、イツキを即座に養女にしようと言い出した器の方だからでしょう。
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