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番外編②
第70話 事情説明して
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しかし、イツキに黙っておくわけにはいかない。
その晩に、アルベルトを寝かしたあと……俺の執務室で二人で話すことにした。
「……私が狙われる?」
「アレルギー発見のこともあるが、此度のことは特にだ。君がよからぬ輩に狙われて……下手をすれば、死ぬまで件の料理を作り続ける仕打ちをされるだろう」
そんな事は、どんな手を使っても絶対させない。俺の最愛の妻であることもだが、皆に慕われている存在でもあるのだ。
引き剥がされたくもないし、離すつもりは毛頭ない。今は俺との子も成したのだ。大切な家族を守るために、他者と協力してでも連れ去られるなどあって欲しくない。
だからこそ、イツキにも知って欲しいのだ。自分がどれほど価値のある人物だと言うのを。
「……ポーションのような食事を作れるだなんて」
「俺も驚いた。今までのにはなかったからな」
「皆さんに、美味しいご飯を食べて欲しかっただけで」
「わかっている。君の気遣いは俺もよく知っているさ」
引き寄せて抱きしめてやれば、腕を背に回して抱きついてきた。普段だったら、このまま夜の営みにいくだろうが……今日はそうではない。イツキへの危機を本人も少なからず理解しているのだ。なので、今は安心させるのに抱擁するまで。
しばらく、お互い声をかけずに抱き合っていると……イツキの腹から大きな音が聞こえてきた。
「……………………ごめんなさい」
どうやら、夜食が必要らしい。イツキは常に育児と屋敷の管理を頑張ってくれているからな。アルベルトを身ごもっていた時とは別の意味で、腹が減りやすいらしい。
「構わないさ。少し落ち着いたのなら、それは嬉しい」
「体が正直過ぎて……」
「とりあえず、キルアはまだ起きているだろう。何か作らせるか?」
「……せっかくなので、いっしょに作りませんか?」
「それはいいな」
夜食だが、しっかり食べようと言うことになったので。
イツキは最近試そうとしていたと言うパン料理を作るのに、個人厨房の貯蔵スペースから大きめの丸パンを取り出した。表面が少し固くて、そのまま食べるのに不向きなものをだ。
「これで、シチューも使ったあったかいものを作ろうかと」
「シチューをどうするんだ?」
「パンをくり抜いて器にして、中にシチューを入れるんです」
「!? それも異世界の料理か?」
「はい。日本だと時々食事屋さんで食べられます」
「なるほど」
シチューは既に仕込んであるらしく、俺とイツキでそれぞれのパンをくり抜くところから始めたのだ。
その晩に、アルベルトを寝かしたあと……俺の執務室で二人で話すことにした。
「……私が狙われる?」
「アレルギー発見のこともあるが、此度のことは特にだ。君がよからぬ輩に狙われて……下手をすれば、死ぬまで件の料理を作り続ける仕打ちをされるだろう」
そんな事は、どんな手を使っても絶対させない。俺の最愛の妻であることもだが、皆に慕われている存在でもあるのだ。
引き剥がされたくもないし、離すつもりは毛頭ない。今は俺との子も成したのだ。大切な家族を守るために、他者と協力してでも連れ去られるなどあって欲しくない。
だからこそ、イツキにも知って欲しいのだ。自分がどれほど価値のある人物だと言うのを。
「……ポーションのような食事を作れるだなんて」
「俺も驚いた。今までのにはなかったからな」
「皆さんに、美味しいご飯を食べて欲しかっただけで」
「わかっている。君の気遣いは俺もよく知っているさ」
引き寄せて抱きしめてやれば、腕を背に回して抱きついてきた。普段だったら、このまま夜の営みにいくだろうが……今日はそうではない。イツキへの危機を本人も少なからず理解しているのだ。なので、今は安心させるのに抱擁するまで。
しばらく、お互い声をかけずに抱き合っていると……イツキの腹から大きな音が聞こえてきた。
「……………………ごめんなさい」
どうやら、夜食が必要らしい。イツキは常に育児と屋敷の管理を頑張ってくれているからな。アルベルトを身ごもっていた時とは別の意味で、腹が減りやすいらしい。
「構わないさ。少し落ち着いたのなら、それは嬉しい」
「体が正直過ぎて……」
「とりあえず、キルアはまだ起きているだろう。何か作らせるか?」
「……せっかくなので、いっしょに作りませんか?」
「それはいいな」
夜食だが、しっかり食べようと言うことになったので。
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「シチューをどうするんだ?」
「パンをくり抜いて器にして、中にシチューを入れるんです」
「!? それも異世界の料理か?」
「はい。日本だと時々食事屋さんで食べられます」
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シチューは既に仕込んであるらしく、俺とイツキでそれぞれのパンをくり抜くところから始めたのだ。
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